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第212回 【Q&A】ASEANで事業をするには財閥と組むのが良いのか?

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

今日もPodcastにいただいた質問でございます。Podcastに関しましては、概要欄にリンクを貼っておりますので、ぜひ皆さん聞いてください。

Podcastなんですけど、ちょっと本題の質問に入る前にくだらない内容なんですけども。最近、「森辺さん、なんでそんなに黒いんですか?」ということをよく質問されるんですが、もともとちょっと黒めです。最近、毎週、子どもをプールに連れていっておりまして、それでこんなに黒くなっております。お見苦しい姿をさらして、申し訳ございません。(笑)すぐ焼けてしまうタイプでございまして。申し訳ございません。あと、何回か前の番組までは「髪がなんでそんなにぼさぼさなんですか?」ということで言われていたんですけど、別にロン毛にしようとか思っていなくて、コロナで、美容室に行くのどうかなというふうに思っておりまして。また、対面でお客さまとお会いするということが少なくなって、ビデオでお会いをするというケースですし、対面で月に何人かにはお会いするんですけど、マスクしていますから、髪の毛が長くてもあまり目立たないかなということで、何カ月か美容室に行ってなかったら、なんかスーパーサイア人みたいな頭になってしまいまして、これもまたお見苦しい姿をお見せしまして、大変申し訳ございませんでした。ということで、そんな2つの質問が結構多かったので、まずそのお話をさせていただきましたが。

今日のメインの質問は…。ちょっと読みますね。「ASEANで事業をする際には、財閥と組むのがよいでしょうか?」ということで食品さんですね。(菓子メーカー)というふうに書いております。「中国やASEANなど複数カ国に進出をしております」。大手なので、いろんな国に進出していますよと。「ASEANで本気で事業をするには、やはり地場、財閥系と組むことがよいのでしょうか?」ということで、「森辺さんのお考えをお聞かせください」ということなんですが。これ、一概に「YES」とも「NO」ともなかなか言いにくい問題でございまして。なんでかということをちょっと説明していきたいんですけど、財閥って、ASEANというふうに言っていますからね、ASEANだと、例えば、財閥というと、インドネシア、それから、タイ、フィリピン、このあたりは財閥系が非常に強い地域であるということは、もう周知の事実かと思いますが。ベトナムとかだと、最近の新興財閥みたいなのも出てきていますけども、基本的には国営、もともと国営だったというのがベトナムだし、シンガポールはだいぶもうグローバル企業になってきていますし、マレーシアもまあまあ、そんなシンガポールに近しい国にだんだんなってきていますから、ASEANで財閥と言うと、やっぱりこの3カ国が非常に強いのかなと。結局、中国とかもそうだったんですけど、中国は国営なんですけど、財閥という意味じゃなくて、もともと中国進出というのが一時期ブームとしてあったと思うんですけど、そのときに地場の企業と組む、中国だったら国営企業と組む、ASEANだったら財閥と組むという、この流れって、外資規制があったから致し方なく組んでいたという側面もあるんですよね。つまり、どういうことかと言うと、外資系企業が小売業をやろうとしたときとか、何とか業をやろうとしたときに、地場の企業と合弁会社をつくらないと、その業態での参入は認めませんよという、そういう法律があったわけですよね。これ、当然なんですけども、地場の企業よりも強い外国の企業が、何の規制もなしに自分たちの国に入ってきて自由にビジネスをさせると、当然、地場の産業、地場の企業のほうが弱いですから、地場の産業が育たずに衰退していって外資だらけになってしまうということを、当然、国としては防ぎたいので、外資規制というものをどこの国も設けるわけですよね。で、ある程度、地場の企業が競争力がついてきたら、自由公正に戦わすと。そして、自由に戦うことで、どんどんよくなっていく、強くなっていくということなんですけど。こんなに差があったら、これ、自由に戦わせたら、もうこれ、勝ち負け、やらなくても分かっていますから、基本的には外資規制で守ってきたと。それが徐々に徐々に撤廃されているというのが現代であって。言ったら、特種な業態はいまだに規制があるし、新興国の中でもまだまだ、いわゆる後進の強い新興国に関しては、まだそういった規制が強くあるんですが。今言っているようなASEAN6とかは徐々に撤廃されてきて、中国もだいぶ撤廃されてきているので、そういう意味では、合弁の流れというのは基本的には今トレンドじゃない、というのは昨今の海外進出の流れです。もう、別に外資規制ないんだから、自由競争できるんだから自分たちでやりましょうよという傾向ではありますよと。

