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第279回 近代小売と伝統小売の密接な関係 その1

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「近代小売と伝統小売の密接な関係」についてお話をしていきたいと思います。

今日のお話は、インダストリーはFMCG(Fast Moving Consumer Goods)のインダストリーです。国はASEANになります。それ以外の製造業の方は自分たちの事業に置き換えてお話を聞いていただければと思います。

「近代小売と伝統小売の密接な関係」ということで今日のお話なんですが、結論から申し上げると、近代小売と伝統小売って両輪で攻めていく必要があります。ほぼ同時並行的に攻めていく必要があります。なぜならば、この両者は大変密接に関係しているからというのが今日のお話なんですが。

ちょっとおさらいを含めてスライドをお願いします。この図の通り、近代小売と伝統小売、それぞれ定義があるわけですけども、近代小売というのは基本的にはPOSレジが使われているような近代的な小売、デパート、ハイパー、スーパー、コンビニのようなものですよね。いわゆるわれわれが先進国で慣れ親しんでいるもの。一方で伝統小売というのは、英語でTraditional Trade、昔ながらのパパママショップ、この図の通りのいわゆるパパママショップですよね。

次のスライドをお願いします。これがアジア新興国だと、中国はもう新興国じゃないですが、このような比率になっている、Modern Trade、MTとTTの比率というのはおおよそこのような比率になっていて。これは金額ベースですね、それぞれの流通を通じて売り上がる金額というのはだいたいこういうパーセンテージで分かれています。タイ・マレーシア・中国のような先進的な国はほぼほぼ半分前後ぐらいまで近代化が進んでいるものの、やっぱりベトナム・インドネシア・フィリピンのようなVIPのような、今まさに成長著しいような国ではまだ8割がたは伝統小売である。この両方を攻めていくということが消費財メーカーにとっては大変重要で。

結局、なぜこれが両輪なのかと言うと、基本的には店舗数的に言うと、近代小売だけやってもシェアは上がらないし、儲からないですよね、製造業は。例えば、ベトナムの近代小売、主要近代小売の店舗数って3,000店舗しかない。3,000店舗でどれだけ週販回しても、これはなかなか利益を出したりシェアを上げたりするというのは難しくて。シェアの高いローカルメーカーとか欧米の先進的なグローバルメーカーというのは必ず伝統小売も攻略しています。これはインドネシアも一緒で、インドネシアでもやっぱり3万5,000店舗しか近代小売はなくて、伝統小売は一方で300万店ある。ベトナムは伝統小売が50万店あります。フィリピンも6,500店舗ぐらい主要の近代小売がありますけども、一方で80万店の伝統小売。日本のセブンイレブン1社で2万店ですから、いかに今申し上げた近代小売の数が少ないか。これだけじゃなかなか儲からないし、近代小売というのはASEAN、日本と最大の違いは不動産化しちゃっているんですよね。結局、近代小売の棚、1SKUいくらで売っていますから、これは導入費として掛かってきます。そうすると、その棚代を払わないといけないし、四半期に1回強制的なプロモーションがあるし、もちろん欧米の先進的なグローバルメーカーみたいに売れている実績がなければ、もしくはTTでの実績がなければ、やっぱり各種導入費用もしくは棚の維持費というのが高くのしかかってくる。特に日本企業に対しては割高である。そんな中で近代小売だけやっていてもコストが賄えないです。特に現地法人なんていうものを持ってしまったら、もう伝統小売をやらざるを得ない。

しかし、伝統小売だけをやればいいのかと言うとそうじゃなくて、伝統小売というのはものを置けるスペースは限られているので、そこのパパママはいかに近代小売で売れ筋の商品だけを売るかということに徹しているわけですよね。なので、基本的には近代小売でやっぱり売れ筋になるということは重要だし、売れ筋にならないまでも近代小売である程度やっぱり存在感を示すということが伝統小売で置いてもらう、置けるかどうかということにも大変影響してくるわけです。伝統小売のオーナーが自ら進んで取り扱ってもらわないと、これは無数にあるところに、すべてに自分たちで「置いてください、置いてください」とこれ営業しないといけないんですけど、していたらきりがないので、ある一定の比率はやっぱり向こうから「置きたい」と言ってもらわないといけない。そのためには近代小売で売れ筋になるということが必要。

また、近代小売で先ほど申し上げた各種強制的なプロモーションとか導入費、更新費、そういう維持費、棚維持費ですね、棚に置いてもらうのにお金が掛かる。こういうものの小売との交渉力をやっぱり優位にする意味でも、伝統小売のストア・カバレッジが高ければ、伝統小売で存在感が高ければ近代小売もやっぱりそれはちゃんと見てくれるんですよね。例えば、コカ・コーラと日本のメーカーと同じ導入費、維持費を取るかといったら取らないですよ、近代小売は。だって、コカ・コーラというのは伝統小売の隅々まで配荷されていて、コカ・コーラを置いていない近代小売なんていうのはもう恥ずかしくてしょうがないわけですから、むしろ置いてくださいという話になるので。場合によっては導入費を取っていないかもしれない。それぐらいいろんなことが違うわけです。強制プロモだって本当に金額は違うし、あと、コーナーをしっかり取れていたりとか、プロモーションを積極的にやってくれたりとか、そんなことがやっぱり全然違うので。近代小売との交渉力を上げるためにも伝統小売をやるということは大変重要で。

この近代小売と伝統小売というのは両輪で進んでいく。若干、近代小売のほうが先に進むんですけども、基本的には両輪でやっぱり進んでいかないとシェアも売上も上がりませんよというのが実際でございます。

今日は一旦これでおしまいにしますけど、次回ちょっとフィリピンの面白い近代小売と伝統小売の密接な関係のお話があるので、それについてお話をしていきたいと思います。
今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。