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第151回 先進グローバル消費財メーカーから学ぶ3つのKSF まとめ

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、シリーズでお届けしてきた先進的なグローバル消費財メーカー3つのキーサクセスファクターのまとめの回ということで、第4回目、まとめ総括をしていきたいと思います。

3回にわたって先進グローバル消費財メーカーの3つのキーサクセスファクターお話をしてまいりました。そのまとめの回としておさらいですが、この図の通り、これが世界を牛耳る10消費財メーカーで、P&Gから、ネスレ、クラフト、コカ・コーラ、ペプシコ、ジェネラル・ミルズ、ケロッグ、マース、ユニリーバ、ジョンソン&ジョンソンというふうに皆さんの聞いた企業があると思います。その周りには彼らが保有するブランドがあって、これは売上や時価総額やブランド力やシェアでいろんな定義で10大というのは決まるんですけど、ほぼほぼ世界に行くと、これらの10大、10社が主要のメーカーになってくると。こういう企業がなぜアジア新興国市場で特に成功しているのか。これって別に欧米の話だけじゃなくて、アジア新興国でも彼らは強いわけなので。なぜ彼らがじゃあ、成功しているのかという話をこの過去3回でお伝えしてきたと。

スライドを切り替えてもらって、今日はまとめなんですが、おさらいの話をしていくと、1つはやっぱり早期進出をしましたねということと、長期的視点でアジア新興国市場を見ていますよと。彼らは1980年代後半には出ているんですよね。日本の企業が、例えば、中国をマーケットとして捉えた、ASEANをマーケットとして本気になって捉えたと言ったら、2000年代前半とか後半とか言われていて。ただ、本当にエース級の人材を投下して予算をガッツリ付けているというのはここ最近の話なので、やっぱり20年ぐらい差がついているわけですよね。

一方で、アジア新興国市場って、投資をしてすぐにリターン、ROIがあるかと言うとそうではなくて、やっぱり一定期間、中長期で見ないと、リターンって返ってこないわけですよね。そういうことをしっかりと、やっぱりことアジア新興国市場となると、欧米の先進的な企業というのは非常に理解をしている。従来、株主資本主義の欧米の企業というのは、基本的には短期で物事を見がちだった。ただ、一方でアジア新興国市場においては、しっかりと長期で見るという考えが定着しているというのは非常に感じるところです。昨今、また会社は株主のものだけかという議論もアメリカでも非常に頻繁に行われているので、これからますます、短・中・長で戦略をしっかり見ていく企業が、先進的なグローバル消費財メーカーの中でもますます増えてくると思います。早かったですねと。

一方で、日本企業遅いですね。NATOですね。No Action Talk Onlyですねとアジアに言われていると、そんな話をした。重要なのは、なぜ彼らは早く物事を決められるのか、日本企業はNATOなのか、なぜ遅いのかというところのお話で、いろんなインタビューを複数重ねた私が見出した答えというのは、先進的なグローバル消費財メーカーは失敗をよしとする文化が非常に根付いている。要は、誰よりも早くその地に進出して、誰よりも早く失敗をして、誰よりも早く学ぶことが、強いてはその国でNo.1になる最も早い方法なんだということを企業として理解をしている、そんな文化がちゃんと定着していて。一方で、日本企業というのは、本社に戦略がないくせに、駐在員を送り込んで、おまえら失敗するなよと、気合と根性で何とかしろ、走りながら考えろでくるわけなので、当然、遅くなってしまうし、石橋も叩くことになると。このマインドセットを変えないと、日本企業の動きというのは早くならない。これからも永遠にNATOと呼ばれてしまう。なので、このマインドセットをやっぱり変えていくということが、日本企業には1つ重要なのかなというふうに思います。
2つ目の中間層ターゲティングに関しては、消費財メーカーのビジネスモデルの最大の肝は、数、頻度、継続性、この3つです。そうすると、いかにたくさんの人たちに、いかに早い頻度で、繰り返し、いかに永遠に商品を買ってもらえるかが、もうビジネスモデルとしては最大の肝なわけですよね。100円200円のものを売っていますから。そうすると、最もボリュームの多い2030年度ベースで30億人に膨らむ中間層を狙わないでどこを狙うんだというのが、FMCG、消費財メーカーのターゲットで。先進的なグローバル消費財メーカーはその中間層ターゲティングが絶対にブレない。ターゲットありきで戦略が決まる。

一方で、日本企業はものありきで戦略が決まってターゲットが決まるというね、この逆の構造がある。従って、やっぱり中間層の取り込みに弱い。この中間層の取り込みが弱いから、当然3つ目のチャネル戦略が弱い。要は、アジア新興国ってチャネルと言ったら、近代小売ではなくて伝統小売のチャネルなんですよね。TTのディストリビューションチャネルをどれだけつくれるかということがアジア新興国のチャネル構築で最も難しい部分で。そもそも中間層がターゲットになっていなかったら、商品も中間層ターゲットにならないし、チャネルも中間層ターゲットにならないので、結果、高いシェアは獲得できない。一方で、先進的なグローバル消費財メーカーはターゲットが中間層になっているので、商品も中間層向けになる、価格も中間層向けになる、Placeであるチャネルも中間層向けになって、Promotionも中間層向けになる。ターゲットに対して4Pが組まれていく。一方で、日本の場合は、日本で売れている商品を少しは安くするけどねと。でも、慣れ親しんだ近代小売で売って、Promotion費用は売れるまであまりかけたくないなとなるわけなので、じゃあ、ターゲットを富裕層にしましょうかと。でも、アジア新興国に出て富裕層をターゲットにするってナンセンスだから、じゃあ、上位中間層というところをつくり出しちゃって、ここを狙いませんかと。ただ、実際に上位中間層なんてどうやってターゲットから抽出して本当にそこだけをピンポイントで狙えるんですか。そんな高度なことをするんだったら、中間層を狙ったほうが絶対に楽なので。やっぱり、消費財メーカーは中間層を狙わないと駄目ですよと。

これが化粧品メーカーだと、「1瓶3,000円、4,000円する化粧品をつくっています」とか、「私たちはモンブランです。高いペンをつくっているんです」とか、「私たちはゴディバです。高いチョコレートを売っているんです」であれば、アジア新興国でも富裕層にターゲットが設定されても全然問題ない。問題は数が勝負なFMCG、消費財メーカーが中間層をど真ん中で狙わないで、ターゲットブレするということが問題で。そこがブレるから4P戦略がブレてくる。チャネルがブレてくる。これがないのが欧米の先進的なグローバル消費財メーカーですよというお話をまとめとしていたしました。

ということで以上になりますが、このシリーズ、ちゃんと理解していただけましたでしょうか。お楽しみいただけましたでしょうか。また、この番組でも、非常にこれ、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーのキーサクセスファクターというのは重要なので、また番組を通じてご紹介していきたいとい思います。それでは、皆さん、また次回お会いいたしましょう。