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第215回 中小企業の海外展開 – 失敗する企業の法則

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も皆さんからの質問にお答えをしていきたいと思います。それでは早速今日の質問を読ませていただきます。Podcastにいただいた質問です。Podcastの詳細についてはこのYouTubeの概要欄に載せておりますので、ぜひ皆さん1度聞いてみてください。

Podcastの質問、今回は中小企業さんからの質問です。ちょっと質問を読ませていただきますね。「いつも大企業の話が中心なので、中小企業に関する質問をしてよいのか悩みましたが、もし分かれば教えてください。中小企業を海外展開する際に陥りやすい過ち、また気を付けなければいけないポイントなど教えてください。まさに今の弊社が陥っている気がしてなりません…」ということなんですが、これは製造業としか書いてないんですけど、中小企業の場合、ほとんど製造業というとB2CよりもB2Bのほうが圧倒的に多いので、部品とかパーツメーカーさんが非常に多いので、おそらくB2Bの製造業なのかなというふうに思います。

中小企業の海外展開において気を付けるポイントということで、非常にいい質問なので、ちょっとたぶんね、今回1回でこの中小企業の海外展開についてはなかなか語り尽くせないところがあると思うので、そうだな、3回ぐらいに分けてお話をしていきたいなというふうに思います。今回が陥りやすい間違いということなので、失敗する中小企業の法則的なお話をさせていただいて、次回以降、中小企業が成功するための、例えば、参入戦略のつくり方とか、少し戦略チックな話をして、3回目に僕が提唱する中小企業の海外展開のいわゆる方法みたいなもの、成功確率を格段におそらく上げることができるので、その方法論を少し解説をしていって、全部で3回ぐらいでお話をしていこうかなというふうに思います。

今回は、じゃあ、気を付けなきゃいけないポイント、陥りやすいポイントということで、失敗する企業の法則の話をしたいんですけども。まず最初に、中小企業の定義をちょっと整理したいんですが、世の中で中小企業といったときに、僕の思う中小企業と皆さんの思う中小企業って、おそらく規模が違っていて、Aさん、Bさん、Cさんの思う中小企業ってそれぞれ規模が違っていると思うので、そこの定義をまず揃えたいなというふうに思います。僕の中ではというか、弊社では、中小企業というのは10億円以上、もしくは数十億円から100億円ぐらいまでを中小企業というふうに定義しています。おそらく日本ではこのレイヤーが非常に多いんだと思うんですが。逆にもっと多いというのはこの10億以下のところ、数億円の会社ですよね。これは言ったら零細企業というふうに定義をしています。10億円以下は零細企業、10億円以上から100億円までが中小企業、そして数百億円から1,000億未満ぐらいの会社を中堅企業というふうに呼んでいて。厳密には、1,000億円だったらどっちなの?というところもあると思うんですけど、これ業界によっても1,000億だったら超大企業になっちゃう企業もあれば、いやいや全然まだまだ中堅ですというところもあるので、本当に業界によってもいろいろ異なるんだけども、1,000億を超えてくるような会社、数千億ぐらいからやっぱり大企業というふうに定義をしていて、1兆円近い会社、もしくは1兆円を超えてくるような会社を超大企業というふうにうちでは定義をしていて、その定義に合わせて中小企業ということなので、10億円から100億円ぐらいの会社。でね、厳密に、「8億9億だったらどうなの?」ということもあるので、「じゃあ、8億9億は、森辺さんの会社だと零細かい?」って話になるんだけども、一般的には零細なんだけども、業界によっては8億9億でも中小企業のカテゴリーに含めることもあるので、その辺はだいたいで構わないと思います。厳密に何かあれをするわけではないので、そういう定義で進めさせていただきたいと思います。

この中小企業が陥りやすい、失敗する法則なんですけども、やっぱり1つは中小企業だから仕方ないっていう空気感がもう充満している会社っていうのは、やっぱりご相談に年間来られるんですよね。「国内が厳しい。海外やりたい。でも何からやったらいいか分からない。経営資源もない。お金もない。人もない。ものもない。アイデアもない。そんな中で中小企業だからしょうがない。助けてください」、こういうスタンスで来られる。誰かがただで誰かを助けてくれるっていう、こういう期待をされて来るわけなんですけども、結局、こういう会社って、もう救いきれないんですよね。われわれもボランティア団体じゃないので、ただで支援するわけにもいかないですし、売れたら報酬を払いますとかっていう会社も、社長さんもいらっしゃるんだけども、いや、売れたら報酬を払うって、中小企業の商品なんてって言ったら大変失礼だけども、結局、売れるか売れないかなんていうのは、どれだけマーケティングに力を入れて、どれだけ自分たちが熱量を持ってその事業に取り組むかで結果が変わってくるわけですよね。その製造業の張本人が、いわゆる本気にならずに、それを任されて、「売れたら成果報酬をあげます」って言われても、これはなかなか支援する人っていないと思うんですよね。であれば、「自分で製造業になりますよ」っていう話だし。今、別に工場を持ってるだけが製造業になれる条件じゃなくて、ファブレスで十分製造業になれるわけなので、そこまでのリスクを負うんだったら製造業になるという考え方もありますからね。なので、そういう会社っていうのは、もう100%無理でしたね。過去18年間いろいろ見てきましたけども、そういう会社、当然お断りをしてきていますけども、15年ぐらい前にそういう会社、ご相談に来られて、今どうかなって見てみると、やっぱりもうなくなっているとか、あとはいまだに海外に出れてなくて、「海外、海外」って同じようなことを言ってたり、そういう傾向が多いので、まずそういう会社が1つ失敗をする傾向が非常に強いというのは1つですね。

