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第146回 海外進出 – 失敗する企業の法則

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、海外進出における失敗する企業の法則についてお話をします。長年、日本企業の海外進出を支援していると、多くの失敗に出会うと。ときには、私自身も一緒に失敗をするということを積み重ねて、それがノウハウになっていくわけなんですが、この私の支援、キャリア、約20年ぐらい、20年近くになりますが、その中で大手の大企業であっても、失敗する企業には必ず法則があって。それを集約していくと、どうやら3つぐらいの共通点があるということに気付きました。逆に、この共通点を皆さんが今日知ってもらうことで、これから海外の事業に出る、もしくは、もうすでに出ているんだけどなかなかうまくいかないという場合には、これからお話する共通点と比較をしてみて、自分はその失敗の法則に当てはまってしまっていないかということを見て検証していただければというふうに思います。

まず、失敗をする企業なんですが、3つの法則、共通点があって。1つが商品頼りの海外展開をするというのが日本の製造業の中では大変多い。サービス業であれば、サービス頼りということになるんですが。商品頼りというのはどういうことかと言うと、自分たちは高い原材料を使って、高い技術力を使って、いいものをつくっているので、当然海外で売れるだろうという、自分たちのProductベースだけで進出をしていく。つまりは、その海外進出のうえで最も重要なのは、ターゲティングと4Pなわけですよね。4Pというのは、Product、Price、Place、Promotionと。フィリップ・コトラー、マーケティングの父、フィリップ・コトラーは、商品が売れるというのは、4Pが最適化されて、初めてそれが実現できると言っている。にもかかわらず、この最初のProductの1Pだけにフォーカスがあまりにもいってしまって、なおかつ、このPはProductのPだけではなくて、PremiumのPと。自分たちの商品はPremiumなんだと。だから、海外で売れるはずだという海外、商品頼りの商品展開というのが1つですよね。

もう1つが、パートナー頼りの海外展開。自分たちは海外に進出するときに、当然、自分たちはその国のことはよく分からないと。従って、パートナーが必要である。パートナーが必要だということはもう、間違いない。間違いないというか、パートナーが大切だということは間違いないと思います。必要か否かというのはケースによりますけども、パートナーが重要であるということは間違いない。そうすると、そのパートナー、いろんなパートナーがいると思います。ジョイントベンチャーをつくる同業者のパートナーもいれば、ディストリビューターを活用するという意味でのディストリビューターのパートナーもいる。このパートナーとの展開は否定をするべきものではないんですが、パートナー頼りの海外展開になっているというケースが大変多い。どういうことかと言うと、「自分たちはつくる人、売るのはあなたたち」ということで、基本的には売ることのすべてをパートナーに任せてしまう。従って、要は、売れればいいですけど、売れなかったときの対策が打てない。売れなかったとき、パートナーの言い訳として、「為替が円高に振れた」とか「景気が悪かった」、こういう言い訳をされるんですけど、景気と為替を言い訳にされたらもう何もビジネスが進まないので。しかし、販売に関しては全くお任せをしている状態で、何か問題を言われても、それに対して意見が当然出せませんから対策を打つことができない。一方で、売ることのすべてを理解をして、戦略を自分たちでつくって、その戦略の実行をパートナーにやらせるというケースは、問題が起きたときに対策が打てるんですよね。でも、パートナー頼りになってしまうと、対策が打てない。しかし、こういうことというのは、非常に多い。パートナー頼りの海外展開。パートナー様様。

3つ目が、駐在員頼りの海外展開。これはどういうことかと言うと、基本的には、駐在員を兵隊のように送り込んで、気合と根性で何とかしろと。走りながら考えろ。本社に戦略はない。おまえが走りながら考えるんだという、非常に俗人的な海外展開。これも、まだまだ大手でもこういう状態は非常に多くて、決してこれは中小企業の話をしているのではなくて、大手の製造業の話をしています。戦略よりも商品に寄ってしまっている。戦略の大部分が商品ありきになってしまっている。そして、戦略の大部分がパートナーの販売力とかパートナーの販売チャネルに偏ってしまっている。そして、戦略がないので駐在員の俗人的な能力に偏ってしまっている。従って、十年以上の駐在員が駐在しているところはまあまあビジネスが進むけども、そうでないところはずっと赤字が続いていると。

2枚目のスライドにちょっと切り替えますが、これはなんでこういうことになっているかと言うと、キーワードは依存なんですよね。結局、売ることを商品に依存する。商品力だけで依存する。でも、そうじゃないんだ。商品というProductだけではProductというのは売れなくて、PriceとPlaceとPromotionがターゲットに対して最適化された状態であたっていくから初めて売れるわけで、商品だけに依存しては駄目である。2番目の売ることをパートナーに依存してしまっている、自分たちは販売戦略はほとんど持たずに依存をする。なので、売れなかったときに対策が打てない。仮に売れたとしても力関係でパートナーが優位に立ってしまう。そして、パートナーを管理育成することができなくなってしまう。3つ目が、売ることを駐在員の力に依存する。第一陣を送り込んで、第一陣が駄目だったら第二陣、第三陣と。本社には戦略がない、戦略をつくるのは現地法人だと。走りながら考えろ。気合と根性だと。残念ながら、今の中国・アジアのマーケットは気合と根性ではどうにもならないですし、気合と根性に関して言えば、昔の日本の企業は、気合と根性が大変あったのかもしれませんが、今の時代は中国や韓国企業のほうが気合が入っていますので、なかなか気合と根性では売上は上がらない。基本的には、戦略以外の別の何かに依存するということがそもそも間違いで、戦略ありきなんですよね。戦略がないからProductなんだと、Productがいいから戦略がなくていいなんていうことは絶対にあり得ないし、自分たちはよく分からないから、何となくの戦略であとはパートナーに委ねようと、しっかりいいものさえつくっていればパートナーが売ってくれるんだ、パートナーの販路を活用すればいいんだと、これもこの時代のグローバル競争ではナンセンスな方法。そして、一番やってはいけないのが駐在員の俗人的な力に頼るということは避けていかなければならないと思います。この1つ、もしくはいずれかにはまっている企業というのは、やっぱりなかなかうまくいかない。おそらく8割9割の企業はこのいずれかの問題を今現状、海外の事業で抱えているのではないかと思います。
それでは、今日はこれぐらいにして、皆さん、また次回お会いいたしましょう。