第221回 【現地レポート】ミャンマー ヤンゴンのコンビニで売られているモノ
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テキスト版
(現地レポート)森辺一樹(以下、森辺):今、私はミャンマーのヤンゴンに来ております。ヤンゴンの居住区のエリアの中にあるコンビニエンスストア、結構面白くて、居住区のエリアには圧倒的に伝統小売があるんですが、その中に近代小売であるコンビニエンスストアも入っていて。例えば、あれもコンビニエンスストアですね。向こうのほうに見えるのが、伝統小売があるんだけども、伝統小売がありながら、こういったコンビニエンスストア。今回お邪魔するのは、このコンビニエンスストアなんですが、どういったものが売られているのか、一緒に見ていきましょう。
伝統小売と違って、しっかり冷凍庫があってアイスクリームが売られています。ネスレの「MILO」は非常に強いですよね。居住区にあるので、結構いろんな、居住区で必要なものとかっていうのは結構豊富で。パンなんかもそうですし。さっきと比べて、ちょっとね、スナックの袋がちょっと大きめなものも置いていますけども。
相変わらず、スキンケアとかシャンプーとかも全部欧米系ですよね。カミソリとかね、ジレット。貝印とかも頑張ってほしいですけどね、このジレットがやっぱり非常に多いですね。欧米系が多いと。洗剤なんかもほぼ欧米系でね、ほとんどタイからの輸入なんですよね。ミャンマーでつくっているの、そんなに多くないので。
味の素、これも「AJINOMOTO Thailand」って書いていますけども、タイからの輸入で。辛ラーメンもそうですし。ラーメンは…、辛ラーメンもそうなんですけど、ベトナムで50%のシェアを持っているエースコック、エースコックがやっぱり強くて、ミャンマーでの生産、ミャンマー語が書いてありますね。面白いのが、意外に、日清はね、やっぱり結構ターゲットが上振れしちゃってて、強い国というと、先進的な国が多くて、こういう袋麺の戦いっていうのはなかなかやれていないというか、やっていない。AJINOMOTOなんかもね、日本でAJINOMOTOのインスタント麺なんて、たぶんほとんどないと思うんですけど、AJINOMOTOは非常にタイ、タイですね、これもタイからの輸入。
ビール。ビールはね、ミャンマー最大のミャンマービールですよね。これですね。キリンが買収したことで非常に有名ですけども。もともとハイネケンタイガーが持っていて、それをキリンが買収している。ハイネケンタイガーが要らないと言ったものを、なんでキリンが買ったのか、ちょっとよく分かんないんですけど。日系のM&Aなので高値掴みしたんじゃないかなと思うんですけど。今、ミャンマービールはキリンがやっている。でね、ベトナムもそうなんですけど、比較的ASEAN圏でタイガービールが非常に強くて。本当、シンガポールのビールですね、僕が80年代に住んでいたときもシンガポールですね、これは非常に有名でこればっかりみんな飲んでいるので。ハイネケンがタイガーを買収したので、ハイネケンタイガーになっていますけども、非常に強いです。
ミャンマーもハイネケンタイガーがミャンマービールをキリンに売ってしまったんですよ、確かね。なぜ売ったかっていうと、たぶん、ベトナムなんかでも圧倒的なシェアを持っていて、ハイネケンタイガーとしては、自分たち単独でミャンマーの市場をを攻められる、ベトナムで勝ちの法則をたぶん掴んでいて、もうミャンマービール要らないよということで放出したんだと思うんですけどね。今、そんな状態になっていますよ、ということです。
あと、こういうのも日本で流行りましたよね。白い砂糖の付いたおせんべいとかね、こういうのも本当に日本のメーカーが意味ない技術供与をして、こっちの企業でもつくれるようになるケースもあれば、勝手に真似されるというケースもあるし、いろいろですよね。
