第240回 海外で強い販売チャネルを作るのに必要な3つのこと
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、海外で強い販売チャネルを作るのに必要な3つのことということでお話をしていきたいと思います。これは、B2C、B2Bの製造業を問わず、日本企業は海外のマーケットシェアがなかなか低い国は何が要因でそうなっているのかということの1つの大きな要因として、販売チャネルの脆弱性というのがあって。全般的に、業種問わず、B2C、B2B問わず、日本企業の販売チャネルって非常に弱いんですよね。なぜ弱いかというのは、結論から言うと、ものが非常によかったので、販売チャネルなんてどうでもいいでしょうと、良いものをつくれば売れるんだよという時代が80年代、90年代の古き良き時代の名残で販売チャネルが弱いということになっているわけなんですが。このことについてはまた別の回で詳しくお話をしていきたいと思いますが。今日は、この弱い販売チャネルをどうやったら強くできるんですかというお話をしていきたいと思います。
なので、皆さんが今展開をしている国でなかなか売上が拡大していかない、多くの今、製造業が販売チャネルの再構築というのを世界中でやっていますから、その再構築をどうやってやっていけばいいんだというのは、今日のお話を聞いていただくと分かってくると思います。また、新規の国、新興国ももうASEANから、次、メコンだ、インドだ、アフリカだということで、どんどん、どんどん、これから展開の領域が増えていきますので、そういった新規に参入する国でも新たに販売チャネルをつくるときにどうやって、強いチャネルをつくればいいのかと、過去につくった弱いチャネルじゃない、全く新しい強いチャネルをつくるにはどうすればいいのかということを、今日お話をしていきたいと思います。
スライドをお願いします。このスライドの通り、結論から先に申し上げると、強固な販売チャネルをつくるには3つ必要なことがあって、それがこの3つです。1つが発掘選定。いかに良いディストリビューター、いかに適切なディストリビューターを発掘選定するかということと、いかにディストリビューターと適切な契約交渉ができるかということ。そして、最後は、契約をした後、いかにディストリビューターを適切に管理育成することができるかという、この3つなんですが。それぞれ説明をこれからしていきたいと思いますけども。
まず、この1番目の発掘選定なんですが、これはたぶん7割ぐらいの要素をここで決めてしまっているんじゃないかなと。むしろ、ここを間違えると、3年とか5年のロスをするということにもつながってしまうので、非常に重要なプロセスで。どうやって適切なディストリビューターを選定しますかということなんですよね。実は、非常に当然のことなんですが、これをなかなかできていないという企業が少なくないと。これは何を言いたいかと言うと、必ずしも大手のディストリビューターが良い先かと言うと、そうじゃないんですよね。必ずしも財閥系のパートナーが良い先かと言うと、そうでもないし、必ずしも同業種の製造業が良い先かと言うと、そうでもなくて。自分たちの今のケイパビリティ、自分たちの今のレベル、能力、そして、向こう3年5年10年の実現したいこと、ビジョンや戦略に対して本当に適切に合致した相手は誰なのか、ということを選定していかないといけないわけなんですね。発掘して、選定していかないといけない。多くの日本企業が間違えちゃうこの発掘選定のプロセスであるのは、いわゆる自分たちのことをそっちのけにして、良いディストリビューター、とにかく大きいところ、とにかく強いところ、とにかく安心なところってガーッて行くんですけど、必ずしもそこがあなたに合っていますか、御社に合っていますかと言うと、必ずしもそうじゃないので、その観点でやっぱり見ていかないといけない。自分たちの商売が向こう3年で数十億にしかならないのに、とてつもない大きなディストリビューターを選んでどうするんですかと。その人たちはもっと大きな事業、例えば、財閥系だったら不動産開発もやっている、何とかもやっている、それに対して、本当にこんな小さいビジネス、5年経ってもこれぐらいのビジネスにしかならないことを一緒にやると、当然、財閥系のグループの中の子会社が登場してきて、そのさらに子会社と一緒に事業提携をしたりとかっていうことになるわけなんですけども。どれだけ力を入れてやってくれるかと言うと、必ずしもフルコミットで事業が進まないというケースも全然あるわけですよね。であれば、もっと経営者として30代40代の若手の経営者がまだやっていて、中堅クラスでまだまだ成長意欲のあるようなディストリビューターを選んだほうが全然いいよねというケースもいっぱいあるわけなので。自分たちの今のポジションと、向こう5年10年のポジションからどういう相手が適切なのかということをやっぱり考えなきゃいけないという、こういう発想がまず1つ非常に重要でありますよということが1つです。ここを実に多くの企業は間違えている。
