第227回 ASEANは市場を3つに分けて考える
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、ASEAN市場を3つに分けて考えるということについてお話をしていきたいと思います。ASEAN市場というのは、それぞれに市場の特性がもちろん違っていて難易度が違うんですよね。日本の企業が展開をしようとする際に、ASEAN市場って大きく分けて3つの難易度があって、その難易度によって国をしっかり分けておかないと、自分たちの事業に合っていない市場にいきなり出てしまったり、最も難易度の高い市場にいきなり出て失敗をするということになってしまう。なので、ASEAN市場をターゲットにするというときは、必ず3つの市場に分けてASEANを考えるということは大変重要になってきますので、今日はこのASEANを3つの市場に分けて考えるということについて一緒に学んでいきましょう。
まず、ASEAN市場なんですが、このASEAN市場というのは全部で10カ国存在します。シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア、そしてブルネイということで全部で10個存在するんですが。このブルネイという国は非常に特殊な国なので一旦置いておいたとして、残りの9カ国を3つの市場に分けましょうということを私は言っていて。
まず、先進ASEANなんですが。ASEANと言っても、これは必ずしもすべての国が新興国かと言うとそうではなくて、その昔、私がシンガポールに住んでいた1980年代とか1990年代というのは、確かにほとんどの、シンガポール以外のASEANというのは、言ったら新興国だったんですよね。発展途上国であったと。でも、今は全くもって違っていて、ASEANの中でももう首都は完全なる先進国ですと。東京やニューヨーク、パリと変わりませんみたいな。変わりませんと言ったらちょっと大げさかもしれないけど、首都は新興国なんだけども、それ以外のところがまだまだ発展途上なので、総じてまだ新興国だというふうな捉え方もできるので、昔のかつての新興国と、今のASEANの言っている新興国とか発展途上国というのは意味合いがだいぶ変わってきているので、そこは気を付けるべきところなんですが。
今言ったASEAN3つの中で最初の1つのグループはSMTというグループで、これは先進ASEANですよね。ASEANの中でも比較的先進的な国、1つがSはシンガポール、Mはマレーシア、TがタイランドでSMTという。ここは、やっぱり先進的なASEANなので、戦略を考えるときにあまり新興国の戦略を持ち込んでもうまくいかない。シンガポールというのはもう完全なる先進国家ですし、マレーシア、これは確かにまだまだこれからもっともっと都市化率が上がっていくんでしょうけども、クアラルンプールとかジョホールなんていうのはもう完全なる近代都市なので、そこの戦略と地方の戦略というのは分けて考えないといけない。タイなんかも、バンコクなんかはもう完全なる先進都市ですから、バンコクとその他みたいな、そういうふうに考えないといけないので、ASEANの中では比較的先進的な国がこのSMTですよというのと。
あと、日系企業が今最も力を入れていて、また最も苦労しているのがVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンということで、すべての国の人口はもう億超えというのがこのVIPなんですけど。ASEANの中で、グローバルに見てもそうですけど、今後最も成長ポテンシャリティが高い国、人口が爆発的に伸びていますからね。ただ、やっぱりここは非常に難しい。VIPというのは大変難しい。例えば、これは近代小売の数で見たら非常に分かりやすいんですけど、ベトナムの近代小売の数って2,000~3,000店とかそういうレベルなんですよね。日本ってセブンイレブンだけで2万店ありますからね。セブンイレブン1社で2万店ですよ。それが全部合わせてベトナムは2,000~3,000店舗みたいな、そういう市場で。VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンのVIPの中でも最も近代小売の多い国というのがインドネシアなんですけど、それでも3万5,000店とか、そのうちの3万店はアルファマートとインドマレットの2社が構成しているので、非常に少ない。日本は先ほど言った2万店、セブンイレブン1社で2万店ですから、近代小売が少ないので、非常にまだまだこれからの市場、B2Cなんかで言っても。B2Bなんかで言うと、これは、B2Bはときによって産業集積地がターゲットになるということもあるので、必ずしも都市化率が高い、市場としての成熟度が高い国がターゲットになるかと言うと、必ずしもそうじゃないので、今回は成熟度ということで分類をして、敢えてB2Cの例を出していますけども、そうなりますけど。VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンなんかはそうです。一方で、伝統小売の数が半端ないわけなんですけど、ベトナムで50万店、フィリピンで80万店、そしてインドネシアで300万店以上ということで、非常に伝統小売が多い。一方で、さっき言ったSMTのシンガポール、マレーシア、タイなんていうのは、もう近代化、小売の近代化というのは半分以上進んでいるんですよ。マレーシアもタイも50%以上は近代小売なんですよね。シンガポールはもうほぼ100%近代小売ですけども、そういう市場であると。
最後がCLM、カンボジア、ラオス、ミャンマーということで、最も難しいメコン経済圏ですよね。これだけ成熟度が違うということは、ベトナムで成功していない企業がいきなりミャンマーをやるとか、これはもうあり得ないわけですよね。これは生産拠点でいくんだったら全然ありですよ。ただ、マーケットとして、市場として捉えたときに、ベトナムでまだ成功していないのに、ミャンマーと言ったらもっとハードルが高いわけですよね。もっとハードルが高い国で成功するなんていうのは、言ったらなかなか考えにくいので、エースコックの例を取っても、味の素の例を取っても、ユニ・チャームの例を取っても、B2Cはまずベトナムで成功してからミャンマーに行くというのが順番なので、そういうところもしっかり気をつけていかないといけないというのが順番ですよね。B2Bは必ずしも国の成熟度、もちろん国の成熟度によって攻めていくべきというB2Bもあれば、産業集積地でスペックインしないといけないような部品みたいなものもあるので、必ずしも国の成熟度が関係するとは言い切れませんが、B2Bも気を付けて行くと。
整理をすると、SMT、シンガポール、マレーシア、タイが先進ASEAN。そして、VIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンが新興ASEAN、今まさに新興しているASEANですね。最後のCLM、カンボジア、ラオス、ミャンマーが後進ASEANということで、私は3つの市場に分類をして分けております。なので、皆さんもこのASEAN市場を見るときには必ず3つの市場で分けて、自分たちが今行くべき市場はどうなのかと、自分たちのこの市場に対する戦略、それぞれ違う戦略はどうあるべきなのかということをしっかりと考えて展開をしてもらえればなというふうに思います。
それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。