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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 39 「現地適合化」ではなく、「世界標準化」

著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長

「世界標準化」した商品を微調整していく

次に、「現地適合化」と「世界標準化」について見ていきましょう。多くの有識者から叫ばれているのが、「日本の消費財メーカーが海外展開を行う時には現地適合化が必要だ」ということです。確かに現地適合化 は大切ですが、それはあくまで根幹部分に世界標準化があってこそのものだと考えています。日本企業が弱いのは、むしろ世界標準化だと考えています。
わかりやすく説明するために、少し日用品などのFMCG 業界から離れ、家電業界を例に説明します。アップルやダイソンという世界的な先進グローバル企業は、根幹部分では決して現地適合化をしていません。「iPhone」は色も形も世界共通です。ダイソンの掃除機も、デザインや、パワフルなサイクロン機能で吸引力が 変わらないのは世界共通です。様々な趣味趣向を持つ消費者のニーズなどまるでお構いなしで、「これが私たちの考えるクールな商品です! 欲しいですよね?」と言わんばかりのスタンスが徹底して世界標準化しています。ここまで見事に世界標準化されると絶対的な存在になり、消費者はそのブランド力に酔いしれ、いつしか皆が欲しいと感じるようになるのです。そして、世界標準化した上での現地適合化は、日本語に対応したマニュアルや、日本の住宅事情に合わせた小サイズ、静音タイプといった枝葉の部分なわけです。

世界標準化させると投資効率が高まる

FMCGの業界でも同様で、先進グローバル消費財メーカーの瑞ネスレは「ネスカフェ」、英蘭ユニリーバは「ラックス」、米P&Gは「パンパース」、米マースは「スニッカーズ」、米コカ・コーラは「コカ・コーラ/スプライト」を世界中で売っています。

彼らも根幹部分は世界標準化した上で、梱包仕様や、入り数、グラム数、原材料を変更したコストダウンなどの調整は、その国々に応じて適合化しているのです。世界標準化すると、効率が上がり、ブランドが早く広く浸透し、ノウハウも溜まりやすく、オペレーションも管理しやすいというメリットが大きく、世界レベルで事業をする際の投資効率が高まります。そして、単国の成功で留まるのではなく、複数の国や地域で成功しやすくなるのです。海外の各国市場でシェア2割以上を取ろうとするならば、世界標準化は必要不可欠であり、その土台があってはじめて現地適合化が生きてくるのです。