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第305回 近代小売と伝統小売は両輪で攻める その1

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「近代小売と伝統小売は両輪で攻める」ということについてお話をしていきたいと思います。

今日のお話は、対象はFMCG(Fast Moving Consumer Goods)、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーで、対象エリアはASEANというふうにしておきたいと思います。今日のお話なんですが、ASEAN市場において消費財メーカーが市場でマーケットシェアを上げていく上では、近代小売と伝統小売を両輪で攻めていかないといけないですよ、いく必要がありますよということなんですが、前提条件として、基本的に今回のお話は輸出の企業は当てはまりません。日本から輸出で、日本で製造したものを輸出でやっているような企業は、そもそも関税が乗って価格が高くなるので、基本的には伝統小売には置けないので、今日のお話の対象は消費財メーカーで、かつ現地で生産をしていて現地で販売をしているような、大手の消費財メーカーになってきます。なぜ近代小売と伝統小売は両輪で攻めなきゃいけないのかというその理由と、近代小売と伝統小売の構造みたいなものを今日はゆっくりとお話をしていきたいと思うんですが。

まず、スライドをお願いします。このスライドが近代小売と伝統小売の比率を表しているものなんですが、基本的にASEANでも、ASEANってSMT、シンガポール、マレーシア、タイの先進ASEAN、比較的もう首都を含めて大きい都市が先進化しているようなASEANですね、新興国ではないASEAN、もうシンガポールなんかももうずっと前から近代国家ですし、マレーシアもクアラルンプールとジョホールだけ見たら完全な先進国ですので、そういう、タイもバンコクだけ見たら本当に近代化が進んでいるということで、このSMTというのは先進ASEAN。そして、攻略が難しいのが、人口が1億人を超えてこれから最も成長が著しいと言われているVIPと言われる、ベトナム、インドネシア、フィリピンですね。メコン経済圏、一時期ちょっと注目を浴びていましたけども、ミャンマー、カンボジア、ラオスですよね、CLMと言ってカンボジア、ラオス、ミャンマー。ただ、ミャンマーもああいうことになってしまっているので、当面たぶんメコン経済圏のブームというのはまたしばらく大人しくなっちゃうと思うので、基本的にはVIPが中心になるのかなと。このVIPの攻略に日本の消費財メーカーは非常に苦労をしていると、そんな現状があります。

すみません。またちょっと1枚目のスライドに戻ってもらって。このVIPの近代小売と伝統小売の比率を表しているこれは図なんですが、基本的にこの図の通り、近代小売って13%とか15%とか22%とかって、もう8割がたが伝統小売なんですよね。これは金額ベースです。小売の流通総額のうち87%がまだまだ伝統小売経由の流通なんですよ、ベトナムでは。13%しか近代小売はないんですよということを表しています。これは店舗数で言ったら、もう99.9999%伝統小売になっちゃうんですよね。なぜならば、ベトナムの近代小売の数なんていうのは高々3,000店舗ぐらいで、一方で伝統小売というのは50万店ありますよと。インドネシアに関しては、近代小売…。フィリピンからいこうかな。フィリピンに関しては近代小売が6,500~7,000店舗ぐらいです、今。一方で伝統小売が80万店。そして、ASEANで最も近代小売が多い国インドネシアは3万5,000~3万6,000店舗ぐらいの近代小売があります。そのうち3万店ぐらいは2社のローカル系のコンビニエンスストア、アルファマートとインドマレットというところなんですが、伝統小売は今度300万店存在するわけですよね。なので、もう圧倒的に伝統小売のほうが数が多いというのが今の実態です。そうすると、ベトナムの例で言ったら分かるんですけども、3,000店舗でいくら週販どれだけ売ったって、黒字化するなんていうことは難しいんですよね。現地に工場があって、販売子会社を持っていて、現地で生産して現地で販売する。そして、3,000店舗の近代小売しかないって。日本はセブンイレブン1社で2万店あるわけですよね。2万店あって、一方でベトナムは全部合わせて3,000店舗、そしたら、これは本当にもう週販、日販、どれだけ売っても儲からないので、いかにこの50万店の伝統小売を同時に攻略していくかということがすごく重要になってくるんですよね。

多くの日系企業の場合は、まずは近代小売と、そのうち伝統小売をやるんだということで出ていくんですけども、結局、近代小売止まりでなかなか伝統に行けなくなっちゃうんですよね。その要因は、導入当初から基本的にはまずは近代とかって言っているといつまでも近代で止まってしまうので、伝統小売で導入できる4P、4Cを整えて、市場に出るということがすごく重要で、もう消費財メーカーのターゲットなんて中間層以外にあり得ないんですよね。だって、消費財メーカーのビジネスのキーって、いかにたくさんの人に、いかに速い頻度で、いかに繰り返し、永遠に買い続けてもらうかということが消費財メーカーのビジネスのもうセンターピンなわけですよね。このピンを外してしまうと全く売れない。これは1万円の化粧水を売っていますとか、1箱1万円のチョコレートを売っています、であれば、これは別に数も必要ないし、頻度も必要ないし、永遠に買い続けてもらうことも必要ないわけですよね。中間層なんてそもそも必要なくて、ひたすら富裕層に売っていればいいという話になるんですが、なかなかそうはならない。なので、この伝統小売というのは非常に重要で。

じゃあ、この伝統小売を…。ちょっと時間か。すみません、時間が来ちゃったので、一旦、今日はここで止めますけども。次回はこの…、今日は近代小売と伝統小売では伝統小売のほうが多いという話をしたんですが、この「両輪で攻めていかない」といけないというのが伝統小売の数の原理ということが非常に大きいんですけども、「じゃあ、どうやってこの近代と伝統を両輪で攻めていけばいいの?」「どういうふうにやったら両輪で攻められるの?」という話をしていきたいと思います。

今日はここまでにしたいと思います。次回またお会いいたしましょう。