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第308回 近代小売と伝統小売は両輪で攻める その4

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、「近代小売と伝統小売は両輪で攻める」ということについてお話をしていきたいと思います。

最近ちょっと話が長くて、1回で終わらせるつもりが今日でその4まできてしまいましたが、引き続きお話をしていきたいと思います。前回(その1、その2、その3)が何をお話したかって整理していると、またその4がその整理で終わってしまうので、今日はその4についてだけ話そうと思いますけども。対象は引き続きFMCG、消費財メーカー、食品・飲料・菓子・日用品等の消費財メーカーで、ターゲット市場はASEANと、特にVIPということでございます。

近代小売と伝統小売、両輪で攻めるということで、伝統小売の比率ってだいたい8割ぐらいですよ、まだまだ近代小売って2割ですよというお話をしました。ただ、この伝統小売が将来消えるのかという話なんですけど、それは消えません。私はシンガポールに1980年~1990年ぐらいに住んでいたんですけれども、その当時に比べても伝統小売の数って増えているんですね。基本的に大きなトレンドの波としては、伝統小売が近代化していくって、確かにそうなんですよ。確かにそうなんですけども、じゃあ、これが数十年で、10年、20年でなくなるかと言うと、残念ながらそうはならない。これはいろんなセミナーでもやっぱり言われることで、要は近代小売、伝統小売が近代化してからコンビニ化してから攻めればいいじゃないか。だから、それまで中間層、伝統小売を攻めるのは難しいから近代小売で何となくとどまっておくのがいいんじゃないか、みたいなことを質問される方も非常に過去も多かったんですけど。そのたびに、あれだけの数が、じゃあ、10年20年で消えるかと言うと、消えないですよという話をずっとしてきていて。

消えない理由は、1つがインフラなんですよね。なぜそういう質問が日本で出るかと言うと、日本の小売の近代化って一気に行われたんですよ。アメリカからコンビニという業態が輸入されて、そして、そのコンビニが日本の国民性に合ったんでしょうね。一気にコンビニがこれだけ広がって小売が近代化していった。その背景はインフラなんですよね。結局、小売が単体で近代化するなんていうことはなくて、小売が近代化するということはどういうことかと言うと、道路のインフラとか、物流のインフラ、モノを運ぶのに道路がちゃんとしていなかったら運べないですよね。ガタガタ、ガタガタしている道、いっぱいありますから、ASEANなんかはね。それから、水道、ガスとか電気等の基本的ないわゆるライフラインですよね。それから、システムもそうだし、あらゆるインフラが、日本の場合は北海道から沖縄まで津々浦々近代化をしていったので、同時にね、小売も近代化できたんですよ。

じゃあ、ASEAN、ASEANじゃなくても新興国がそういう状態に今あるかと言うと、そんなこと全くないわけですよね。そうすると、やっぱり小売単体で近代化するなんていうことはあり得ないですよということが1つ。これはASEANとか新興国独自の進化を遂げていて、結局、発展途上とか、いわゆる発展過程にある国々がね、ディープフロッグでどんどん新しいものが入ってきているわけですよね。一段跳び、二段跳び、三段跳びをしていくわけですよ。固定電話は知らないけど、携帯は持っている。銀行口座はないけど、携帯でいわゆる身元、お金の口座がつくれているとか、そういうことが起きてきているわけで。そうすると、ヤマトや佐川のような配達業者さんはまだ成長していないけど、ゴジェックやウーバーのようなバイクの配達をするような産業がもうそこに生まれているということだったりとか。あと、見た目はとてつもなく伝統的なのに、中はデジタル化が進んでいて、すでに注文がオンラインで行われていて、キャッシュレスでピッてお客さんが買えるような状態になっているというのがこれASEANで、特に伝統小売の近代化が昨今は著しく進んでいっているんですよね。基本的にはお客さんがピッてやって携帯で商品を買えるし。今までメーカーや問屋にとって伝統小売に商品を売って現金で回収するとかってものすごい大変だったんですよね。基本的には伝統小売の人たちが周りの伝統小売の仲間の注文をまとめて仕入れに行ったりとかするんですけど、そういうことが全部デジタル化すると、瞬時に終わっていくわけですよね。デジタルで頼んでくれるんだったら、現金の回収とかっていう手間がなくなるので、コストを安くできたりするわけですよね。こういう新しいデジタルの技術で、進化で、どんどん伝統小売も変わっていっているので、これはますます伝統小売ってなくならない方向に僕はなっているんだというふうに思うので。

すべての伝統小売が近代化するかと言うと、いわゆる今までの議論は「近代小売に食われてしまって伝統小売はなくなるんじゃないの?」という議論だったんですけどね、そうじゃなくて、伝統小売が単体でデジタル化して近代化していくので、このコンビニよりもさらにマイクロリテールというふうに呼んだらいいのか、コンビニよりもさらに便利なわけですよ。コンビニって50mおきとか100mおき。でも、伝統小売って家を出たらすぐ目の前にあるわけですよね。だから、ものすごいマイクロリテールみたいなものが、よりコンビニよりも便利になるようなものがね。なので、そういう世界においてはコンビニが問屋の機能しか担わなくなるかもしれないし、とにかく伝統小売というのはデジタル化によって生き延びますよと。そうしたときに、日本の消費財メーカーは伝統小売の攻略がこれだけ遅れていて、それが近代小売をするのをずっと待っていても近代化しない、彼らは彼ら独自の近代化をしていくので、やっぱり今から伝統小売をしっかり獲るということが大変重要になりますよというお話です。

4回にわたって非常に長くなっちゃいましたけども、今日もこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。