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第125回 アジア新興国市場は、「高品質」だけでは売れない

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テキスト版

皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、アジア新興国市場は、「高品質」だけではなかなかものが売れないということについて、お話をします。このことをしっかりと理解しなければ、アジア新興国市場の中間層に対して、高いマーケットシェアを獲るとこはできません。日本の大手の消費財メーカーが、なかなかアジア新興国市場で高いマーケットシェアを獲れていない理由の1つに、このことが大きく起因しています。今日は、アジア新興国市場は、もう「高品質」だけではなかなかものが売れないんだ、ということについて、一緒に学んでいきましょう。

まず、最初に申し上げたいのは、「日本製だからアジアの人は欲しがるはずだ」という概念はもう間違っているということです。日本製だから、メイドインジャパンだから、メイドバイジャパニーズだから、高品質だから、高機能だから、アジアの人はきっと欲しがるはずだという概念を、われわれはそろそろ捨てなければなりません。

実際この、日本製だからアジアの人は欲しがるはずだと、高品質だからアジアの人は欲しがるはずだ、概念自体は、実際には間違っていない。確かに、彼らは日本製を欲しいとは思います。ただ、この「欲しい」と思うマインドと、「欲しいから買う」という購買の行動が、必ずしもつながらなくなってきたというのが、昨今のアジア新興国の30億の中間層で起こっている現実です。昔は、日本製が欲しいと思った人は買った。この「買う」ということ、日本製が欲しいというこのマインドと、思考と、買うという購買行動が、ほぼくっついていたんですが、今は、確かに日本製はいいものだという認識はみんな持っていると。アジアの人たちに会えば、「日本はすごいよね」と、「日本製はいいよね」「高品質だよね」「高機能だよね」「僕も日本製が欲しい」と、彼らは言います。ただ、実際に買うかと言うと、なかなか購買行動がつながらなくなってきた。じゃあ、なんで、これがつながらなくなってきたのか。昔と何が変わったんだと。われわれの品質自体が下がったのか?と。われわれのブランドが下がったのか?と。そうじゃない。メイドインジャパンは、引き続き、いいブランドである。そして、われわれの品質は、むしろ昔よりもさらに上がっている。じゃあ、なんで、アジアの人たちは、高品質だけではもうものを買わなくなったのか?その理由は、競争環境です。いわゆる、日本製以外の多くの選択肢がかれらの周りにはある。もう日本製じゃなくても、中国製でも韓国製でも台湾製でもいいわけですよね。昔は確かに、中国製というのは粗悪品というイメージがあった。日本でも15年ぐらい前は、中国製=安かろう悪かろうの代名詞であったと。われわれ、ばかにしたわけですよね。ただ、もうすでに、中国製と日本製の差というのは、なかなか目に見えにくくなってきた。そんな中で、価格が安い中国製のほうが、彼らの選択肢としては全然ありなわけですよね。韓国製のサムスンのテレビのほうがありなわけですよね。今、アジア新興国の若い世代というのは、僕の世代なんていうのはソニーで育っているので、いまだにソニーに対する執着が非常に強いと。ただ、彼らは生まれたときからソニーよりもサムスンが周りにあるんだと。日本のパナソニックよりも、ハイアールが自分たちの生活にあるんだと。そうなったときに、日本以外の選択肢がたくさんあるわけですよね。

その昔、80年代90年代、世の中のありとあらゆるものは日本製で埋め尽くされていた。しかし、もう、そんな時代はとうの昔に過ぎ去っていて、今は、中国製や台湾製や韓国製という選択肢がアジア新興国の中間層にはあるわけで。そうやって、彼らの選択肢が増えた以上、ひたすら「高品質なんです」、ひたすら「メイドインジャパンなんです」と言っていても、それを求めるのは、一部の富裕層、訪日観光客で日本に来るような富裕層に限定されてしまう。30億のアジア新興国の中間層のど真ん中がなかなか求めにくい、ということになってしまうのです。

今日は、これぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。