第418回 重要なのは「海外売上比率」ではなく「現地シェア」
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですけども、この本の解説をしていきたいと思います。今日は70ページ、「2-1 重要なのは「海外売上比率」ではなく「現地シェア」である」ということについてお話をしていきたいと思います。前回、この海外売上比率というものと、それから現地シェアという指標、国際マーケティングをやっているのか、グローバル・マーケティングをやっているのかでこの指標が全然変わってきますよと。いまだに海外売上比率とかっていう指標を大切にしている企業というのが、企業のIRの資料とか株主総会なんかを見ていても見られますけども、やっぱりそういう企業って実はなかなか海外がうまくいっていない。これって何か1つの基準として参考値として出すぐらいのレベルだったら私も別に否定しませんが、いわゆるその比率が中心になっていると、グローバル化もしくはグローバル戦略の中心になってしまっている、評価の中心になってしまっているということが1つ問題なのかなというふうに思っていて。いわゆる「わが社は海外売上比率が4割を超えている。すごいだろう。グローバルだろう」と。これは一見して聞くと、「すごいな。4割超えているんだ。グローバルな会社だな」とお思いなんですが、実はそんなことはなくて、これ重要なのって、じゃあ、4割超えているのって、4割がいくらなんですかということと、そのいくらを世界何十カ国でやっていて、そして、それぞれの国のシェアが何%なの?と。海外売上比率が4割あったとしても、これは各国のシェアが数%では話にならないわけで。
一方で、日本でも海外売上比率と言っているように、本社が東京なんだったら、じゃあ、地方売上比率とかっていう基準をね、大切にしているんだったらそれはいいですけども、日本国内でそんなことを言う企業ってないわけですよね。大阪売上比率がとか、九州売上比率が高いとか、地方売上比率が高いなんていうことはないわけで、日本国内ではシェアがどれぐらいありますかという話をするわけですよね。これが海を越えた途端にいきなり海外売上比率というマジックワードを使ってしまうというのが非常によろしくない。重要なのはシェアですと。見間違ってしまう。この海外売上比率という基準、指標を使っている企業というのは、国際マーケティングの視点で戦っているので、マーケティング戦略自体も古い可能性があるということを前回お話していて、現在はグローバル・マーケティングの時代であって、グローバル・マーケティングの視点を持っている企業というのは確実に現地シェアというかたちで海外売上比率なんていう指標は持ち込まないわけですよね、経営の指標として。なので、そこが非常に重要ですよという話をしました。
それだけ現地シェアが重要だよということを、さらにこれ事例を使って書いているんですかね。ヘアケア商品と、それからチョコレートのマーケットシェアみたいなね、こんなのを出して。例えば、ベトナム、インドネシア、フィリピンのヘアケア商品の上位1、2というのはユニリーバとP&Gなんですけど、だいたいこの2社で、例えばベトナムだと、47%ぐらい、5割弱ぐらいがもうユニリーバとP&Gなんですよね。インドネシアでも50%弱ぐらいなので49%ね、同じようなものですよね。フィリピンに関しては、フィリピンは他のASEANと比べてアメリカ寄りの傾向が非常に強い。例えば、インドネシアとかだとやっぱり一番最初の選択肢としてくるのが日本で、そこから韓国、アメリカとかだったとしても、フィリピンなんかはアメリカみたいな。次に日本が来ていたんだけども韓国みたいなね。韓国のスターがアメリカで人気になるので、それを見ていますから、アメリカ、韓国、日本みたいな順番になるんですけど、そのフィリピンなんかはユニリーバとP&Gのシェアが64%とかね、あるわけですよ。
チョコレートにおいても、ベトナム、マースとネスレ。マースってスニッカーズとかを出している、M&M'sとかを出しているところですけどもね。マースとネスレでだいたい20%超えてます。インドネシアはデルフィが非常に強いですよね。シンガポールの会社ですけど45%で、マヨラが24%、25%ぐらいあるのでね。フィリピンはユニバーサル・ロビーナというローカル系の一番最大手の食品会社ですけど、そこが38%持っていて、あとはモンデレーズが11%ぐらいですけども。ユニバーサルなんかはいろんな国のあれをつくっていますからね。あと、マースがやっぱり9.4%で3位に入ってきていて、シンガポールのデルフィが8.6%で、5位がハーシー、6位にネスレと、7位にフェレロということで日系企業は1社も入っていないみたいなですね。あれ?チョコレートって明治じゃなかったんだっけみたいな、ロッテノガーナチョコもおいしかったよねみたいな、森永さん、グリコさんはどこへ行ったんだっけ?みたいな、そういう状態になっているわけなんですけども。
まあまあ、話しが逸れましたけど、海外売上比率なんていうのはまったく意味がなくてね。こうやって見ると、戦っているのは現地のシェアなんですよね、各社生き残れるかどうかというのは現地シェアが高いか低いかで、海外売上比率がどれだけ高くたって、それがばらけていて各国でシェアが数%だったら、これ、もう時間なだけなわけですよね。ある一定の期間で淘汰される可能性って非常に高くて。だとしたら、「うちは3カ国にしか出てないけど、その3カ国ではシェア7割持っています」と言ったほうがやっぱり圧倒的に良くて、そのほうが強いわけですね。切り崩しがなかなか難しい。3カ国というのはちょっと極端ですけど、例えば30カ国40カ国やるんだったら、もう10カ国にフォーカスして、そこで高いシェアを持っているほうが圧倒的にいいわけで。
ここで重要なのって、海外売上比率を気にしている視点って、やっぱりどれだけ輸出を増やそうかという話になるんですよね。どれだけ輸出を増やそうか。輸出を増やすって、これはマーケティングを考える必要はないので、貿易を考えるわけですよね。とにかく商売、商談をしに行くというイメージですよね。買ってくれる人いませんかと。値引きしますよと、安いですよと。なんですけども、現地シェアを考えるということは、やっぱり現地の消費者が何を欲しているんだろうと、中間流通事業者はどういうふうにしたらこれを広めてくれるんだろうと、小売はどうしたらよく取り扱ってくれるんだろうってマーケティングを考え始めるので、言ったら全然プロセスが変わってくるし、活動も変わってくるわけなんですよね。なので、現地シェアを重要な指標にしないと、結局取られるアクションが変わってくるので伸びませんよということを申し上げているページでございます。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。