第236回 海外事業 – ターゲティングを間違えると何やってもダメ(STPの話)
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「ターゲティングを間違えると何をやってもダメ」ということでお話をしていきたいと思います。ここ最近、マーケティングの基本プロセス「R-STP-MM」の話をしていますが、前回その中でもRについてお話をしたのかな、Rについてお話をして、今回はその次のステップのSTPのお話をしていきたいと思うんですけど。ちょっとスライドを出してもらって。マーケティングの基本プロセスのお話をしていて前回Rのお話をしましたねと。今日はこのSTP、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの話をしていきたいと思います。ここが間違っていると…。ちょっと整理をすると、Rというのは、「進出前にマクロ環境、ミクロ環境、SWOT分析をしておくと容易な失敗は事前に防げますよ」ということだったと思います。どんな市場、「儲かる市場なの?」「どれぐらい儲かる市場なの?」ということがマクロ環境分析。「そこにはどれぐらい脅威な敵がいるんですか?」というのがミクロ環境分析。そして、「そこに自分たちが進出したら何が起こるんですか?勝てるんですか?負けるんですか?」というのがSWOT分析ですよと。こういうふうに考えると、この訳の分からないカタカナの何とか分析っちゅうものが実ビジネスに置き換えて考えられますよねという話をRということでやったと思います。
今日はSTP、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、これもまた訳分からない、カタカナばかり出てきて非常にあれですけども、どういうことかと言うと、こういうふうに考えてくださいというふうに前もこの番組でお話しましたけども。セグメンテーションというのは「どんな層に売ったらいいの?」と。ターゲティングというのはその層の中でも「どこを狙うの?より具体的に」と。ポジショニングというのは「自分たちはどの立ち位置を目指すんですか?」「自分たちはどういうふうに見られますか?」と。このポジショニングってすごく重要で、たぶんこれ日本企業的な観点で言うと、たぶんポジショニングって出てこないんですよね。基本的に八方美人みたいな、日本企業はどの業種、どの業界、どの企業も八方美人と。若い人向けにも、中高年向けにも、女性にも男性にも、みんなつくりますと、みんなにとっていいものをつくります。車も家電も何もかも、そういう企業、基本的に日本企業って多いと思うんですよね。一方でグローバルな企業というのはもう明確に自分たちのポジショニングを決めているので、「私たちはこういうものを絶対的な価値として持っています。これが好きな人はぜひ来てください。そうじゃなければ来なくて結構です」と、こういうスタンスなわけですね。「来なくて結構です」と言わなくとも、そういうスタンスが見てとれる。だから、それに酔いしれて消費者がそこに集まる、ユーザーもそれを好むということが多いと思うんですけど。Appleだってそうだし、欧米の自動車メーカーだってみんなそうですよね、八方美人な顔はしないですよね。そういうメーカーが基本的にはそうですと。
そんな中で、このターゲティングを間違えると、そもそもこの後に控えている、さっきの図に戻ってもらって、Rは基本的には事前にどういうことが起こりそうなのかというのをできる限り細かく仮説を立てるということがRですよね。これで勝てそうだと思ったら実際に出るというアクションに行くわけですけど、STPからね。そのときにターゲティングを、この人たちが自分たちのターゲットだということを決めて、そしてそこに対して具体的な戦略になるMM、4Pというものを決めていくわけですよね。どういうプロダクト、どういうプライスで、どういう売り場に並べて、どういうふうに手に取ってもらうのかということを決めていくわけですから、このターゲットがずれちゃうと、MMもずれていく。結果、確実に失敗するということになるので、このターゲットというのはすごく、ターゲティングというのはすごく重要なんですよね。
次のスライドに戻ってもらって。その中でどういうふうにターゲットを見ていくかというとこなんですけど。結局、日本で中間層をターゲットにしているのに、海外に出ていきなり富裕層をターゲットにするとかというのは基本的にはあり得ないんですよね。例えば、消費財メーカーなんかもそうなんですけど、日本で中間層を相手にお菓子を売っているのに、自分たちの商品は高い原材料を使って、高い技術力を使って、いいもので高品質でジャパンプレミアムだから、アジアに行ったら所得が低いのでターゲットは上振れしますみたいな、こんなの絶対あり得なくて。だったら、アジアじゃなくて、欧米先進7カ国に行きなさいよという話で。基本的には、消費財メーカーのビジネスの最大の肝というのは、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということがビジネスの根幹なわけですよ。それを富裕層に絞って、100円、200円の消費財を売って儲かるわけがないんですよね。これ、例えば、高級チョコレート、「1つ5,000円、1万円のゴディバです」と言うなら絞ったらいいですし、化粧品ですと、高級化粧品ですと、これも絞ったらいいですけども。言ったら、FMCG周りの消費財、特に菓子なんかはそうですけども、中間層を狙っている、日本で狙っているんだったら、海外でも中間層ですよということはやっぱり考えないといけないので。基本的には日本のターゲットとアジア新興国に行ったときのターゲットは同じであるべきで。ただ、所得が変わっているので、どのタイミングで出るのかと。ギリギリ出れるタイミング、例えば、1人あたりのGDPが3,000ドルを越したときに出ようとか、1,500のときはまだ早かったりするわけですよね。1,500から出たら投資がかさんでいくのでそうなるわけ、B2Cだったら。B2Bでも、これ集積地になるので、どの産業集積地に自分たちのターゲットがいるのかということをしっかり見ていかないといけない。
