第339回 中小企業の「海外に出ない戦略」 その2
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、中小企業の海外戦略ということで、「出ない戦略」の徹底ということでお話をしていきたいと思います。前回の続きですね。前回、中小企業、ここで言う中小企業は、売上数十億円~数百億円で利益がしっかり出ている企業というふうに定義をしておりますが。そして、製造業ですね。海外というのは新興国全般、ASEANに限らず新興国全般です。南米でもアフリカでもインドでも構いません。新興国全般という設定でお話をしていきます。
中小企業がグローバル展開をするときに、「とにかく法人を出すな」というお話を前回しました。「出ない戦略を徹底しよう」と。法人を出すとなぜよくないのかと言うと、売上が想定通りに必ずいくとは限らないというか、もうほぼ99%想定通りにはいかないと思ったほうがいいです。その中で法人を抱えるということは、あらゆる経費が掛かってきますので、出血をし続けながら戦うということになる。中小企業の最大の弱点は何かと言うと、経営資源が少ないということ。その経営資源が少ない中、出血をしながら、勝手の分からない新興国で戦って利益を出していくというのは、これはもう至難の業です。そうなってくると、やはり輸出でまずはある程度の基盤をつくって、ある程度の売上利益が確保できた状態で必ず天井がくる。輸出でやっている以上、現地のメインストリームのマーケットには入っていけませんので、基本的にはB2Cの製造業でもB2Bの製造業でも天井がきます。その天井がきたときに始めて現地に法人を展開するという方法に切り替えましょうねと、これが私が推奨している出ない戦略です。中小企業は絶対出ちゃだめですよと、現地のパートナーと合弁とか出資とか、工場設立も現地の売り先がもう確定しているとか、日本に輸入して日本で売れることが分かっているということを除いては、工場なんていうのはもっと後でいいですし、現地で販売拠点も持っちゃだめですよ、というお話をしました。
そんな中で、B2Cに関しては、基本的に輸出でやるとなると、これはやりやすい国というのを選ぶ必要があって、例えば、ASEANで見ても、ASEANって2つに大きく分けられる。3つに分けられるんですね。1つがSMT、シンガポール・マレーシア・タイという先進的なASEANで、比較的われわれに所得が、近いとまでは言いませんけど、高い人たち、シンガポールなんかは超えていますけども。もう1つがVIP、ベトナム・インドネシア・フィリピン。これはまだまだ後進ASEANで、小売なんかは、もう伝統小売が優勢の市場、8割が伝統小売、8割以上が伝統小売。こういう市場になってくると、輸出でやっていたら、100円のものが現地に行ったら150円とか200円になるわけですから、そうすると、なかなかこれを受け入れられると言うと、やっぱりSMTになっちゃうんですよね。VIPだとそもそも近代小売の数が少ない。具体的に言うと、ベトナムで3,000店舗とかしかないわけですよね。
一方で、伝統小売が50万店とかあったら、その50万店を攻略しなきゃいけないんだけども、日本で100円で売っていて現地に輸出したら150円200円になるものを伝統小売では売れませんから、そうするともう3,000店舗でしか売れないということになるんですよね。そうすると、そもそも3,000店舗のベトナムの近代小売を狙いにいくんだったら、海外に出る必要あるんですかと、日本国内の地方の小売店を狙っていったほうがいいんじゃないですかという議論になってしまうので、そもそもベトナムなんていうのは輸出で初めての海外展開でやるべき市場じゃないですよね。やるのであれば、もしASEANの中でやるのであればSMT、シンガポール・マレーシア・タイのほうが、圧倒的に輸出でビジネスをするのであればB2Cにとってはやりやすい。
もっと言うと、より先進的な、もう新興国と言うべきじゃないかもしれませんけど、台湾とかね、香港とか、それこそ韓国とか、そういうほうが、今の反日どうのこうのとか、香港の云々とかという問題を除外して、やりやすいんですよね。だから、そう考えると、やっぱりどの国から始めるかというので、難易度が全然違う。中小企業も経営資源が限られているので優先順位を絶対つけないといけない。一気に全部なんて無理なわけですよね。最も成功しやすい、成功体験をつくりやすい国はどこなんだということで選んでいくわけなんですけども、その選びを間違えちゃってね、初めての海外展開で、なんかうわーって言っているから、一時期のミャンマーみたいなね、もう今はあんなことになっちゃったからミャンマーというのはあり得ないですけども。
そうそう、さっき言っていたSMT、VIP、あとメコン経済圏ってね、ミャンマー・カンボジア・ラオス、こんなのはもう一番難しいので、伝統小売9割以上の市場でどうやって輸出で商売するんだって。スイスのネスレなんかが一生懸命キットカットを頑張っている市場でね、日本の菓子が輸出でどうのこうのなんてできる市場じゃないので、タイでやっている、ベトナムでやっている、そこで成長したからタイからミャンマーを狙うとかカンボジアを狙うとか、ベトナムから狙うというのはありだと思いますけども、基本的にはASEANの中ではSMT。SMTよりも台湾、香港、シンガポール、それから韓国、そういうところを狙ったほうが圧倒的にいいですよ、というのがさっきの、このお話ですよね。だから、国選びで全然成功確率が変わりますよということと。
あとね、もう1つ意識してほしいのが、どの都市を選ぶかということはすごい重要で。結局ね、輸出でやるということは、もう首都狙いなんですよ。国を狙うというよりかは、マレーシアをやるんじゃなくてクアラルンプールとジョホールを狙うんです。それから、タイをやるんじゃなくてバンコクをやるんです。韓国をやるんじゃなくてソウルをやるんですみたいなね。韓国ぐらいいったら全土をやってもいいかもしれませんけども。でも、基本的には都市部にとどめておくということになるんですよね、消費財の場合は。だから、国選びで成功確率が変わりますよということと、それから、都市を狙うんですと、国を攻めるんじゃなくて、都市を狙うということを少し意識をしてもらったらいいのかなというふうに思います。
B2B、B2Bはまた次回ちょっと続きをお話しましょうかね。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。