一方で、財閥と組むって、やっぱり目的が何なのかということは非常に重要で。財閥と組めば、強いからなんかうまくいくんじゃないかとかって。もちろん、財閥と組むって、小さい企業と組めませんから、大手と大手になるわけですよね。この質問をしている食品メーカーさんは大手なわけですよ。ただ、目的がやっぱり不明確だと、財閥と組んでもなかなか成功しないということにも成り得る。多くの企業のIRの過去の履歴を見てもらうと、ASEAN、インドネシアで何とか財閥と合弁会社設立、その何年か後に合弁解消とか。タイで何とか財閥で合弁設立と、フィリピンで何とか財閥と合弁設立ということでやるんですけども、結局、合弁解消しているケースというのは結構多くて。多くの日本の製造業の場合、財閥系と組んだり、同業種系と組んだりするんですけど、それ何をしたいかと言うと、外資規制はもう撤廃されているので、外資規制というよりも販路が欲しいんですよね。結局、財閥って、自分たちの財閥の中に小売業を持っていたり、製造業を持っていたりするんですよ。だから、ある意味、コンフリクトするわけですよね。同じ製造業を持っているので。ただ、彼らは、自分たちが製造業を持っているので、その地に強固な販路を持っていると。自分たちの商品を流通させている、その販路に日本のメーカーの商品も流通させたいので、合弁をつくって、一緒に工場経営もやりましょうと。そして、そこも一緒のジョイント・ベンチャーでつくった製品をその合弁相手の企業の流通に乗せて、チャネルに乗せて販売をしていきたいと、そういう想定で組んでいくんですが。基本的には、日本企業と財閥のこのマッチング、役割分担が…。うまくいっている企業はあります。確かに、うまくいっている企業はうまくいっているで、うまくいっているんですが。例えば、インドネシアのマンダムとか、ヤクルトなんかもうまくいっている国はうまくいっているし。うまくいっているところはうまくいっていると。ただ、そうじゃない企業もあるんですけど、ちょっと名前をまたここで言うと問題なので、皆さん、検索して調べてください。いろいろ出てくると思うので、マレーシアの失敗事例、フィリピンの失敗事例、インドネシアの失敗事例、いろいろ出てくると思うので、それはネットで検索していただくにしろ。やっぱり、日本企業側の狙いとしては、自分たちはつくる人ですと。合弁先の企業、財閥さん、もしくは同業種のメーカーさん、あなたたちは地場企業で売ることにも長けているし、販路を持っているので、「売るのはあなたたちの仕事ですね」と言って、売ることの大半を相手にこう、もう丸投げしちゃって合弁事業が始まるんですよね。その過程の中、相手先の企業にしてみたら、合弁事業でつくっている商品というのは、これ50/50(フィフティ・フィフティ)ですよね。言ったら、投資も50%(フィフティ)だけど、利益も50%(フィフティ)なわけですよ。要は、半分の投資で済むけども、分け前も半分になると。この商品を自分たちの販路で売るよりも、圧倒的に自分たちが100%でつくっている商品を売ったほうがいいわけですよ。

一方で、日本企業と組むメリットというのは、日本企業の高度な技術を、一緒に合弁、ジョイント・ベンチャーで工場をつくれば、いわゆる吸収できますよね。製品を製造する技術、そういったものを吸収したいというのと、あと、日本の大手のメーカーと合弁事業をやれば、これは決してマイナスレピュテーションにはならないわけですよ。むしろプラスレピュテーションになる。そして、どうせ日本企業は、アジア新興国のマーケットに合っていないハイスペックのtoo muchな商品をつくろうとする。それが売れないということも彼らは分かっていて。けど、それを一緒にジョイント・ベンチャーでつくれば、技術だけは吸い取れるわけですよね。5年後10年後にきっとそのハイスペックな商品というのは、市場が成長していくと、その市場でも売れるようになるので、そのときに単独で売ってしまえ、最悪は、と思っているケースだってあるわけで。

もう1つあるのは、日本のメーカーと組んで、何と言ったらいいのかな、損はないわけですよ。最終的に仲間割れ、仲間割れじゃないけど、「うまくいかないので合弁解消しましょう」と言っても、結局、工場を日本に持って帰れないわけですよね。そうすると、じゃあ、50億の工場を25億ずつ出してつくって始めるんだけども、この25億25億の50億の工場を、やめるからと言って、25億分日本に持って帰れない。そうすると、最後どうなるかと言うと、この工場をただ同然で相手先、相手企業に売却をして帰っていくのか、もしくは日本企業側に高値で売るのか。そして、彼らはその地で単独で今度は独資で工場経営から販路、販売までを自分たちでやっていくという。そのときに25億出したんだけども、「50億で買ってください」「70億で買ってください」と、そういうふうになるわけですよね。結局、甘ちゃんな日本企業と、仮にそれをやっても、マイナスは絶対ないわけですよ。財閥の企業、もしくは同業種、合弁先、地場のジョイント・ベンチャー合弁先には。なので、向こうにしてみたら得だらけということで、そういうふうなことになるんですが。

この質問者の答えを明確に答えるとすると、組むのがよいのかって、「必ずしもそうじゃない」というのが、たぶん答えで。目的に応じて、どうしたいのかということがやっぱり重要で。自分たちが何をしたいのかと。そのために財閥が必要なのかどうか、財閥の、具体的に、財閥と言っても、これコングロマリットですから、どの子会社のどういう機能が必要なのか。それを自分たちでやるにはどれぐらいの労力が掛かる、もしくはお金が掛かる。それを比べたときに、本当に財閥が必要なのかということを考えないと、今、時代のトレンドとしては、財閥と組んで云々という話では、たぶんなかなか製造業はないのかなと。もっと大きな壮大なことを一緒にやっていこうと言うのであれば、財閥と何か一緒にやっていくというのはありかもしれませんが、製造業が財閥と組んで云々という時代では、ちょっとないんじゃないかなという気がします。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。