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第280回 近代小売と伝統小売の密接な関係 その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「近代小売と伝統小売の密接な関係」ということでお話をしていきたいと思います。

前回、ASEANのFMCGでお話をしましたが、今日はフィリピンです。この「近代小売と伝統小売の密接な関係」のフィリピン編ということで。前回のお話では伝統小売と近代小売というのは両輪で進むべきですよ。近代小売で売れ筋になる、もしくは存在感を示さないと、伝統小売のオーナーは扱ってくれないし、伝統小売のストア・カバレッジが高いということは近代小売でも評価されて導入費であったり、維持費であったり、強制的なプロモーション費用であったり、そういったものが安くなります。なので、小売交渉力が高くなります。なので、これは両輪で進んでいくべきです。圧倒的にASEANは近代小売の数が少ないので、伝統小売と両輪でやらないと旨味がないですよというお話をした。それが密接な関係ということで「その1」というお話をして、今日が「その2」でフィリピンにフォーカスをしますが。

フィリピンは近代小売と伝統小売が非常に密接な関係で、非常に面白い、不思議な国なんですよね。結論から申し上げると、伝統小売が商品を仕入れる仕入先が近代小売だったりするんですよね。これってどういうことかと言うと、日本にはもう伝統小売はありませんけども、仮にあるとすると、日本の駄菓子屋が自分たちのお店で売るものをイオンで仕入れてくるみたいな、こういう構造がフィリピンにはあって、そのことについてちょっとお話をしていきたいなと思うんですけど。

スライドをお願いします。見てもらっちゃったほうが早いと思うので、これはピュアゴールドという大手3大小売の1つなんですが、フィリピンというのは財閥系の影響が非常に強い国で、一番大きな近代小売のグループというのはSMグループ、シューマートというふうに言われますけど、SMグループで、ピュアゴールドというのも3大小売のうちの1つ。あと、ロビンソンズというのがあって。ルスタンズというのが昔あったんですけど、今もありますけども、ルスタンズはロビンソンズが買収したので、今は4大から3大になって、SM、ピュアゴールド、ロビンソンズと。

このピュアゴールド、いろんなところに行くと、この黄色と緑のピュアゴールド、ちょっとブラジルみたいなこんなロゴがいっぱいあるんですけど、この小売店舗へ行くと、非常に面白いのが、この写真の通り、Wholesaleレーンというのが9~18って、これ左の写真に書いていますけども、1~18、18レーンあるんですよ。要はレジキャッシャーがね。POSレジキャッシャーが18レーンあるって相当大きい店舗ですよね。そのうちの1~8レーンはいわゆる個人のお客さま、Cのお客さま。一方で9~18レーンというのはWhole sellerのお客さま、言ったらサリサリのオーナー向けのレーンなんですよね。Wholesaleをやっていますよと、ここはWholesaleのレーンですよと、商売をやっている個人商店の人たちが並んでくださいねという、そういうレーンになっている。右の写真が大量にお菓子を買っているわけですけど、これ、自分たちのいわゆる伝統小売、サリサリというふうにフィリピンは言われますけど、サリサリで売るような商品をオーナーが仕入れているわけですよ。場合によっては地域のいわゆる地域一番店的な近代小売が周りの伝統小売の商品も一緒に買いにいってくれるという、そんな構造になっていて。本当にこれ、最初面白いなと思ったんですけど、駄菓子屋が本当に日本だとイオンでね、自分たちのお店で売るお菓子を調達するという、そういう構造で、こんなことあり得ないわけですよね。なので、そういう構造になっていますよと。アメリカとかだとWholesaleと言うんですかね、いわゆるコストコみたいな、業販向けのスーパーみたいのがあって、実は業販向けとかって言いつつも個人も買いに来ていたりするわけなので、個人と個人商店みたいな人たち向けのレーンなんですよね。小売なんですよね。そんなのが1つです。

このピュアゴールドなんですが、こんな、次のスライドを見ていただいて。こんなコーナーがあって、これはALINGPURINGプログラムと言うんですけど、ピュアゴールドのALINGPURINGプログラム。これをちょっと見てもらうと、伝統小売のお店の見た目そのものになっているんですよ。ここは何をしているかと言うと、伝統小売のオーナーさんのためのサービスを提供していて、伝統小売で売るための1パッケージがここで全部買えるわけです。伝統小売で売れ筋になっているようなものは、ここにいけば全部ボーンと調達できるという、そんな仕組みになっていて。結構、ピュアゴールドは伝統小売のオーナーさんのためのサービスを積極的に展開している。例えば、買い物売り場レーンに行っても、「ALINGPURING」と書いていますけども、いわゆる伝統小売では、1個が20個とか入っている、こういう全部、見てみると商品が10個20個入っているんですけど、それを買ってばらで売ります。10個100円、20個200円なんだけど、それをばらにして1個12円とか13円で売るわけですよね。2円、3円儲けるという、そういう話で。

じゃあ、これ、消費者も近代小売で買ったほうが安いんだから、近代小売で買うじゃんとお思いになるかもしれないんですが、基本的には消費者も10個は買いたくないわけです。明らかに1個単価は近代小売のほうが安いというのは分かっているわけです、消費者も。ただ、消費者にとって重要なのはキャッシュフロー、家庭のキャッシュフローなので、今使いたい分だけを買えるかどうかということは非常に重要になるわけです。安く買えるということも重要なんですけど、新興国の最大の特徴は、今使いたい分だけを買えるということも価値としては非常に重要で、これは安いという問題と、あとキャッシュフローという問題があるわけですよね。これは非常に新興国の特徴なんですけど、われわれだったら、例えばシャンプー、切れたら困るから流しの下に2本ぐらい予備入れとくとか、こういうのは駄目なんですよね。シャンプーというのは使いたいときだけ買いたいのでボトルでも買わない。週に2回、「今日シャンプーしよう、今日買う」みたいな、極端な話。フィリピン人もほとんど、ほぼ毎日シャンプーしていると思いますけど、極端な話こういうことなわけです。なので、頭痛薬もわれわれだと24錠買っちゃうわけですけども、いつ頭が痛くなるか分からないのに24錠、薬代全部払って先の分まで買うと、これが個人のキャッシュフローを痛めるわけです。フィリピンはまだ給料日が月に2回あるんですね。2回あるということはいかにキャッシュフローが重要かということなわけです。そうすると、「今頭痛がする、これを止めたい」という1錠から買えるということが大変重要で。そういう意味では伝統小売というのは高く売っていても、それは消費者もよしとしているわけなんですね。

ちょっと話が逸れましたけども、こうしてALINGPURINGプログラムのようなものを通じて、伝統小売が近代小売から買っている、まさに日本で言う駄菓子屋がイオンから商品を調達しているみたいな非常にユニークな面白い構造になっている。これが近代小売と伝統小売の大変密接な関係ですよということで「その2」としてお話をさせていただきました。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。