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【連載】日本企業とグローバル・マーケティング

本コラムは、日本企業とグローバル・マーケティングを様々な観点で捉え、日本企業がグローバル市場で高いパフォーマンスを上げるための方策を具体的に指南する連載シリーズです。


Vol. 86 Q&A 自社だけでの戦略作りに限界を感じているが、コンサル活用も不安

今回も私がセミナーや、YouTube番組、Podcastなどでよく頂く質問についてお答えしていきたいと思います。

<質問>

大手消費財メーカーです。すでに多くの国々に進出していますが、十分な成果が得られていません。その要因は戦略の甘さにあると考えています。しかしながら、自社のリソースだけでの戦略策定には限界を感じています。一方で、コンサルにお願いすることにも慣れておらず、不安を感じています。どうすべきでしょうか?

<回答>

結論から申し上げると、「外部の力を借りる」、つまりは一度コンサルティング・ファームなどの専門家に依頼するのが最も有効な手段だと思います。なぜなら、自社だけでの戦略作りに限界を感じているわけで、これは自社の経営資源の問題ですから、今すぐにそれが解決されないのであれば、外部の専門家の力を借りる以外に方法はありません。ただ、重要なのは、どのような専門家を、どう使うかです。

日本企業は、経営戦略に関わる一部の部門以外、例えば、事業部門などが、外部の専門家やコンサルティング・ファームなどの知見やノウハウを借りて戦略を立てていくことをあまりしません。一方で、先進的なグローバル企業の多くは、自社にノウハウがないようなことに関しては、躊躇なく外部の専門家を活用します。理由は簡単です。わからないことを、わからない人たちだけで考えても何もアウトプットできないからです。 これほど時間が無駄なことはありません。しかし、日本企業の多くは、 わからないことでも、外部の専門家に頼むのではなく、まずは自分たちだ けで頑張って考えようという商習慣があります。このやり方だと、勝手が ある程度わかっている国内ビジネスではまだよいですが、グローバル競争 では通用しません。 専門家やコンサルタントが日々インプットしている情報の量は圧倒的で、 専門ではない人と比べると格段の差があります。そして、彼らの長年蓄積してきた経験は、仮説検証の数が凄まじく、経験していない人とは雲泥の差です。このナレッジとノウハウを活用しない手はありません。

では、なぜこれだけの優位性がわかっているのに、専門家やコンサルタントを活用することに躊躇するのか。その理由は、専門家やコンサルタントに支払う費用に対する概念です。日本ではコンサルタントに支払う費用は「コスト」にカウントされますが、欧米のグローバル企業では「投資」と捉えます。今では、中国やASEANの先進グローバル企業も同様です。仮にコストと捉えても、自社にないナレッジとノウハウを短期間で手に入れて、事業の成長にレバレッジをかけられるわけですから、必須のコストと捉える企業が多いのです。日本企業も、ことグローバル戦略に関しては、より積極的に専門家やコンサルタントを活用し、一緒に戦略を作って いくべきだと思います。

次に、これらコンサルティング・ファームをどう選ぶかに関してお話しすると、やはり重要なのは、そのファームがフォーカスしている専門です。ご質問のように、例えば消費財メーカーで、「ASEANの販売チャネル構築」に課題を抱えているのであれば、それを専門としたファームに依頼するのが最も適した選び方です。自分たちが、B2B メーカーで、中国の販売チャネル構築」に課題を感じているなら、それを専門としているファームに依 頼するのが最も適しています。大手だからとか、有名だからとか、海外案件も行っているから、などでざっくり決めるのは危険です。海外案件といっても、様々な種類の海外案件があります。重要なのは、自分が依頼しようとしていることを専門としているファームなのか否かということです。

また、コンサルタントの費用に関して注意すべきは、安い費用には要注意です。コンサルタントは、自身の過去の投資で得たナレッジとノウハウを、限られた時間の中で、限られた人たちに提供する商売です。そのため、値段を下げるということはほとんどありません。従って、値段を下げられるということは専門性が低い可能性があります。

最後に、選んだコンサルタントをどう使うか、について少しお話をします。まず、コンサルタントを活用する際、絶対にやってはいけないのはコンサルタントに任せっきりにすることです。
コンサルタントは、皆さんの事業の結果に責任を負ってくれません。責任を取るのは皆さんです。だからこそ、コンサルタントに頼りきりも任せきりもダメで、活用するのです。自社のために惜しみなくそのナレッジとノウハウを提供してくれるパートナーとして活用する。あくまで進む方向をリードするのは自社でなければなりません。そのことに気をつけて活用してみてください。