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第281回 マーケットインとプロダクトアウトの絶妙なバランス

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「マーケットインとプロダクトアウトの絶妙なバランス」ということでお話をしていきたいと思います。今回も引き続き、対象国はASEANを中心としたアジア新興国で、インダストリは食品・飲料・菓子・日用品等のFMCG(Fast Moving Consumer Goods)になります。ずっとFMCGでASEANが続いていますけど、B2Bの製造業の方は自分たちの事業に置き換えて考えていただければと思います。十分、B2Bの企業でもお役に立つ話だと思います。

では、今日のお話、「プロダクトアウトとマーケットインの絶妙なバランス」ということなんですが、結論から申し上げると、これは両方とも非常に重要で、どちらかが悪くてどちらかが良いという話ではない。このプロダクトアウトとマーケットイン、どういうふうに駆使してアジア新興国市場で取り組めばいいのかということが今日のお話になります。

では、まず定義の整理からしていきたいのでスライドをお願いしたいんですが。まず、「プロダクトアウトって何?」ということですけども、簡単に申し上げると、プロダクトアウトというのは企業が商品開発や生産を行ううえで企業側の理論を優先させる方法なわけですよね。企業側が良いと思ったものを生産して販売していくこと、自分たちの良いと思っているものはこれなので、どうぞ消費者の皆さん、市場の皆さん、これは別にB2Bでもよいので、ユーザーの皆さんどうですか、ということでドーンと市場に投入をする方法がプロダクトアウトです。

一方で、「マーケットインはどうなの?」ということなんですが、マーケットインというのは市場ニーズを優先して顧客視点で商品開発や生産を行い販売していくこと。要は、さんざん市場調査をして、消費者なりユーザーがどういうものを求めているのかということをしっかりと理解したうえで商品を開発して生産して販売をしますよというのがマーケットイン。

これ日本だと、アジア新興国の事業、ことアジア新興国の事業になると、プロダクトアウトじゃ駄目だと、マーケットインじゃなきゃ駄目だみたいな議論が非常にされていて、どちらかが悪で、プロダクトアウトが悪でマーケットインであるべきだみたいな、こういう議論が非常にされやすいんですが、実はそんなことなくて。いやいや、欧米の先進的な企業のほうがよっぽどプロダクトアウトですよということもあって、これは両方とも絶妙なバランスで必要なんですよね。問題なのは日本企業のプロダクトアウトが非常に中途半端だということなんですよね。プロダクトアウトでいくんだったらプロダクトアウトでいけばいいんですけども、そのプロダクトアウトが非常に中途半端なので浸透しなかったというだけの話で。プロダクトアウトを徹底してやっていけば、それは無理やり市場に浸透していきますから。このどちらが悪いかということではないし、また、中途半端にどちらかだけを徹底するということも間違っていますよと。

例えば、言ったら日本の、日本人の良いものをとか、日本の良いものを市場に出すから駄目なんだと。やっぱり市場の、現地の人たちのニーズに合ったものをつくって販売しなきゃ駄目だと、こういう議論が、これは正論なんですけど。正論は正論なんですけど。

じゃあ、すべての先進的なグローバルメーカーがそうしているかと言うとそうじゃなくて、例えば、P&Gとか、ネスレとか、ユニリーバとか、アジア新興国、ASEANで非常にマーケットシェアが高い企業が、じゃあ、それぞれの国でそれぞれの市場の消費者のニーズに合ったものをマーケットインで展開しているかと言ったら、決してそんなことはないわけですよね。だって、ベトナム人にはベトナム人のニーズがあるし、タイ人にはタイ人のニーズがある、インドネシア人にはインドネシア人のニーズがある、そうなったときにそれぞれの国でマーケットインしていたら、これは生産効率が非常に悪いし、投資効率も非常に悪いと。彼らは、彼らこそ彼らが良いと思ったものを市場にドンとプロダクトアウトで押し込んでいるわけなんですよね。

ただ、なぜ彼らがそれだけ浸透するかと言うと、それをとてつもないボリュームで全体最適で網羅的に押し込んでいくからしっかりとそれが浸透して、シェアとして数字に跳ね返っていく。