ちょっと、おむつを見てみましょうかね。おむつ。ASEANの市場では圧倒的なシェアを持つユニ・チャームなんですけど、これもね、全部ミャンマーでの生産ですね。ミャンマー語が書いてありますね。でね、マミーポコ、これ、ちゃんとね、プロモーションの枠とか付けているじゃないですか。ミャンマー生産なんですけど、おそらくユニ・チャームのミャンマーが、もうミャンマーでディストリビューターをしっかり決めて、そのディストリビューターを、だいぶたぶん管理育成をしっかりしているんじゃないかなと、こういうことをやらせているのでね、広告と一緒にね。棚全部マミーポコで取って独占していますよね。だから、コンビニのおむつなんて1個か2個しか置けないので。これだけのSKUを取って、これだけのプロモーションしているので、ミャンマーのユニ・チャームの人がしっかりミャンマーをフォローしているということだと思いますね。こんなものが売っていますよと。日本だと、やっぱり大きい、おむつと言えばもうでっかいやつというね、コンビニだから小さいのというのはあるので、小さいもので置いているということですね。結構、おむつも高いのでね、いつも布なんですよね。布で、どこかお出掛けするっていうときだけおむつを使ったりとい、日々、デイリーでおむつなんか使っていたら非常にコスト高になるので、ほとんど履かせることっていうのはたぶんなくて、布でやっています。洗えば済むんでね。あと、おもちゃなんかもある、という感じですね。
(解説)
森辺:皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。本日の動画はいかがでしたでしょうか。ミャンマー、ヤンゴンのコンビニも年々進化しているんじゃないかなというふうに思います。また、うれしいのは、日本のユニ・チャーム、味の素、それからキリン、また、エースコック、こういう企業が非常に積極的にミャンマーの事業を進めていて頑張っているな、というのが非常にわれわれ日本人にとってはうれしいことなのではないでしょうか。
ただ、こういった食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカー、FMCGにとって、このミャンマーという市場はやっぱり気を付けてやっていく必要があって、早過ぎても駄目だし、遅すぎても駄目だし、どういうタイミングで狙っていくか。また、どういうレベルの企業がやるべきか。どういうレベルの企業はまだ今やっちゃ駄目か、ということもしっかりと見ていかないといけない。そんなときに重要な指標となるのが、このミャンマーという市場をASEAN全体を理解したうえでどうなのか、ASEANの中でミャンマーはどういう位置付けになるのかということを理解をしないと、ミャンマーの戦略って非常に大きく間違えてしまうことがあるので、今日は少しそのことについてお話をしていきたいと思うんですが。
ASEANって、大きく分けて3つのグループに私は分けるんですけど、1つがSMT、シンガポール・マレーシア・タイの先進ASEANですよね。どちらかというと、新興国の中でも進んでいる、先進的な国。もちろん、シンガポールなんていうのは、完全な先進国ですけども、タイとかマレーシア、こういったところも、バンコクやクアラルンプール、ジョホールは先進的ですけど、それ以外の都市はまだまだ新興国の要素が強いので、進行ASEANというふうに呼んでいますけども。こういう、いわゆるグループ、ASEANのグループの中では最も先進的な国を先進ASEANと。2つ目のグループがVIP、ベトナム・インドネシア・フィリピン、これは進行ASEANというふうに呼んでいて、いわゆる今まさに成長著しい。一方で、すべての国が、人口が億単位の国。これらの非常にポテンシャルの高い、今、日本企業が最も経営資源を投下をしているVIPというのが2個目に来て。3つ目がメコン経済圏であるCLM、カンボジア、ラオス、ミャンマーと。
