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第214回 【Q&A】海外市場 – 事業規模に合わせてディストリビューターを代えていくのはありか?

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も皆さんからいただいた質問にお答えをしていきたいと思います。早速でございますが、今日の質問はPodcastにいただいた質問で…。弊社の運営しているPodcastの詳細に関しては概要欄にリンクを載せておりますので、ぜひそちらからご覧ください。

今日の質問。消費財メーカー、食品メーカーさんからの質問です。ちょっと読みます。「自社の成長レベルに合わせてディストリビューターを替えていくのはどうでしょうか?」という質問で、「自分たちの事業が小さいうちはあまり大きなディストリビューターと組もうとしても相手にされないと思うので、自分たちの事業のステージに合わせてディストリビューターを替えていくのはどうでしょうか?森辺さんのご意見をお聞かせください」ということで、なるほど。

今日のこの質問の意図は、要は、海外市場に参入するときに、当然そこでディストリビューターを決めて販売店契約をしていくわけなんですが。その際に自分たちが新規参入するということは、当然まだ事業の規模としては小さいと。そうすると、あまり大きいところと組んでしまうと、あまり自分たちの商品を重要視されない…、重要度が低くなってしまって、あまりしっかり取り扱ってもらえないんじゃないかということを言っているわけですよね。なので、言ったら事業規模に応じて、まず参入したときは小さいところと組んで、そこそこ育ったら中ぐらい、そしてある程度いったら大手、みたいな感じでヤドカリのようにディストリビューターを替えていったらどうなんだということをご質問されていて。結論から言うと、なくはないと思います。「あり」だと思います。ただ、現実的には、そんなにころころ、ころころ、ディストリビューターを替えていると、業界狭いですから、当然噂になって、あそこは自分たちの事業がある程度のところまで成長すると、ディストリビューターを切り捨てるというような噂が立ってしまうと、もう誰も組んでくれないでしょうし。組むためには非常に厳しい契約条件を向こうから提示されたりすることもあると思うので、現実的にはそんなに何回もぽんぽん、ぽんぽんというわけにはいかないと思います。

ただ、おっしゃっていることはそのとおりで。結局、自分たちにとっていいディストリビューターって必ずしも大手じゃないんですよね。これって、大手は必ず主力の商品、ブランドをいくつも抱えていて、結局、トップのブランドマネージャーみたいな人たちは、どんなに自分たちが大手でも、やっぱりもうすでに自分たちの会社の2割を売り上げているブランドとか、もう10年も20年も前から一緒にやっていてかなりのウエイトを占めているブランドをやっぱり大切にするわけですよね。エース級の人材はそういうブランドの担当グループ、チームに投入されていると。そうすると、やっぱり新規のブランドをこれから取り扱っていくというのは、事業規模としてもこれからだし、あまりよくない人材をあてがう、とまでは言いませんけども、今現役の超エースが、例えば、ネスレを取り扱っていて、ネスレをやっている責任者がこっちに回ってくるということはまずなくて、期待の星みたいな人が回ってくるというケースはあるでしょうけども、なかなか、やっぱり優先度としては、当たり前なんですけども、低くなるというのは1つなわけですよね。一方で、小さいところに行けば、あんまりそういうブランドがないわけだから重要視してもらえるんじゃないかということなんですが。でも、これは一長一短で。小さいところに行ったら、逆に今度、配荷のパワーがないとか、セールスのパワーがないとか、小売への提案力がないとか、交渉力がないとかっていうことも十分考えられるので、なかなか見極めにはなってくると思います。
ただ、自分たちが配荷したい小売というのがまず絶対あって、自分たちはセブンイレブンとTescoとBig Cと何とかとって入れたい小売があって、そこに配荷がしっかりできる、そこに提案営業ができるディストリビューターであるのであれば、大手か大手じゃないかみたいなところは、やっぱり二の次に考えてもいいのかなという気はします。というのは、結局、本気でスキルセットを自分たちの入れたい小売に配荷できるか否かというのは、これはスキルセットなんですが、じゃあ、自分たちの商品をどれぐらいの熱量で取り扱ってくれて、シェアをこの国で伸ばしていこうと思ってくれているかというのは「マインドセット」と私は呼んでいるんですけど、このマインドセットが高くないと、いくらスキルセットが高くても、やっぱりシェアって伸びていかないので。最低限のスキルセットを持っているのであれば、私は必ずしも大手、一番大きい部類のディストリビューターと組む必要は、僕はないと思っています。むしろ、最低限のスキルセットをクリアするのであれば、やっぱり重要視すべきはマインドセットだと思うので、どれだけ自分たちの商品を、どれだけの熱量で抱えてくれて、どdれだけの熱量で小売提案をしてくれているか、どれだけの熱量でシェアを上げようとしてくれているかというところをやっぱり重要視したいので。そういう意味では、小さいところというか、準大手とか中堅クラスのディストリビューターとまず組んで、彼らと一緒に成長していく。彼らを成長させるというのは1つやり方としてはありかなというふうに思います。