それから、ものがよければ売れるというような概念がやっぱり非常に強い会社、自分たちの商品は非常に高品質でものには自信があるんですと。人もいないし、営業も強くないし、海外のこともよく分からないし、グローバル人材もいないんだけども、自分たちの商品は本当に品質がいいんですと、こういうところで使われています、ああいうところで使われますって、言ったら、もの一辺倒で来られる会社、これはなかなかやっぱり難しくて。日本だと、ずっと下請けをやっていたから、上から言われていいものつくれば上が買うという、いわゆるピラミッド構造になっているわけで、なっている業界にずっと従事しているので、上から指示されたものを完璧につくり上げれば、上が必ず一定量買ってくれるというね、こういう商売をしていた会社さん。海外展開ももうしているんだけども、基本的には、タイに出てもタイの日系企業に販売をしている。要は、日本で納品している会社がタイに進出をして、タイに自分たちも進出をして、その会社にタイで納品しているという、海外にいながらドメスティックビジネスをやっているみたいな、こういう会社も結構いて、こういうのは、やっぱりものじゃないですからね、海外でものを売るって、日本でもそうなんですけど、もの一辺倒の会社というのはやっぱり難しいというのは1つですよね。
あと1つは、海外のパートナーに頼りっきりになるような会社はもう超危険。これはどういうことかと言うと、自分たちは、いわゆるその国の市場性も、競争環境も市場環境もよく分からないので、「自分たちはひたすらいいものをつくります。なので、売るのはパートナーさん、あなたにお任せします」というような会社。中小企業は非常に多い、こういう会社が。だから、マーケティング活動に一切関わらない。「自分たちはいいものをつくって納めます。さあ、売ってください」と。だから、その商品がどういう用途で、どういう会社に使われていて、どういう課題がそこにあるのか、もしくは、どういう可能性がそこにあるのか、ということの細かいことがよく分かっていないという中小企業さんは非常にいて、こういう会社もやっぱりきついですよね。一昔前だと、中国なんかだと、いわゆるマーケティングサイド、販売サイドのことを全く分からないので、いわゆるパートナーが製造業化して、いつしか自分たちの技術が盗まれて、パートナーが製造業になっていたみたいなね。今度、パートナーが自分たちでつくって、自分たちで売るみたいな、そういう時代が非常にありましたけども、びっくりするような裏切り方をされたというような。もう、ここ最近は聞きませんけども、10年ぐらい前までは非常に多かったと。結局、自分たちが売ることにまでしっかり介在しないと、海外で継続的に売上を伸ばしていくなんていうのは難しいので、そういう会社も非常に危険かなというのは、1つですね。

あとね、パートナーもそうなんだけど、頼りきり、海外に、国境を越えて、海外でいろんな人に会うわけなんだけども、日本語のできる日本通の外国人に会うと、もう運命の出会いなんじゃないかと思って、グーッとのめり込んでしまう社長さんがいらっしゃるんだけども。これもだいぶ危険です。性善説で物事をすべて見れるんだったらいいんですけど、やっぱりしたたかだし、華僑の人たちが多いわけで非常にしたたか。もちろん、いい人もたくさんいるし、いい王さん、いい陳さん、いい元さんって、いろいろいるけども、悪い陳さんだって、悪い王さんだっているわけだし、そこはやっぱり、日本語ができて日本通だから、もうグーッとのめり込んで、「もうこの人しかいない」っていうのは根拠がないんですよね。ただ、日本語ができて、日本通だっていうだけで、「なぜその人しかいないの?」「なぜその人がベストなの?」って、それ、相対的にほかの選択肢と比べて、その王さんだ、陳さんだって言っているんだったらいいんですけど、自分の手の届く範囲のコネクションだけで、いわゆる陳さん、王さん、自分たちが手の届く陳さん、王さんだけで、「この陳さんがいい」「この王さんがいい」って言っているわけで、もっと別の王さん、もっと別の陳さんがいるかもしれないわけなので、やっぱり、のめり込んでうわーっといってしまうのは危険ですよ、というのが1つですよね。