セグメンテーションというのは、多くの企業の場合、やっぱり4つぐらいのセグメントがあって、B2Bだったら自動車産業、何とか産業、何とか産業、その産業の中のどこからいきますか、もしくは全部から一気にいきますか。だいたい一点突破が一番いいんですけども、まずセグメントを決める。「どんな層に売ったらいいの?」これは消費財でもそうですよね。消費財の場合はもう完全に中間層と決まっているんですけどもね。中間層以外は商売にならない。さっき言った、いかにたくさんの、いかに速い頻度で、繰り返し、永遠に買ってもらうかということで中間層になっちゃうんですけども。そのセグメンテーションが決まると、ターゲティングというのはもうできる限り細かく、細かく細かく細分化する、これはB2Bの企業もB2Cの企業も。B2Bだったらもうバイネームでどこの国のどこの都市のどこの工業区にあるどこの企業を狙っているの?という。部門の決裁権限のある人って誰なの?ぐらいまで細分化できたらもう勝ちなんですよね。そこまで細かくデータを取るということがすごく重要で、直販だったらそこにアプローチをするべきだし、もしディストリビューター経由であれば、そこに通じているディストリビューターを使わなかったら、永遠にそんなところに入れないわけなので、ターゲットさえ明確になれば、プレイスは確実に明確になるんですよ、誰と組めばいいのかということが分かるので。なので、それだけターゲットというのはB2Bにとってはもう本当に重要。B2Bと言ったら金額デカいわけですよね。誰に売るの?と、誰が決済権限を持っているの?と、この人をバイネームで把握すれば、そこにどうやったら通じるのかということをあとは考えたらいいだけなので。ここを間違えちゃうと、その後も崩れていくので、本当にターゲットはB2Bにとっては重要だし。B2Cもそうなんですけどもね、消費者なので。ただ、消費者をバイネームで1人1人特定するなんて、こんな膨大な作業というのは基本的には無理なので、一般的な消費財はね。これ、テレアポ使って通信販売するような会社だったらこれはいいですけども、多くの大手の日本の消費財メーカーはそうじゃないので、通信販売はしていないので。そうすると、やっぱり小売ベースなんですよね。小売がいかにどうなのかということを考えていくという。
ただ、これからはデジタル・マーケティングの世界になってくると、より消費者個人に対するリーチという、小売がPBとかつくり始めると、言ったら顧客情報を持っている人が強くなっていくわけですから、産業構造が変わっていくわけですよね。今まではメーカーが一番偉かった。問屋が御用聞きで中にいて、そして小売様という、一応、小売様とは言うけど、メーカーが一番威張っていたのが、小売が顧客を持っているということは、小売が今度強くなって、中間流通は要らなくなって、そして、小売がメーカーにOEM、「君たちつくりなさい」と、私たちが顧客のことをよく知っているので、顧客はこういうものを求めているからつくりなさいみたいな、そういう産業構造になっていっちゃうわけですよね。そこにオンラインのAmazonみたいなところが加わって、さらに複雑化しているわけなので、将来的には、将来的にはというか、今後はもしかすると、小売で売るということだけにメーカーは頼らず、よりオンライン化が発達するわけなので。かと言って、Amazonみたいなところも、オンラインの小売かリアルの小売かというだけの話なので、メーカー自身が直接Cにアプローチをするという、そういうデジタル・マーケティングが主流になってくるとは思いますけども。
ちょっと話逸れましたけども。それだけターゲットというのはもう本当に重要で、どれだけ具体的に詰めれるかということが勝負になるわけなんですよね。ここをしっかりやっていくということと。
あと、ポジショニング。ポジショニングはさっき冒頭でも言いましたけど、日本企業はこれマーケティングがもしアメリカから入ってこなければ、たぶん日本企業が自分たちのポジショニングの本当に重要性を考えるというのはたぶん日本人の発想としてはなくて、みんなに愛される八方美人というのが日本の企業の、どの企業を見てもそういうスタンスですよね。エッジの立っている独創的な(企業)ってなかなかないですよね。この会社はこうだよね、昔のソニーみたいなのはまさにそうだったと思うんですよ。ソニーはこうだからと。嫌いな人は買わなくて結構みたいなね。ああいう企業がやっぱりなくて、どちらかと言うと、みんな一緒、お母さんにもお父さんにも子どもにも、みんなに愛されるみたいな、そういう企業が多いと思うんですけども。でも、これって個人を見てもそうですけど、個も自分のアイデンティティとか、自分がどういう人間なんだ、自分の考えとかというものはすごく重要なわけで、自分の個人の意思ですよね、企業もやっぱり意思をしっかり持つ必要があって。だから、ポジショニングというのはすごく重要で。このポジショニングが明確である企業の商品を消費者は買いたがる、こういう傾向が当然世界では普通なので、やっぱりこのポジショニングというのはすごく重要で、自分たちの立ち位置をやっぱり明確にするということがより重要になってくるので、ここは自分たちはどういうふうな、本当にポジショニングでいくんだということをしっかりと突き詰めるということは日本以上に重要だと思います。日本ってあまりこのポジショニングって、マーケティング概念上のポジショニングだけしっかりやっておけば、今僕が言っているようなビジョンサイドのポジショニングというのはそんなに重要視されてこなかったかもしれないですけど、海外に行くとこのビジョンサイドの、ビジョナリーサイドのポジショニングというものをすごく重要視されるので、そこ2つをしっかり詰めていくということが大変重要だと思います。
なので、このターゲティングを間違えるとあとの4Pが崩れるので何をやってもダメですよ。ターゲットと4P。「海外事業で一番重要なのは何?」と聞かれたら、僕は「ターゲティングと4P」というふうに答える。ターゲティングがもう絶対なんですよ。ここがずれたらもうすべてが崩れるので、ターゲティングというのは大変重要です。皆さんも今一度、「自分たちのターゲットが本当に間違っていないのか?」ということと、「より具体的にバイネームになっているのか?」ということを見直してみてはいかがでしょうか。
それでは、また次回お会いいたしましょう。