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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 43 アジア新興国では長期的な視点が重要

著者:森辺 一樹
スパイダー・イニシアティブ株式会社 代表取締役社長

なぜアジア新興国では長期的な視点が必要なのか

前項で、利益を出すためには最初にある程度の利益の落ち込みを覚悟する必要があると述べましたが、アジア新興国では一旦落ち込んだ後に黒字に転じるまで、そして目標の売上を達成するまでには、長い期間がかかることを理解しなければなりません。
日本企業の場合、日本の国内市場ではすでに大きな実績があり、市場の信頼があるため、投資期間が短く、投資額も小さくて済むのが当たり前で す。販売チャネルはすでにあるので、新たに構築する必要はなく、それら のコストも不要です。
また小売の信頼もあり、消費者の認知もあるため、それらを得るための経済活動をする必要もありません。また、過去の様々な経験則が十分に蓄積されているため、投資回収も想定しやすいのです。
これに対して、アジア新興国市場では大きな実績はなく、市場における信頼も限定的です。販売チャネルもイチから構築しなければなりません。小売の信頼や消費者の認知も限定的です。そして、日本のように近代小売(MT)中心の市場ではなく、伝統小売(TT)が優勢なアジア新興国市場ではその攻略には時間がかかるため、投資期間が長く、投資額も大きくなるのです。
綿密な調査をもとにしなければ、投資が回収できるまでの期間を想定することが容易ではない市場とも言えるでしょう。
しかし、過去にこの連載でもお話ししたように高い経済成長率を維持していて、中間層の拡大が著しいのがアジア新興国の魅力であること。また若年層が厚いことからも、今後さらなる拡大が見込まれます。一度伝統 小売を攻略し、チャネル作りに成功すれば、長期にわたり収益が得られる市場なのです。

チャネル作りのノウハウが今後に生きる

これから皆さんがアジア新興国における本当の意味でのチャネル作りを始めるとすれば、それは皆さんにとって初めての経験になるでしょう。それなりの投資とその投資回収までの期間を考えれば、一見、ROI(投資対効果)が悪いと感じるかもしれません。
しかし、2030年には30億人にまで拡大すると言われるアジア新興国市場の大きさを考えれば決して悪くありません。
さらに、アジア新興国市場におけるチャネル構築で少々の労力がかかったとしても、そのスキルやノウハウは皆さんの会社に確実に蓄積され、次に攻めるべきメコン経済圏やインド、南米、アフリカに生かすことができ るのです。
アジア新興国での経験値を生かして、その他の新興国ではより低い投資額で、より短い投資期間でチャネルを構築し収益を得ることが可能になるでしょう。
実際に、欧米の先進的グローバル消費財メーカーがまさにそうなのです。製品優位性が十分にある日本の消費財メーカーだけに、シェアを取る上でのチャネルの重要性をより理解し、今まで以上にチャネル構築に投資をしていかなければならないのです。