ちょっとこの図を見ていただくと分かると思うんですけど、現実的にこれから新規でASEANの市場、中国の市場、インドの市場、どこでもいいですけど、参入をしていくときに、日本企業ってこれパイオニアかと言うとそうじゃなくて、結局、先駆者じゃなくてだいぶ遅れて参入することになるわけですよね。消費財メーカー、これから行くって。もう欧米系はだいぶ出揃っていますし、中国やASEANを中心としたアジア系もだいぶ力をつけている中、日系が行くと、遅れて出ていきますと。そうすると、いいディストリビューターって、必ず欧米の先進的なグローバル企業がもう使っているんですよ。食品であれば、ペプシコが使っている、コカ・コーラが使っている、ネスレが使っている、何とかが使っているって必ず、いわゆる自分たちの競合がそのディストリビューターを押さえていると。この図は、皆さんから見て右に行けば行くほど、いわゆる自分たちの取り扱っている商品に近いということですよね。つまり、皆さんから向かって右は、食品だったら食品の取り扱いが多いディストリビューター、左が非食品、いわゆる日用品系ですよね、ノンフード系。ディストリビューターって、必ず食品系に強いか、ノンフードに強いかフードに強いかって結構分かれていて。両方できるというところも増えてきていますけども、やっぱりどっちかに寄るんですよね。この縦軸というのが、上に行けば規模が大きく、下に行けば規模が小さいと。そうすると、右上と言うのは、規模が大きくて、もうバッチリ食品なので、自分たちのいわゆる業態に合ったディストリビューター。ここと組めるのが一番いいんですけども、こんなところは当然ながら別のメーカーがもうお付き合いしていて、組めない可能性というのが一番高いわけですよね。今度、左上、これは確かに規模はデカいんだけども、ノンフードなわけですよ。食品を取り扱ったことがないと。こういう企業とやるというのは、なかなかちょっと厳しい。同じ小売でも、フードのレーンとノンフードのレーン、フードのバイヤーとノンフードのバイヤーは全然違うし、提案の仕方も全く変わってくるので、相当な要因がない限り、社長が「肝入りで食品カテゴリーを増やします」と言ってるとか、思いきり左側じゃなくても、ちょっと中央部分の右寄りで、結構半分ぐらい食品を扱っていて食品も強いんだ、みたいなところだったらいいですけども、そうじゃないとなかなか厳しいと。左下は小さくて遠いので全くあり得ないと。そうすると、右下から中央上ぐらいのところがやっぱり現実的には狙っていくべきところで、いわゆるこれから一緒に成長できる、カテゴリーは一緒ですと、食品ですと。ただ、規模がまだこれ、一番下のは小さ過ぎて数億円のディストリビューターって、これはキャッシュ回らないですし、ほとんど小売に対する交渉力もないでしょうからこういうところはちょっと難しいけども。中堅クラスですね、真ん中ぐらいのところのディストリビューターと組んで、そこと一緒に上に上に成長していくというのは、これは戦略としてありなので。質問の答えを言うと、「あり」だと思います。ただ、現実的にはそんなにころころヤドカリのようには替えられませんよ、というのが回答でございます。

それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。