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第219回 ベトナムのディストリビューターにはセールス機能がない!?

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「ベトナムのディストリビューターにはセールス機能がない!?」ということについてお話をしていきたいと思います。ベトナムはASEANの中でも非常に特殊な市場で、ディストリビューターの機能が他の国とは大きく異なります。このことを理解しないと、ベトナム市場でものを売っていくということはなかなか難しい。特に、FMCG(食品・飲料・菓子・日用品)のメーカーにとって、このベトナムの独特のディストリビューターの機能、これを理解するということは大変重要になっております。今日は、ベトナムのディストリビューターにはセールス機能がないということについて、一緒に学んでいきましょう。

セールス機能がないということなんですが、まずディストリビューター、販売店ですよね、販売店の機能、問屋、販売店、卸、これらの機能というのは、日本人からすると、まずセールスという機能がやっぱり1つ重要な機能であって、これはグローバルスタンダードでもそうですよね、ディストリビューターといったらセールスをするという。ここに付随してくる機能としてはデリバリーの機能ですよね。セールスをしてデリバリーする。デリバリーに関しては、ものによっては、業界によっては、3PLで第三者に委託をして運んでもらうというケースも、これは全然あって。例えば、それが日本でいうヤマトや佐川急便なわけで。言ったら、セールス機能がないということは、デリバリー企業って、佐川やヤマトなのかい?という話なんですけども。その通りで、ベトナムでディストリビューターと言ったら、基本的にはメーカーと契約をして、販売店契約をするんですけども、その商品を配達する人たちをディストリビューターと言うんですね。セールスというのは誰がやるかと言ったら、メーカーがやるという、これがベトナムの常識で。現地のディストリビューター、ベトナムの現地のディストリビューターの大半はセールス機能を持っていません。持っているというのは、もうほんのトップ10もないと思います。

例えば、メサ(MESA)とか、プータイ(PHUTAI)とかFMCGの分野で言ったら非常に大きなディストリビューターなんですけども、P&Gとかネスレとかをやっているようなディストリビューターなわけですけども、そういうメサとかプータイとか、非常に大手のディストリビューターはグローバルスタンダードなのでセールス機能をもちろん持っているし、デリバリー機能も持っている。これ、なんで彼らが持っているかというと、もともとタイ資本が入っていたとか、それから、もともとP&Gが何十年も前にディストリビューターを教育して、セールスとはなんぞやということを教育して教え込んで、彼らがセールス機能を持てた、最終的に、というケースなので、もともと持っていないんですよね。これ、共産主義の国に非常多いケースで、中国も数十年前とかというと、セールスよりもデリバリーみたいなところが非常にあって、独自の進化でぶわーっとなっていきましたけども、やっぱりメーカーがつくりますと、もともと国営企業でしたからね、ベトナムも中国も。国営企業がつくったものを、欲しければ買いにこいというスタンスなわけですよね。ですから、セールスをするという概念がそもそもないわけですね、こういう国では。北朝鮮なんかもまさにそうですよね。国営企業がつくったと、それを自分たちから売り込んでいくというセールスという概念が非常に、ないとは言わないまでも、薄い。ですから、つくったもの、いいものがここにあるから買いにいらっしゃいということで、売ってやるというスタンスが非常に強い。その、おそらく流れで、セールス機能がなくてデリバリー機能だけという、そういうふうなことなんだと思うんですけども、非常に小規模。

