第325回 適切なディストリビューターの選び方
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「適切なディストリビューターの選び方」ということでお話をしていきたいと思います。海外展開において、このディストリビューターの選定というのは大変重要です。成功の可否の5割以上がこのディストリビューターの選定で決まると言っても過言ではないと思います。逆に、このディストリビューターの選定に失敗してしまうと、次のディストリビューターに切り替えてまた走り出すために最低でも3年以上の時間を無駄にすることになってしまいます。今日は、この「適切なディストリビューターの選定方法」について一緒に学んでいきましょう。
では、早速お話をしていきたいんですが、スライドをお願いします。ディストリビューターの選定に関してはいくつかの軸があるわけなんですが、今日は商品取り扱いカテゴリーが近い遠いという横軸ですよね、ディストリビューターが取り扱っている、今現状取り扱っている商品の品目が自分たちが売りたい品目と近いのか遠いのかという横軸、そして、もう1つはディストリビューターの規模がそもそも大きいのか小さいのか、売上がデカいのか小さいのかということの、この2軸でまず取っていくということが非常に重要で。この2軸を使った選定の方法について今日はお話をしていきたいと思うんですが。
この図を見ても、分かりやすく言うと左下、これは絶対選んじゃ駄目なところですよね。いわゆる規模が小さい上に取扱商品も遠い。極端に言うと、自分たちが50億やりたいのに、1億しか売上がないような規模、1億しか売上がなかったら50億そもそも買えませんから、ディストリビューターというのは商品を買って在庫して売るということですから、規模が小さいというのは無理ですね。商品の取扱いも自分たちは食品を売りたいのに、極端な話、「ショベルカーを売っています」みたいなね、ショベルカーを売っているディストリビューターに食品を売ることはできませんから、もう絶対選んじゃ駄目というのがこの一番左下になるわけですよね。逆に、こういうところだったら一番いいよねというのが右上になるわけですよね。グループAと書いてあるところですね。取扱商品が近いし、規模も大きいと。右上に行けば行くほど優秀であるということになるわけなんですが。現実問題、この右上が空いている、右上のディストリビューターが「空いていますよ。まだ誰とも取引していないのでお宅の商品取り扱いますよ」なんていうことはほぼないんですよね。日本企業よりも圧倒的なスピードで新興国に展開していくような先進的なグローバル企業は、もう20年も前からそういうディストリビューターを、まだ彼らが非常に力が脆弱なときから彼らを育成して一緒に育てていったという、こういう経緯がありますから、なかなかそれらの先進的なグローバル企業を裏切って日本企業と付き合うなんていうことは、なかなかしにくい。そうなってくると、もうほぼほぼこのグループAって取られているというふうに考えたほうが無難。これから出ていく企業、もしくは今付き合っているところがあまり良くないので別のところに切り替えるとなってくると、やっぱり一番いいところというのは、もう欧米の先進的な企業に取られているというふうに思ったほうがいいと思います。
そうなってくると、グループAが閉ざされた場合に、じゃあ、どうしたらいいんですかと、グループB、グループC、どうしたらいいんですかと。これはどっちもどっちで、例えば、グループBは規模は確かにグループAと同じようにデカいんだけれども、取扱品目がやっぱり異なるよねと。自分たちと違うものを取り扱っているところに自分たちの商品を売れるのかと、こういう問題が出てきます。物理的にお金はあるので50億やりたい、買い入れることはできるけども、顧客を持っていないということですね、取扱品目が小さいということは。じゃあ、グループCはどうだと。グループCは取扱い品目は同じなんだけど、規模が小さい。これはどういうことかと言うと、取扱い品目は一緒なので、顧客は近しいんだけども、まだまだそこに売っている金額が少ないので、なかなかこれも大変だなというところになるわけなんですよね。現実的にはこういう状況に陥ります。実際にディストリビューターの選定に現場のフィールドに出て選定業務をしていくと。机上でお話していると、「いや、一番右上がいいじゃないか。右上を選ぼうよ。右上に属するディストリビューターを探そうよ」という話になるなですけど、探していくと、あれあれと。本当の意味でのグループAってそんなに多くないんだなと。もう椅子取り合戦は終わっているんだなということに、フィールドに出て気付くわけなんですね。
そうしたときに、「じゃあ、どうすればいいの?」という話なんですが、私はこういうふうに…。次のスライドをお願いします。決めていて。グループAの下かグループCの上、もしくはグループAの左かグループBの右、こういったところを選ぶんですね。結局、ちょっと右のほうのグループAの下からグループCの上っていうところなんですけど、結局、大きな規模のところは取られています。でも、自分たち、先進グローバル企業に比べたら出遅れているわけですよね。まだまだ業界でもシェアが高くないのに、そんなに規模の大きなディストリビューターと付き合う必要ありますかと。規模の大きなディストリビューターに行けば行くほど、彼らは自分たちよりも重要な顧客をすでに持っている。その重要な顧客にやっぱりキーアカウントマネージャーとか、優秀なキーアカウントマネージャー、セールスマネージャーなんていうのは集中しているわけですよね。そうすると、オオカミのケツに回るのか、豚の頭を取るのかみたいな、羊の頭を取るのかみたいな話になるわけなので、まだ規模が小さいのであれば、羊の頭を取って、自分たちも羊なんだから、であれば羊の頭を取って一緒に成長していけるという、これが私がこの赤い丸で記しているAの下からCの上、こういったところを選んでいって一緒に成長していく。この20年見ていても、新興国のディストリビューターの順位なんていうのは総入れ替わりしているんですよ。20年前に大手だったところが、今も大手とは必ずしも限らないので、そういう意味では、そういったところを選んでいくということが私は一番のお勧めです。
2つ目のお勧めとしては、このグループAの左、グループBの右なんですが、ここを選ぶときは条件付きです。なぜならば、自分たちと違う品目を扱っているということは、これは先ほど例で申し上げました通り、自分たちが食品を売りたいのにショベルカーを売っているところに売らせて売れるわけがないので、Bの一番左は無理です。ただ、Bの一番右だったら、自分たちは食品を売りたいんだけども、Bの一番右は、彼らは日用品を売っているぐらいの、こういう近しいところ。売っている先はスーパーなんです、売っている先はコンビニなんです。ただ、置いてあるレーンが違うんです、日用品レーンに売っているんですと。でも、一方で、私たちは食品レーンで売りたいんですと、これぐらいの僅差だったら、オーナー社長が自分たちのディストリビューションの新たな新しい品目として食品事業に本当に投資をして立ち上げていきたいんだと、もう1つの柱としてつくっていきたいんだみたいな、強い意思がもしあるのであれば、日用品の強いところに食品をお願いして、一緒に食品の柱をつくっていくということは可能かもしれません。ただ、こういうケースって非常にレアなので、担当レベルとか部長レベルで「ああ、いいよ。食品もやりたいと思っていたからやるよ」ぐらいの話だったらやめたほうがいい。うまくいかなかったらすぐやめられちゃうので。オーナー社長が「投資をします」と、「こういうふうに中長期で考えています」ぐらいの話が引き出せるのであれば、このBの右、Aの左というのはありなのかなというふうに思います。
なので、この2つ、Cの上、Aの下を第一優先として、Aの左、Bの右を条件付きで第二候補として選ぶのが適切ではないかなというふうに思います。
今日はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。