もう1つが、早くしないと、ディストリビューターの選択肢って、どんどん、どんどん、消えていっちゃうんですよね。これはもう世界中で椅子取り合戦をやっています。インドネシアで今優秀なディストリビューターってこれぐらいしかないです。でも、インドネシアのような将来有望な市場を世界中の企業が狙っています。特に先進的なグローバル企業、欧米の外資の企業は進出が早いですから、そういう企業がそういうところをもうすでに掴んでしまっていて、競合する商品は取り扱えないなんていう契約書になっているケースも往々にしてあるわけなんですよね。そうすると、選択肢がどんどん、どんどん、狭まれていってしまうし、ディストリビューターを育てるにもやっぱり時間が掛かるので、早くしないと駄目ですよというのがもう1つ目として存在する、これが1つ発掘選定では言えることなので。いかにそういう観点で適切に絞り込んでいくかで、これは出会いで決めるとか、よくあるのは、今自分たちのいわゆるコネクションというのは、自分たちの手の届くコネクションですよね。手の届く範囲で決めていくと。これが全く駄目で、ディストリビューターなんて各国たかだかインダストリー別にその数なんて知れてるわけですよね。そうすると、それを全部まずリストアップして、縦に並べて、その中から絞り込んでいく、自分たちが100億円やりたいんだったら、キャッシュを回すビジネスですから数十億のディストリビューターとは付き合えないわけですよね。そうすると、そこが絶対評価で消えてくるし、例えば、競合の商品を扱っているところは、自分たちがやりたくないんだったらそれも絶対評価で消えていくと。ずっと絞り込んでいって最後相対評価で選定していくわけなんですけども、そういうしっかりとした発掘選定プロセスをやらないといけないというのが1つですよね。
2つ目の契約交渉。これも日本の企業はよくありがちな契約、日本の本社の法務が非常に優秀ですから、守りの契約書は完璧です。自分たちのライツをどういうふうに守るか、権利をどうやって守るか、そういう文言に関してはもう完璧なんですけど、攻めのことに関してが、いわゆる全く記述がないという契約書なわけですね。守りも完璧かと言うと、欧米みたいな契約書を、こんな分厚い、想定し得る、将来想定し得るあらゆることを盛り込んだ契約書をつくるというのも、やっぱり事業をいっぱいやってないと、そういう契約書ってつくれないので、なかなかあれかもしれないですけども。言ったら、当たり障りのない契約書を結んで、当たり障りのないことをやって、相手がどれぐらいやるのか様子見ましょうみたいな、そういうケースが本当に多くて。
理由なき1カ国1ディストリビューター制を引いている企業が本当に多い。これ、本当にもったいなくて。理由なき1カ国1ディストリビューター制。これはどういうことかと言うと、一応、何かあったら嫌だから、契約形態は非独占にするけども、事実上1社しか使っていないとか。こんな意味のないことはなくて。だって、事実上、そこに独占を与えているのに何のコミットメントもディストリビューターからもらえていないわけですよね。そうすると、やっぱり期限付きで今年これぐらいやってくれるんであれば、お宅に独占を与える。それがクリアできれば2年でも独占与える、3年でも独占与える、独占を与えるか与えないかの可否の決定権をこちらで持っておけばいいだけの話で、一生独占を与え続ける必要なんて全くなくて、単年ごとで切っていけばいいので。独占を与えるということは、それに対してコミットメント、いわゆる絶対達成売上のコミットメントがもらえるということなので、そういった駆け引きをしっかりやっていなかったり。あと、理由なき1カ国1ディストリビューター制においては、そもそもこの国のこれだけの顧客数をこの1社じゃカバーできないのは見えているよね。なのに、なんでこの1社としか付き合っていないんですかということね。例えば、エリアで見てもそうだし、これだけ顧客のポテンシャルがあるのに、この1社が今持っている顧客って、例えば、100のポテンシャルがあるのに、この顧客が持っているのは5ですと。残りの95というのは全然手が回っていないわけ…。95というのは言い過ぎだから、100のポテンシャルがあったときに20しか持っていないと、80は手が回っていないわけですよね。この20しか持っていないディストリビューターが残りの80を、例えば、新規営業していくのに何年かかるんですかということを考えたら、新規で食い込んでいくよりも、もうすでに残りの80を持っているディストリビューターを並行してやっぱり付き合っていくということをやっていかないといけない。特にB2Cは複数のディストリビューターを使わないといけない。B2Bの場合は、インダストリーによっては1カ国1ディストリビューター性が適しているというケースも当然あるので。そもそも、日本で1カ国1ディストリビューターじゃないのに、なんで海外で1カ国1ディストリビューターをやっているの?というのがそもそも間違えで。日本でも北海道から九州まで複数の販売店さんを使って商売しているでしょうと。なぜ海外に行ったら、それが1社になっちゃうんですかと。それで売上が上がらないって、そりゃ当然上がらないですよねという話になってしまうので。やっぱりこの契約交渉のところが非常によろしくないというか、もったいないなと。
