第130回 アジア新興国市場 B2C企業のための戦略的な販売チャネルとは
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日はアジア新興国市場において、B2Cの製造業にとって構築すべき販売チャネルって一体どういうものなのかと、持つべき販売チャネルは一体どうあるべきなのかということについてお話をしたいと思います。日本の消費財メーカー、ここで言う消費財メーカーというのは、食品や飲料、菓子、日用品等、特にFMCGの業界の企業、製造業のことを指していますが、こういった企業がアジア新興国でなかなか高いマーケットシェア、日本のような高いマーケットシェアをあげられていない、その大きな要因の1つ、最も大きな要因の1つにこの販売チャネルというものが存在します。日本企業は、この販売チャネルが弱いばっかりに、いい製品を持っているのになかなかアジア新興国で中間層に対して商品が広く浸透していかない。訪日インバウンドみたいなところだけに商品が限られてしまって、一部の富裕層だけが好む商品になってしまって、メインストリーム、消費財メーカーにとって一番重要な数と頻度と継続性というものを得られる中間層の攻略ができていない。この要因の1つに販売チャネルがあるということで、今日はそれを一緒に学んでいきましょう。
まず、この図で説明をしているのが、青いほうは、これ、グローバルの先進的な消費財メーカーです。グローバル先進企業というふうに私は呼んでいますが、そのメーカーの販売チャネルのストラクチャー。一方で、赤いほうが日本の消費財メーカーの販売ストラクチャー。ASEANの某国の販売のストラクチャーの実際のものなんですが、これはもう一目瞭然で、何を言いたいかというと、ASEANでFMCGで1カ国1代理店制、ここでは代理店というワードよりもディストリビューターというワードを使いますが、1カ国1ディストリビューター制で成功するわけがないんですよね。なぜならば、この番組でも再三お話をしてきましたが、アジア新興国のマーケット、小売というのは2種類いますと。近代的な小売であるMTと伝統的小売のTTと、その比率が全然違うわけですよね。例えば、インドネシアには300万店のTTが存在して、一方でMTというのはインドネシアでも、ASEANで最も多いわけですけど、3万5,000店舗ぐらいのMTが存在して、一方でTTは300万店ある。ベトナムでも50万店ぐらいのTTが存在すると言われていて、うち、食品が置けるTTが30万店。一方で、MTの数というのは、ベトナムは一番少ないんですけど200店舗ぐらいしかない。こういう市場において中間層を取るということは、いかにTTを取らなきゃいけないかと。なので、日本企業が変えなきゃいけないところというのは、もちろんチャネルは1つの一番大きな要素なんですけど、製品そのものがTTを置けないような製品をいくらつくっても、こういった国ではなかなか中間層を獲得することはできないので、結果としてターゲットが上振れして大した物量が出ないということになるので、商品を変えていくということは必要になるんですけど、今回はチャネルにフォーカスをした回なので、チャネルのお話をしますが。
基本的には、適切な商品だと、中間層やTTに置ける適切な商品があるという前提があった場合に、やっぱり1ディストリビューターでMTもTTも全部いけるというのは、なかなかそんなのはなくて。基本的にはディストリビューターは得意不得意があると。MT向けのMTが得意なディストリビューター、TTが得意なディストリビューター。また、TTをやるんだったら、MTをやらせてあげないとだめなケースというのも存在をして。MTも、何十種類の小売があるわけですよね。近代小売、いろんな小売がある、ロッテマートもあれば、ビッグCもある、何とかもある、いろんな小売がある。その中で、自分たちはセブンイレブンとマーキュリードラッグとルスタンズとロビンソンズは強いけど、ピュアゴールドは弱いんだと。でも、会社としてはピュアゴールドをやらないと、それはなかなかよろしくないということであれば、やっぱりピュアゴールドはピュアゴールドで別のディストリビューターにしないといけないので、MTを攻略するというだけでも本当に1社のディストリビューターでいいんですか?というのは、バイ小売で決めていかないといけない。このディストリビューターは一体どの小売に入れる能力があるのかということは、契約前から理解をしなきゃいけない。そして、自分たちが入れるべきMTというのはどのMTなのか。そして、そのMTに到達できているディストリビューターはどのディストリビューターなのか。それが1社で足りないのであれば、2社3社と増やしていかないといけないし、こと何十万店、何百万店存在するTTに関しては、エリアを分けて、ディストリビューターをマイクロマネージメントしていかないといけない。これ、青いほうの図、欧米の先進的なグローバル企業ですけども、基本的にはMTは直接やっているわけですよね。自分たちの現地法人が直販をする。そして、TTに関しては8社ぐらいのディストリビューターを使ってエリアを分けて網羅的にTTを配荷をする。それによって高いマーケットシェアを維持している。
よくよくチャネルストラクチャーの話をするときに、私、P&Gモデルとネスレモデルという話をしますけども、ネスレリーバモデルというふうな話をしますけど。P&Gというのはまさにこのやり方で、もともと彼らもASEANで1カ国50ぐらいのディストリビューターを使っていた時代というのがあるんですけど、今はそれが集約されて、だいたいどのASEANでも8社ぐらい、比較的大規模から中堅規模のディストリビューターを使ってまんべんなく配荷をしている。これ、製品にもよるんですよね。P&Gというのは日用品ですから、そんなに細かいマイクロディストリビューションは要らない。一方で、ネスレ、ユニリーバというのは、今度食品になってくるので、本当にマイクロディストリビューションが必要になってくる。そうすると、100、200の小さなディストリビューターを網羅的に使ってTTを攻略すると、こんなことをやっているわけですよね。これだけ複雑なチャネルストラクチャーをつくらないとASEANの市場、新興国の市場というのはなかなか配荷が進まない。まだ、99.9%以上がTTの市場であるインドとか、ほぼ100%TTであるアフリカなんていうことを考えると、このASEANでTTの攻略、TTを含めたチャネルストラクチャーの構築みたいなことをしっかりとスタディしないと、この先のメコン経済圏、インド、それからアフリカという市場でもまた出遅れて負けるということにもなるので、今まさに、このASEANの中間層、TTに対するチャネルストラクチャーを日本企業はしっかりやっていかないといけない。
多くの日本企業は、この赤い図のように、基本的には現地法人があってもMTすら現地法人で直販することができずに1社1カ国1ディストリビューター制を引いて、そのディストリビューターにやらせて、TT、GTに関しては、もう全く手つかずと、伝統小売は手つかずというのが大変多い。従って、チャネルに対して、関して日本企業は多くの先進的な企業のチャネルストラクチャーをしっかり学び、自分たちのチャネルと彼らのチャネル、その戦闘能力がどう違うのか、自分たちには何が足りていて何が足りていないのか、こういったことをしっかりと学んでチャネルを改善していかないといけないと思います。
それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。