あと、デカい話をする人、これはもう相当気を付けないといけないので。日本人で海外在住で最近そういう人たちも増えてきているようなので、それもちょっと気を付けたほうがいいと思いますけど。言ったら、日本の常識で考えたときに、ちょっとそれあり得ないでしょ、みたいな話をする人は、もう言ったら離れたほうがいいですよね。僕は一貫して、この18年間そういう人とは付き合ってこなかったですけども、いわゆるロジカルじゃない話、例えば、私の兄は共産党員で、この地元政府でこういうコネクションがあって、こういうことができる、ああいうことができるとか、武装警察の知り合いがいて、どうだ、ああだとか、政治家がどうだ、ああだとかっていう、そういう、いわゆるデカい話。でね、これ、「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがあると思うんですけど、僕、このことわざは非常にグローバルだなって、自分の14~15ぐらいからASEANに移り住んで今に至っていますけども、この30年間のこのアジアの生活の中で感じているのは、やっぱりこれはグローバルに言えることで、能ある鷹はね、絶対爪を隠すんですよ。これは日本だけじゃなくて。本当にデカい話をする必要がないのでね、大物は。だから、やっぱりデカい話、爪を隠さない鷹はね、鷹じゃないんですよ。これはとんびなんですよね。このことはやっぱりしっかり理解をして、僕はもう、デカい話をする人、威張り散らしているような人、そういう人はあんまりくっついていかないようにしてきたっていうのが今までで、それで間違ってきていないので、そこは気を付けたほうがいいですよ、というのが1つですね。

あとね、コネには一切期待しないというのも1つで。コネというのは、海外に行くと、何かすごく財閥系のトップと知り合って、政府の大臣を紹介してくれて、自分たちが何か優遇されるんじゃないかみたいな、そんなこと日本であり得ないわけですよね。そんなこと絶対あり得ない。特に中小企業の場合、「なんで中小企業にそんなことをわざわざしないといけない。誰が得するんですか」って考えたらいいわけですよ。コネって、言ったらこういうレベルにいる人と、こういうレベルにいる人、コネを期待する人っていうのはこっち側の人じゃなくて、こっち側の人なんですよね。こっち側の人がこのコネを期待するって、これ、これだけ差があったら、この人は絶対この人に何か都合のいいことをただでするなんていうことは絶対あり得ないんですよね。コネを利用するっていうのは、やっぱりここまで上がっていって、初めてこのコネクションっていうのは役に立つわけなので。自分たちが、「パナソニックだ」「ソニーだ」「何とかだ」と言えば、じゃあ、地元の政府と一緒になって何かをしようとか、そういうコネクションが生きてくるんだけども、自分たちがまだ中小企業なのに、壮大なコネを使って一気に何かができるなんていうことは、もう海外では絶対あり得ないので、そういうコネは一切期待をしないということと。
あとね、中小企業さん、よく必殺技みたいなことを求める中小企業の社長さんがいるんですけど、海外事業に必殺技なんかないんですよ。もう、やるべきことを粛々とやるということだけで、この第2回、第3回の中小企業の話でお話しますけども、中小企業と大企業の違いというのは、求めているものが違うんです。求めている売上の規模が違うんです。大企業は100億、500億、1,000億を求めているわけですよね。そうすると、やるべきことというのはもう、ものすごく膨大になるし、細かくなるし、深くなる。戦略が、100億求める戦略と、中小企業まず数億と。最終的には10億20億やれればいいという、そういうのが中小企業ですよね、海外で。そうすると、数億やるのと数百億やるのじゃ、もう戦略が全然違うわけですよ。なので、この違う戦略を具体的にどう落とし込めばいいかっていうことが非常に重要で。必殺技なんてないわけなんですよね。「中小企業は数億円をやるための戦略を粛々とやるということが重要で、必殺技はないですよ」ということを中小企業の社長さんにもお話をするんですが、必殺技はないと。信じられるのは、自身の知識と経験から生み出される戦略だけですと。中小企業だから戦略を持たなくていい、なんていうのは全くの嘘だし、「経営資源がないから仕方がない」「じゃあ、出なさんな」という話になってしまうので、やっぱりそこのところをまず正していくということが非常に重要だと思います。

ちょっと長くなっちゃったので今日はこれぐらいにしますが、次回、中小企業の参入戦略のつくり方というお話をしっかりしていきたいと思いますので、今日少しちょっと失敗事例、こういう企業は失敗するということで失敗の法則を話しましたけど、次回は参入戦略のつくり方の話をしたいと思います。それでは今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。