例えば、P&Gなんかは、ASEANでどの国でもだいたい8社ぐらいのディストリビューターを使って、2社はめちゃめちゃ大手を使って、6社ぐらいが中堅なんですよね。これは取り扱っている商品にもよるんですけども、だいたいそういうモデル。もともとはP&Gも何十年も前は50社ぐらい使っていたのを、どんどん、どんどん、集約していって、今のこの1カ国8社、うち2社は大手、6社は中堅みたいな、基本的には規模の大きいところにお願いをして、自社の現地法人があって、MT、近代小売は直販して、TTをディストリビューターにお願いして、そのディストリビューターには自分たちのセールスを派遣して、部屋があって、管理育成しっかりやってみたいなことをやる、もう完璧なディストリビューション・チャネルをつくっています。
一方で、ネスレ、ユニリーバ、リーバモデルと私は呼んでいますけど、ネスレ・リーバモデルというのは、彼らは売っているものがよりP&Gよりもきめ細かく配荷をしていかないといけない。ベトナムなんかだと、50万店伝統小売があると言われていて、うち食品が置けるのが30万店あると言われているんですけども。この50万店のTTにきめ細かく配荷をする。なおかつ、あの国というのは、ハノイからホーチミンまで、北から南まで1,600~1,700kmぐらいあるわけですよね。細長い国ですから。そうすると、そういった地理的な環境の中で細かい配荷をするには、やっぱり150とか250とか、こういう単位のディストリビューターを地域ごとに使っていかないといけない。これをネスレ・リーバモデルと私は呼んでいますけど、本当にきめ細かい。もちろん、P&Gと一緒でMTは現地法人が直販します。TTを150とか250のディストリビューターに任せて配荷をしていく。これ、日系企業だとベトナムで非常にうまくいっているのがエースコックです。村岡社長のエースコック、村岡社長率いるエースコックは、確か10工場ぐらいあったと思います。10工場ぐらいの中で250ぐらいのディストリビューターを使って、あそこはシェアNo.1ですから、ほぼ30万店、50万店のうちの30万店が食品を置けるので、30万店ほぼフルカバーしている、非常に優れたディストリビューション・ネットワークを持っているわけですよね。日系企業でこれだけのディストリビューションを持っているのはなかなかないわけなんですけども、エースコックなんかはそういうふうにやっていると。

その中で、もちろんセールスは、もうベトナムで本当にしっかりシェアが獲れている会社は、もうほとんど理解していますけども、自分たちがやらないといけない。だから、結局、現法がないと、ベトナムでものを売るなんてほぼ無理なんですよ。だって、自社のセールスがセールスしなかったら、ディストリビューターはデリバリーするだけですから、基本的には成り立たない。もしくは、輸出でやるんだとしても、セールスができるディストリビューターを捕まえないといけない。もしくは、誰かにセールス機能をアウトソーシングしてやってもらわないといけないということになってきますから、ASEANの中でも非常に特殊な国ですよと、いうことを理解しないといけないというのが実態なわけなんですよね。なので、ベトナムというのは、ASEANの中でも特に難しい国になると思います。SMT、シンガポール、マレーシア、タイという先進ASEANがまずあって、ここはTTの比率も今、5割ぐらい。シンガポールなんかはもう完全にMT化されているので、比較的輸出でも儲かるし、現法があっても、ある程度MTだけでも収益化、黒字化はできる。一方で、VIPはもうTTやらなかったら勝負にならない。ベトナム、インドネシア、フィリピンね。ベトナム50万店、フィリピン80万店、インドネシア300万店のTT,これをやらなかったら、もう全くもって、現法があったらもう完全に赤字だし、TTがこれだけ多いということは輸出ではまた全く難しい。その中でもベトナムは、このディストリビューターがセールス機能を持っていないということで、現法を出してやらないとなかなか難しいというのが市場特性であると。

じゃあ、セールス機能を持っていないディストリビューターってどういうディストリビューターなのよ、ということでちょっと写真を出しますけども、まさにこんな感じなんですよね。これ、私と、何年か前ですけど、ちょっとぼかしてありますけど、ネスレが使っているディストリビューターなんですよ。こんなところを150とか200とか使っているわけですよね。これ、社長がお父さん、奥さんが副社長なんですけど、実際に切り盛りしているのは女性の、この副社長の奥さんで、社長は、私が行ったときは、外のバイクの上で寝てましたけども。(笑)だいたいASEANは本当に女性が優秀で、ベトナムで私、いろんな会社に行きましたけど、女性の優秀な経営者が非常に多くて、ここも奥さんが切り盛りしていて。外観はこんな感じで、執務室みたいなところに伝票を打つような女の子たちが4~5人いて伝票を打って、バイクで社員が取りに来て、トラックで取りに来て、それを地域で配っていくと。もう、この地域だけなので、Nationwideとかそういうのじゃないですよね。自分たちのもの、何区とかというところだけを配達をして回る、そして集金をするというのが彼らの仕事なので、そんなことをしていますよと。

なので、本当にベトナムはディストリビューターにセールス機能ありません。セールス機能はないので、プロモーション機能もないし、メーカーがやるべき仕事が非常にセールスプロモーション周りは強くなってくるという市場。なので、こういうベトナムのような市場で本当に販売をしていくということを考えるということは、ディストリビューション・チャネルをしっかり組んでいかないといけないし、基本、現法がないとなかなか難しいし、現法があっても、今、多くの日本企業は苦戦していますので、やっぱりこのディストリビューション・チャネルをしっかりとつくっていくということがベトナムは重要になってくると思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。