第148回 先進グローバル消費財メーカーから学ぶ3つのKSF
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、先進グローバル消費財メーカーから学ぶ3つのKSF、キーサクセスファクター、主要成功要因についてお話をしたいと思います。今回から4回ぐらいに分けて、この先進グローバル消費財メーカーからキーサクセスファクターを学んでいこうと思うんですが。3つ存在します。先進グローバル消費財メーカーには3つの主要成功要因が大きく分けて存在して、それを1つ1つ今回からお話をしていく、そして、最後にまとめをやるので、全4回のシリーズでこの番組をお届けしたいと思います。今回、最初の1回目ですが、ここに出ている通り、先進グローバル消費財メーカーというのは、まずどういうところなのかというのをはっきりさせていきましょう。ここに書いてある通り、P&G、ネスレ、クラフト、コカ・コーラ、それから、ペプシコ、ジェネラル・ミルズ、ケロッグ、マース、ユニリーバ、ジョンソン&ジョンソン、こういったところを先進グローバル消費財メーカーというふうに言っています。その周りの図は、絵は、彼らが企業が保有しているブランドですね、そういったものが記載されています。この主要なトップ10の企業、これが現在、世界を牛耳る10大消費財メーカーなんですけど。これっていろんな切り口があって、売上で見たり、時価総額で見たり、ブランド力で見たり、シェアで見たり、いろんな切り口があるんですが、この10社だったらもう、ほぼほぼビッグ10、メジャー10と言って間違いないと思うので、今回はこの図を使っていきます。
こういう企業のアジア新興国市場における市場成功要因の1つ目なんですが、結論から言うと、早期進出がやっぱりできたということが1つの成功要因なんですよね。われわれ日本企業よりも早く出た。それによって先駆者メリットをすごく受けている。それが今のアジア新興国市場でも備わっていて。彼らは、1980年代後半から、もう中国やASEANの市場に出ているんですよね。まだ日本企業が生産拠点としてしか進出をしていなかった時代、1980年代後半なんて言ったら、中国なんていうのは、もう生産拠点であって、そこでものを売るなんていうのは、もう、まずない時代であり、2000年代に入ってからでも、債券回収の問題をどうするんだということを言っていましたから。先進グローバル消費財メーカーと比べると、やっぱり20年ぐらいは遅れてしまっている。この遅れてしまっているということ自体、事実はそうなんですけども、早く出たと。なんで彼らが早く出るかと言うと、当然そうですよね、消費財メーカーというのは、言ったら単価の安いものを、いかにたくさんの人に、いかに早い頻度で、いかに繰り返し、いかに永遠に買い続けてもらうかということが、ビジネスモデルの最大の肝になるわけですよね。そうすると、自国民だけで商売をしていたら、これ、洗剤の単価がいきなり1万円に上がるわけでもないし、チョコレート会社の単価が5,000円に上がるわけでもない。そう考えていくともう、数なんですよね。数と頻度と永遠度みたいなところが、非常に重要になってくる。そうすると、グローバル化せざるを得ない。世界の中間層をどれだけ獲れるかというのが彼らのグローバル競争の最大の肝だということを彼らは分かっているわけですよね。だから、早く行動する。そうしたときに、なぜ日本企業だって、それぐらいのことは経営企画室も社長室も分かっているのに動けないのかということの問題のほうが、僕は重要で。キーサクセスファクターとしては進出が早かったんですが、皆さんに今日お話したいのは、その早いという判断をした裏にはどんな理由があったのか、ここがすごく重要で。いろんな企業にインタビューをしていく中で、1つの解答を得たので、今日この番組でお話をしたいんですが。欧米の先進的なグローバル企業と呼ばれるところと日本企業の最大の違いは、海外進出をするとき、未開の国になぜあれだけ早く行けるのか。この目的が全然違うんですよね。日本企業って今、世界で何と言われているかと言われたら、アジア新興国市場でもNATOと言われているんですよね。「No Acction Talk only」。日本企業はもう口だけ、動かない。視察もそうですよね。シリコンバレーや深セン、テンセントなんかにも視察に行くわけですけど、日本企業というのは、とにかく来て話を聞きにくる。中国の工場もそう。ASEANの企業もそう。とにかくアポを取ってきて話を聞きにきて、「あー、そうですか。あーですか。こうですか」と話を聞いて、「すごいすごい」と言うんだけど、その後なかなかビジネスが詰まらない。決めれる人が来ないで、ひたすら情報を聞いてきて、日本に帰ったらもうそれっきりというようなことが非常に多くて、NATOだと。「No Action Talk Only」。そんなことを言われてしまっていて、一体何なんだということなんですけども、これ、なぜ欧米の先進的な企業が早く動けて、日本企業は早く動けないのかって、この裏を探っていくと、欧米の企業って、未開の地に早く行くということは当然リスクだし怖い。なぜこれが早く行けるのかと言うと、彼らは、成功するために出ているんじゃないんですよね。失敗をするために未開の地に誰よりも早く出ていて。なぜならば、誰よりも早くその地に出て、誰よりも早くその地で失敗をする、それが、誰よりも早くノウハウを得て、強いては最終的に誰よりも早く成功することにつながるんだというマインドセットがもう明確にあって、なので、先進グローバル消費財メーカーは未開の地にどんどん出ていく。
一方で、日本企業というのは、失敗が許されない。本社に戦略がないわりには、駐在員を送り込んで、おまえ、気合と根性で何とかしろよ。失敗するなよ。失敗したら日本に帰ってきたときに席ないぞと言って送り出されるわけですよね。その中で、なかなか失敗ができないので進出も遅れる。石橋を叩いて渡る。石橋を叩いて渡ること自体は私も好きだし悪くはない。ただ、そういうマインドセットを変えなければ、もうこのグローバル競争で欧米の先進企業とは戦っていけない。もう違うゲームをやっているんですよね。彼らは、早く失敗して、早く学んで、早くノウハウを付けて、早く勝つんだとやっているときに、どうやったら失敗しない方法があるんだろうかと探しているわけなんですけども。失敗しちゃったほうが失敗しない方法を探せるというのは早いに決まっているわけで、失敗しないようにどうしたらいいんだとやったって、これはあまり意味がなくて。ここはすごく大きなマインドセットで。一方で、欧米の企業は、別に神風特攻隊でワーッと行っているんじゃなくて、ちゃんと仮説を持って、その仮説の検証をして、はい、仮説がずれたと、また、仮説を変えて、また進んでいくという、この繰り返しを早くからやるからノウハウが身につくという、この全くの違いで。やっぱり、このマインドセットを変えないと、日本企業が究極にスピードを高めるということはできなくて、昔から言われているわけですよね、日本企業は決断が遅い。とにかく動きが遅いと。これって別にハンコ社会がじゃましているとか、どうのこうのというのではなくて、このマインドセット、失敗をよしとするマインドセットが、やっぱり先進的な企業には備わっていて、日本企業には備わっていないというのが1つの大きな要因だというふうに私は理解をしています。
それでは、第1回目、先進グローバル消費財企業から学ぶ3つのキーサクセスファクター第1回目はこれぐらいにして、次回、第2回目の要因、第2回目は2個目の要因についてお話をしたいと思います。それでは、また皆さん、次回お会いいたしましょう。