例えば、プロダクトに関しては、もちろんプロダクトアウトだと言っても、ある程度、前段のマーケットインベースのリサーチをやっているわけですよね。消費者がどういうものを欲しているのかということをさんざんぱら調べて、そのうえでプロダクトアウトを実行するので、マーケットインの発想は全くなくて、いきなりプロダクトアウトをしているかと言うと、そうじゃないんですよ。それは、日本企業はそうなんですけど、消費者調査だけはいろいろやるんだけども、消費者調査でAだと言っているのに、自分たちはBだからBを仕込むみたいな、そういうことではなくて。ある程度市場を調べて、よし、この市場でいけるとなったら、自分たちの持っているものを思いきりプロダクトアウトすると。ただ、そのときに、やっぱり彼らはプロダクトはプロダクトアウトなんだけど、プライスに関してはしっかりと市場が賄える価格設定に置き換える、原材料を変えるとか、入り数、グラム数を変えて、安価に出せるようにするし、チャネルに関しても、アジア新興国の最大の特徴である伝統小売にもしっかりと流通するようなディストリビューション・チャネルをしっかりつくるし、プロモーションにだってしっかり投資するんですよね。

日本の消費財メーカーの場合は、基本的にはプロダクトを変えてくない、われわれは品質がすべてですと。品質良いものを売っている、これがわれわれの良いものなんですと。なので、価格は少々高くなります。ASEANなので若干安くしますけどもと。チャネルは基本MTですと、TTはあまりよく分かりません。プロモーションは成果が出たら投資しますけど、成果が出るまではできればあまり投資したくありません。こういう方法で中途半端にプロダクトアウトするので、なかなか浸透していかないという現象が起きるわけなんですよね。

結局、その両方必要で、やっぱりプロダクトアウトとマーケットイン、両方必要です。結局、何かアジアの市場のために新しいものを0から開発するって、これは非現実的なんですよね。基本的には日本である程度成功体験のあるものを世界市場向けにもしくはアジア市場向けにリアレンジして、リビルドして、それを展開していくということなので。このステージにおいてはマーケットインですと、ただ、一旦これだと決めたら徹底的にプロダクトアウトしないと、それは浸透していかないわけですよね。

結構、欧米の先進的な企業って、例えば、自動車メーカーでもそうですけども、メルセデスベンツ、BMW、「私たちはBMWです」「私たちはメルセデスベンツです」と。「どうぞ乗りたくない方は乗らなくて結構です。私たちが良いと思うものはこれなので、乗りたくない方、乗れない方は乗らなくて結構です」と、そんなことは言いませんけど、彼らはね。でも、そういう顔をしていますよね。一方で、日本の自動車メーカーはどうでしょう。「お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、成人した息子さん娘さん、みんなうちの車に乗ってくださいね。大きいのから小さいのから全部揃えています」。さあ、八方美人、ドーンと、こういう戦略ですよね。BMWもベンツも、大きいのから小さいのから全部揃えているんですよ。車のラインナップは最近変わってこないんですけども、やっぱり裏側にあるスタンスとか、ストーリーとか、マーケティングセオリーみたいなものが全く違うわけなので、そこがやっぱり消費者の心にどう訴えかけられるかということが大きく違うなと。

また、分かりやすい例で言うと、Appleなんかまさにそうですよね。彼らは、「自分たちの思うクールはこれです」と。「このクールをクールと思った人はどうぞ買ってください。そう思わない方は買わなくて結構です」という、そんなことは言いませんけど、スタンスが1つ軸としてしっかりと刺さっていて、あの人にも、この人にも、その人にも、あの人にも、そういう戦略ではないわけです。これはまさにプロダクトアウトで。

マーケットインなんて、究極突き詰めていくと市場のニーズってものすごく細分化できるものなので、実はある一定のマーケットインができたら、その後はもう徹底したプロダクトアウトがアジア新興国に限らず大変重要ですよね。特にアジア新興国が重要だと言うのは、まだモノに満たされていない市場だから。だからこそ先に入って、先にプロダクトアウトしてしまうということが大変重要で。チョコレートを食べたことない人の口にいかに早くチョコレートを入れるかということが、ハンバーバーを食べたことない人の口にいかに早くハンバーガーを入れるかと。そして、そこでデファクトをつくってしまうということが重要なので、プロダクトアウトが重要ですよという、そういうお話です。ただ、必ずしもプロダクトアウトだけじゃなくて、どちらかが良い、どちらかが悪いということではなくて、両方重要です、というのが今回のお話です。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。