なので、何を言いたいかというと、SMTやVIPでしっかりと事業が成功していないのに、いきなりミャンマーをやるというのは、これは順番が違う。成功する確率が非常に少ない。結局、FMCG、消費財メーカーにとって新興国の難しさって何かと言うと、伝統小売なんですよね。伝統小売の比率が高くて、伝統小売の比率が高いということは、伝統小売に売るためのディストリビューション・チャネルをしっかりつくらないといけない。伝統小売の比率が高い国は、輸出のビジネスじゃ無理なんですよね。今回の味の素みたいに、タイから輸出するとか、ベトナムから輸出してやるって、これはいいですけど、日本からミャンマーに輸出をしてFMCGを売っても、これは食品・菓子・日用品・飲料を売っても、関税で値段が全然合わなくなるので、ビジネスとしては成り立たない。一部の超富裕層か、もしくは現地の駐在員とか外国人向けのビジネスしかできないので、ビジネスのボリュームが大きくならない。そうすると、やっぱり現地に法人を持って、もしくは隣国の法人からミャンマーを狙うということをやらないと、なかなか事業としては拡大していかないので、そういう意味からも、やっぱりVIPが成功しているからこそミャンマーができるんだという位置付けをしっかり持たないといけないというのは1つ言えることなんじゃないかなと。
いきなりやる国じゃないですよ。2012年にSMTでもVIPでもほとんどビジネスができていないのに、メディアも散々ミャンマーブームだと言って煽って、経済紙から何から散々煽って、猫も杓子もミャンマーみたいな時代があったんですよね。そのときに、「中小企業もミャンマー」なんて言って、中小企業もだいぶいきましたけども、中小企業にとって最もハードルが高いわけですよね。だって、中小企業って何が大企業と比べて不足しているかと言ったら経営資源が不足している。その経営資源が不足している中小企業がいきなりハードルの高いミャンマーに行くわけですから、途中で息切れして当たり前、という話で。当時散々やったわけですけども、結局、今落ち着いてしまって、ブームが過ぎ去ったと。
ただ、ミャンマーというのは引き続き成長しているので、この一過性のドーンみたいなものに左右されないということはすごい重要で、そういうドーンというものは必ずドーンと下がって、また平常の緩やかな上り坂になっていくので、そこは1つ見極めないといけないし、やっぱりステージがあるので、SMTで成功した企業がVIPをやって、VIPで成功した企業がミャンマーをやる、ということが順序かなと。
僕、ミャンマーをやるという、そのタイミングとか、ミャンマーで成功するための戦略というのは、やっぱり1つベンチマークにすべき国というのはベトナムなんじゃないかなというふうに思っていて。ベトナムというのは、ASEANの中でも最も近代小売が少なくて、あそこの国は近代小売、確か、コンビニを入れても3,000店舗ぐらいしかないんですよね。一方で、伝統小売が50万店存在して。そうすると、あの国というのは、もう近代小売の3,000店は獲るということはマストで、それプラスいかに50万店のうちの何万店、何十万店獲れるかということがビジネスを成功させるうえでは、消費財が、キーとなるわけなんですよね。そうすると、伝統小売を獲るためのディストリビューション・ネットワークをつくらないといけないし。ベトナムというのは、ディストリビューターがセールス機能を持っていなかったりするわけですね。デリバリー機能しか持っていなかったりする。これはミャンマーでも同じようなことが起こり得るので。そういう意味でもベトナムで成功すると、ミャンマーでも成功しやすいという、そういう傾向はやっぱり非常に高いので、そこは1つ、ベトナムをベンチマークするというのはありなんじゃないかなと。
ちなみにエースコックもベトナムで50%程度のシェアを持っていて圧倒的ですよね、日本の袋麺のメーカーでは。日本では決して業界第1位じゃないエースコックが、ベトナムでは日清よりも成功しているというのが今の現状ですから、そこのノウハウを早くからエースコックはミャンマーに展開をしているということだと思うんですが。そういう意味でも非常に、ベトナムというのは1つのベンチマークになるんじゃないかなというふうに思います。FMCGの業界の人たちは、まずはベトナムでどう成功するかということを考えて。今の経済成長のスピードを考えても、ミャンマーがベトナムを抜くというのはちょっと考えにくい。やっぱりベトナムって非常に大きくて、人口もミャンマーの倍近くありますから、ここが1つの成功モデルとしてあって、その先にミャンマーを獲るというのが正しい考え方なんじゃないかなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、皆さん、また次回お会いいたしましょう。