コラム・対談 Columns
グローバルの流儀 フジサンケイビジネスアイ紙 特別対談シリーズ『グローバルの流儀』は、弊社代表の森辺がグローバルで活躍する企業の経営トップにインタビューし、その企業のグローバル市場における成功の原動力がどこにあるのか、主要な成功要因(KSF)は何かなど、その企業の魅力に迫る企画です。本企画は2015年にスタートし、今年で9年目を迎えます。インタビュー記事は、新聞及び、ネットに掲載されています。
Vol.7 世界の味「KIKKOMAN」に学ぶ海外戦略とは
キッコーマン株式会社 取締役 常務執行役員 国際事業本部本部長 茂木 修 氏アメリカで成功を収めた「テリヤキ」マーケティング
森辺: 日本の伝統調味料であるしょうゆのおいしさは今や100カ国以上で認められ、 アメリカではおいしい「Soy Sauce」といえば「KIKKOMAN」といわれるほど広く浸透していますね。
茂木: 弊社がサンフランシスコに販売会社を設立したのが1957年。新参者の弊社はどうやってマーケティングしていくかが大きな課題でした。 結局は食べておいしさを感じてもらうしかないと思い、「現地の味になる」ということをテーマに掲げました。 アメリカの人が普段食べている食事の味付けにしょうゆを使ってもらいたいと考えたのです。
森辺: そんな「現地の味になる」という取り組みの中で生まれたのが「テリヤキソース」なのですね。
茂木: そうです。アメリカ人は肉をよく食べるので、「肉に合いますよ」というプロモーションを始めました。 その結果、しょうゆの価値が理解されていき、より使い勝手のいい「テリヤキソース」も生まれました。 それから半世紀以上が過ぎ、今ではアメリカの半数近い家庭にしょうゆが常備されています。
森辺: 現在の御社の海外展開についてお聞かせいただけますか?
茂木: 弊社の海外事業は、しょうゆの製造・販売と東洋食品の卸売りがメーンになります。 消費者にとってはキッコーマンと2つの接点があるわけです。 弊社としてはそれをうまくコントロールしながら、両輪のような感じで前に進んでいければと考えています。
キッコーマンしょうゆをグローバルスタンダードの調味料に
森辺: 今後はフィリピン、タイ、シンガポールなどに力を入れていく計画があるそうですね。 アジア展開の上で御社の課題は何だとお考えでしょうか?
茂木: 弊社には「キッコーマンしょうゆをグローバルスタンダードの調味料にする」という目標があります。 しょうゆについては全世界同じ品質のものをお届けしています。 また、アメリカの「テリヤキ」のような、市場に合わせた提案もしていきたいと考えています。
アジアの食文化は国によって大きく異なるので、食文化ごとにどのような戦略を出すかが一番の課題になるでしょうね。
森辺: 今後の海外事業の展望をお聞かせいただけますか?
茂木: アジアの先には中南米、アフリカと次のステージが待ち受けています。 ですから気の長い話ですが、30年後、50年後に向けたグランドデザインをつくって進めていくべきだと考えています。
ゲスト
茂木 修 (もぎ おさむ) 氏
キッコーマン株式会社 取締役 常務執行役員 国際事業本部本部長
Osamu Mogi, Kikkoman Corporation
1967年生まれ。1990年に慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、ウィスコンシン大学(ミルウォーキー校)経営学修士を取得。1993年6月にPriceWaterhouse(現、Pricewaterhouse Coopers LLP)入社、シカゴ事務所に勤務。1996年10月にキッコーマン株式会社に入社し、プロダクト・マネージャー室配属(しょうゆ事業担当)。2011年7月より海外事業部長代理に、その後、2012年6月より執行役員 海外事業部長、2014年11月より執行役員 国際事業本部副本部長 兼 海外事業部長 兼 海外営業部長。
インタビュアー
森辺 一樹(もりべ かずき)
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 特任講師
Kazuki Moribe, SPYDER INITIATIVE
1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。大手を中心に17年で1,000社以上の新興国展開の支援実績を持つ。著書に、『「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法』中経出版[KADOKAWA])、『わかりやすい現地に寄り添うアジアビジネスの教科書』白桃書房)などがある。