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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 54 組織のマネジメント体制の可視化

著者:森辺 一樹

伝統小売はマネジメントが大事

日本企業と欧米系のA社、B社では、組織のマネジメントがどう違うのかを見ていきましょう。まず、組織のマネジメント体制を見る際に、近代小売(MT)と伝統小売(TT)では、市場を攻略するために実施する内容が異なります。マネジメントという意味では、伝統小売側が重要になってきます。近代小売に関しては、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、自社の現地法人で直販しています。従って、自社セールスの中に各近代小売のキー・アカウント・マネージャー(小売別担当者)がおり、彼らが近代小売のバイヤーと直接商談をする形です。 一方で、伝統小売は、近代小売とは比較にならないほど数が多く、ディストリビューターも複数活用する必要があり、常に既存店と新規店を意識しなければストア・カバレッジも、インストア・マーケットシェアも上がりませんので、マネジメントが重要になります。次の図は、伝統小売攻略における競合のマネジメント体制です。多くの日本の消費財メーカーは、中間層が大切だと言いながら、なかなか取り組みができていません。この連載で過去にも説明した通り、そもそも ProductとPriceの部分でつまずいているケースが大半ですが、仮にこの部分をクリアできていたとしても、Placeの部分でシェアを上げられる組織体制になっておらず、マネジメント云々のレベルまで到達していないケースが少なくありません。

やるべきことをシンプルに管理

一方で、欧米系競合他社は、KPI を「ストア・カバレッジ」と「インス トア・マーケットシェア」の向上にフォーカスし、新規店をいかに獲得するかと、既存店の売上をいかに伸ばすかだけをセールスとディストリビューターに課しており、その活動をマンスリー、ウィークリー、デイリーで管理しているのです。 問題のあるエリアには対策を講じ、支援をし、うまくいっているエリアは表彰というインセンティブを与え、常にセールスとディストリビューターのモチベーションを高い位置に置く努力をしています。担当セールスとディストリビューターは、すでにデータとして持ち合わせているコンバージョン率(成果達成率)に基づき、1日に決められた数の新規店を回り取扱店を増やします。その一方で、既存店からの注文、代金回収、売上確認、ディスプレイ状況確認、競合情報取得も行います。欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、難しく複雑なことは絶対にさせません。売上を構成する方程式が、「売上 = ストア・カバレッジ×インストア・ マーケットシェア」なので、シンプルに、このストア・カバレッジとインストア・マーケットシェアを上げるための活動をディストリビューターに課し、それを自社のセールスに管理させているのです。

このシンプルな作業こそが、先に説明したA社とB社の20万店、10万店のストア・カバレッジを生んでいるのです。このように、主要競合の組織体制とマネジメント体制を可視化することで、今のレベルでやっていたら勝てないということが明確になるのです。こうして、自社の課題と改善策を明確化し、最も効率の良い組織体制と管理育成方法を確立していく必要があるのです。