もう1つあるのが、この契約交渉でサインをするまでに、どれぐらいの目標数値に対して、どういう組織で何をやって、その目標を達成するんだということを、やっぱり細かく話し合いをして、これできるね、だから契約だということをしていかないといけないですね。例えば、「初年度3億円やりましょう」と言ったときに、「そうですか、うちは5億円やってほしいんですよね」「いや、でも、うちは3億円です」と、ディストリビューター。「こちら側は5億円です。じゃあ、間を取って4億円です、契約しましょう」みたいな話じゃなくて、それ「4億円です」になったんだとすれば、その4億円をどういうディストリビューターの組織で、その組織がどういうオペレーションをするから、ロジカルにこの4億円がつくりだせるのかということをこっちがしっかり理解をしたうえで4億円の契約にサインをしないと、これは達成しなかったらペナルティがあって絶対買い取りだと言うんだったら、まだいいですけど、でも、買い取っても、結局それは中間流通として滞留しちゃうわけなので、セルアウトしていかなかったらずっと中間流通に残っちゃうので、次の年に4億円じゃなくて、2億円になっちゃうということもあるわけなので、やっぱりどうやってその4億円が実現されるのかということを含めて、ディストリビューターと話をして、最終的にそこで契約というふうにならないといけない。そこまでゴリゴリ詰めていると、3社ぐらい、候補であったディストリビューターが、途中で逃げ出すところが1社、やり合うところが2社みたいになるんでね。やっぱりやり合わないと駄目で。ここに最初本当にエネルギー、熱量をうわーっと加えて、エネルギーでうわーっとやっていかないと、結局その後苦労するんですよね。売れるかどうか分からない、アンコントローラブルなものをドキドキしながら待っていて、売れなかったときのショックと無駄な時間という、これほど無駄なものはないので、いかにやっぱり契約までに詰めてしまうかという。ここでしっかり詰めておけば、その後って非常に楽になる。3番目の管理育成なんですけど。もう決まったこと、KPIはもう決めちゃいますから、契約のときにね。そのKPIが順調に進んでいれば、成果は出るはずなので、KPIがどうなったということを常にモニタリングをして管理をしていくと。KPIに問題が発生したときに対して、そこに対策を売っていくということをしないといけない。契約交渉までにさっき言ったような戦略ですよね。まさにどういう組織で何をするからこの売上が上がるというような戦略がなければ、問題が起きたときに対策を打つことができないんですよね。
多くの日本の製造業は、このディストリビューターの管理育成というものをしない。管理育成というのは年に何回かの出張訪問だと捉えているところもあったりするわけですよね。もしくは、メーカー側の、メーカー側のつくったエクセルを、ディストリビューターに送って、そのエクセルを埋めろという面倒くさい作業をさせるみたいなことが管理育成だと思っている企業が非常に多くて。でも、そんなのじゃないんですよね。管理育成というのは、管理されている側が管理されていると思わないように管理していくことが非常に重要なので、シンプルにKPI、2軸のKPIしかつくらずに管理をしていくということがやっぱり重要で、自分たちも分析しきれないようなエクセルの細かいシートを出して、「ここを埋めろ」と言って埋めさせて、それ見て、管理者は「ふむふむふむ」と言うだけだったら、これは何の意味もなくて、それを埋めさせられたディストリビューターとか部下は本当に災難ですよね。苦労して細かい作業、忙しい中、埋めたのに、それ、上司がそれを見て、「ふむふむふむ」と言っているだけだと、全く持ってそれは継続性がないので、部下はそれを埋めたくなくなるわけなので。それが、「ふむふむ」と言ったときに、それが何かしらの次の対策に変わるのであれば、細かい数字を出させたらいいですけど、かなり難しいですよね、細かいデータを出させて、それを次の一手に変えていくというのは。だから、逆に上司としても細かい数字をエクセルで出させるなんていうことはむしろやる必要はなくて、もう基本的に知りたい経営指標というのは決まっているわけなので、その指標だけをしっかり取っていくということをやっていくことが非常に重要で。
育成プログラムも、なかなか欧米に比べて日本企業の育成プログラムというのは考え抜かれていないケースが非常に多いので。いかにディストリビューターをエンターテインしながら、コミットメントとインセンティブというものをどう上手に与えていくか。これだけでも、たぶん、番組を1個つくれちゃうので、また管理育成の詳しい内容は別途切り出してやりますけども、そういうことをしっかりやっていくということが重要で、そもそも管理していないというね。年に1回2回、現地のディストリビューターを訪問しても、彼らと一緒に顧客訪問するわけですけど、ディストリビューターがメーカーの皆さんを連れていく顧客先というのは、彼らが見せたいところだけなんですよね。なので、本当に見なきゃいけないところ、問題があるところには絶対メーカーは連れていかれないので。でも、本来はそういうところがすごく重要で。うまくいっているところなんて行ったってしょうがないわけですよね。なので、やっぱりそこは本当に管理がすごく重要で。逆に1番の発掘選定で7割が決まりますよと申し上げましたけども、この2番3番で残りの3割を取れなければ、7割取っても100%にはならないので、総崩れになってしまうわけですから。総崩れというか、パフォーマンスが最大化していかないわけなので、やっぱりこの3個がセットになっていってはじめて強いチャネルというのはつくれるというふうに思います。
ちょっと今日は長くなっちゃいましたけども、これぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。