第284回 「属人的」ではなく、「戦略的」な先進グローバル企業 その1
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「属人的」ではなく、「戦略的」な先進グローバル企業ということでお話をしていきたいと思います。俗に新興国事業においては、先進的なグローバル企業というのは大変戦略的でかつ逆算思考を持っていると、一方で日本企業の多くは俗人的でなおかつ積み上げ思考であるというふうに言われます。この大きな違いがどのように事業に影響しているのか、また日本企業はどのように俗人性を戦略性に変えて、積み上げ思考を逆算思考に変えていけばいいのか、そんなことについてお話をしていきたいと思います。対象は新興国で、インダストリはFMCG(Fast Moving Consumer Goods)、食品・飲料・菓子・日用品になります。そうは言っても、B2Bの製造業の方は、皆さんの事業の今日の話を置き換えていただければ、十分お役に立つ話だと思います。事例がFMCGの事例を活用するだけで基本的には置き換えると、製造業であれば課題認識というのはほぼ近しいところにありますので、ぜひ皆さんの事業に置き換えて考えてもらえればと思います。
では、早速スライドをお願いしたいんですが。FMCGの場合、先進的なグローバル消費財メーカー、P&Gとかネスレ、ユニリーバのような先進的なグローバル消費財メーカーと日本の消費財メー化は何が違うのかということで、大きく分けるとこの図の通り3つの違いがあります。1つ目が早期展開、先駆者メリットを最大化させる必要が、特に新興国ビジネスというのはありますので、早く出るんだと、非常に早期の展開をしますよというのが1つ目。そして、2つ目が市場規模を最大化させるために明確なターゲティングをしているというのが2つ目です。3つ目がパフォーマンスを最大化させるために強固な販売チャネルを構築していますと。これら3つすべてが戦略的で逆算思考であって、結果シェアが高いということになるんですが。これちょっと1個1個説明をさせていただければと思うんですけども。
まず1つ目、次のスライドをお願いします。これは消費財のメーカーがアジア新興国を市場と捉えた時期、日本企業と先進的なグローバル企業では約20年ぐらいの差があるというふうに一般的に言われています。もう80年代には、先進的なグローバル企業はこのアジア新興国を本気でマーケットと捉えていたんですよね。当時、日本企業はもちろん進出はしています。ただ、それはあくまで生産拠点としての進出であって、マーケットとしてモノは多少売っていたものの、本気で見ていたかと言うとなかなかそうではなかったと。従って20年ぐらい進出をした時期に差があります。早い遅いの話で言うと、欧米が早いなんていうことは分かっているよということなわけで、そこを申し上げたいんじゃなくて、なぜ同じ企業なのに彼らは早く動けて日本企業は早く動けないのかということなんですけど。ここがそもそも冒頭で申し上げた逆算思考であり戦略的であるというところに繋がってくるわけなんですが。
この問いを解くために私は数多くの先進グローバル消費財メーカー訪問をして、インタビューをしていろんなお話を伺ったと。そのお話を伺う中で、先進グローバル企業から必ず共通して聞こえてくるのが、新興国ビジネス、新興国という未開の地で、全く西側諸国からすると検討がつかない、非常に未知の遠い市場、ここで最初から成功するなどと彼らは元々思っていないんですよね、そもそも。結局、じゃあ、どうするかと言うと、誰よりも早く始めて、誰よりも早く失敗をして、そして誰よりも早く学ぶことがしいては成功するための最短のルートなんだという、こういう思想が非常に根強くあって。とにかくやるというこの思考、そしてそれが仮に事実だとすると、早く出ないと当然マーケットシェアを獲るのに遅れが生じる。そして、いかにデファクトスタンダードになるということが市場や消費者に与えるインパクトが大きいかと。何事もそうですけど、一番最初に出たもの、2番目3番目に出たものはなかなか一番最初に出たものを越えられないですよね。それと一緒で、いかに最初に大きなインパクトを与えるかと。人間というのは一番最初に味わったこのインパクトの大きさ、仮に2個目3個目に出てきたもののほうが仮に優れていたとしても、一番最初に目にした、手にした、口にした、この衝撃をなかなか忘れることができないということをしっかりと理解している。であれば、早く出たほうが勝ちだということを彼らは非常に戦略的に理解しているし、逆算的にも理解しているわけなんですよね。だからこそ彼らは逆算思考だし、戦略的だしと。一方で、日本企業の場合は、とにかく石橋を叩いて、大丈夫か、大丈夫かと、確認、確認、確認で、なかなか早く動けない。もし動いて失敗したらどうしようということばかりがフォーカスされてしまうんですが、失敗を積み重ねることが成功になるんだということをやっぱりしっかり理解しているのと。
あと、いろんな先進グローバル企業をインタビューしていて思ったのが、彼らはただ無謀にドーンと行くのではない。必ず高度な仮説を持つということを非常に重要視していて、高度な仮説を持ったうえでアクションするという、これが1つセットになっているんですよね。日本企業みたいに俗人的でとにかく駐在員を送り込んで気合と根性で走りながら頑張れという、こういう動きじゃないんですよね。必ず高度な仮説を持つ。仮説を持つということは、インプットがないと仮説は持てませんから、インプットの少ない人がつくる仮説というのは非常にチープな仮説になるので、やっぱり事前のインプットを入れるということには時間や労力やお金を惜しまないという傾向が非常に強いなというふうに感じました。
一旦、この話は長くなりますので今日はこれぐらいにして、続きをまた次回やっていきたいと思いますので、1、2ぐらいで、3には行かないと思いますけど、1、2ぐらいで終われればと思いますので、一旦今日はこれぐらいにしたいと思います。次回またお会いいたしましょう。