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第327回 「会社概要」ではなく「戦略」を語る

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日は、「会社概要」ではなくて「戦略」を語るということで、アジア新興国市場でディストリビューターと初めて出会って、これからパートナーとして取引を始めていこうと考えた際にどういったことをディストリビューターに語るべきなのかというお話になります。この一番最初のファーストコンタクトでメーカーがプリンシパルが何を語るかによって、その後のお付き合いが全然変わってくるんですよね。これは、ディストリビューターとプリンシパルの、メーカーですね、プリンシパル=メーカーの力関係、パワーバランスも大きく変わってくるので、今日は、ディストリビューターと取引をする際に何をどう語ればいいのかということについて一緒に学んでいきましょう。

それではさっそくスライドをお願いしたいんですが。この番組でもお話をしてきた通り、ある一定の母集団からディストリビューターの候補をグーッと絞り込んできて、最終的に出来上がった5社なら5社、絞り込んだ5社のショートリストのディストリビューターに対して、自分たちが何者であるのか、何をしにこのディストリビューターのところに来たのかということを語っていくわけなんですけども、そのときに日本企業の多くは、理念や戦略よりも、自分たちがこの国で何を実現してそれをどういう方法で実現したいのかという理念と戦略以上に、自分たちの会社の概要を語るという傾向が大変強い。例えば、この図の通り、「自分たちの製品は高品質で日本で売れていますよ」とか、「日本の売上は何千億円あるよ」「何兆円あるよ」と。もしくは「100年の歴史があります」とか、「大手で上場していて業界では1位です」「2位です」と。「何万人の従業員がいる」とか、「世界中に拠点がある」とか、「自分たちの会社は非常に大手でクオリティの高いものをつくりますよ」ということをひたすら説明をするわけなんですよね。もちろんそういう情報は非常に重要なんだけども、これがコアであっては駄目だというお話で。

結局、ディストリビューターにしてみたら、日本の大手の企業のことはもう十分よく理解をしている。彼らとしては品質が高いということも理解をしている。ただ、その品質の高過ぎ、高い品質の商品、製品が、自分たちの国ではオーバースペックになってしまって、なかなか市場にマッチしていかないということも同時に理解をしているんですよね。

また、20年ぐらい前なら「日本企業だったらもう何でもいいよ。ウェルカムだ」というような姿勢でディストリビューターも構えてくれていましたけども、昨今、日本企業のネガティブな部分ということも彼らは十分理解をしていて、「大きな投資は苦手です。戦略はありません。ちょっとやってみてうまくいけば引き続きやるけども、駄目だったら引きますよ」というようなスタンスのメーカー、プリンシパルと一緒にディストリビューターが組んで、これは彼らにとってもリスクなわけですよね。自分たちがプリンシパルの、日本のメーカーの消費を抱えるということは、自分たちはある程度のリスクを取って事業部をつくって、メンバーを雇って、自分たちの既存顧客に商品を卸して、なんていうことをやっていく。投資をしていくわけですよね。最初からそんなにすぐに儲かりませんから、ある程度、中長期で投資をしていくということを考えたときに、戦略がないメーカー、理念が明確でないメーカー、駄目だったらすぐ腰が引けるメーカー、こういったところと付き合っていくというのは、なかなかディストリビューターにとってもリスクなので、やっぱり彼らとしては、この日本のメーカーはどういう理念のもと、どういう戦略でこの国に参入しようとしているのか、そこで何を実現したいのかということをやっぱりすごく見るんですよね。

これはなぜかと言うと、欧米の先進的なグローバル企業がみんなそうだから。彼らはしっかりとした理念があって、そこにはしっかりとした戦略がある、指標がある。それを粛々とこなしていく。そのためにパートナーに期待することがこういうもので、ああいうもので、それを一緒にやっていくんだということが明確です。なので、この図だと下の図なんですけど、会社概要とかそんなことよりも、やっぱり理念。「これは何のためにこの国に来たんですか。何をこの国で実現したいんですか。じゃあ、それを実現する方法、戦略って何なんですか」と。戦略って指標なので、その指標が明確にしっかりなっていないといけない。その目標や目的を達成するための指標をつくるということがまさに戦略ですから、この国でどんな戦略で何を一緒に実現したいのかということを明確にするということはすごく重要で。例えば、「われわれの理念はこうなんだよ」と、「この国でこういう貧困の人たちを豊かにしていきたいんだ、この商品で」とか。いろんな各社理念があると思うんですけど、「それを実現するための戦略はこうだ。われわれはこういうふうに考えている」と、「貴社には、ディストリビューターにはこういう役割を担ってほしい」、ここが明確なんですよね。「自分たちは何をします。相手のパートナーには何をしてほしい。われわれは○○を実現するためにこの国に参入したいんだ」と、「この国の貧困をなくすためにこの国に参入したいんだ。われわれの戦略はこうだ。われわれの戦略の実現性はこうなんです。貴社にはこういうことをお願いしたい。これを実行すると貴社にはこんなメリットがあるよ」ということを非常にロジカルに説明をしていくということは非常に重要で。ここが最初にあるプリンシパルか、ないプリンシパルかで、その後のディストリビューターの対応ってやっぱり大きく変わってくるんですよね。

ディストリビューターにとって、日本の大手の製造業のディストリビューターになるということは、ほぼリスクはないわけですよね。なので、取りあえずやっておくということはプラスに作用する。ただ、じゃあ、やったはいいけどうまくいかなかったら何も意味がないので、それってディストリビューターありきというか、ディストリビューターだけの問題ではなくて、メーカーとしてどういうスタンスを持っているのかということもすごく重要なので。
昔と違って、ディストリビューターは、「日本メーカーだったら何でもいいです、何でもやらせてください」というようなスタンスじゃないよということをしっかりと理解をして。しっかりとパートナーシップが結べるか、結べないかというのはこの最初の何を語っていくかと、会社概要ではなくて戦略を語るんだというところに非常に重要に左右されるということと、仮にパートナーシップが結べたとしても、やっぱりパワーバランスが全然変わってきちゃうんですよね。なので、そういう意味でもしっかりと戦略を語るということを意識してもらえたらなというふうに思います。

それでは今日の話はこれぐらいにして、また皆さん次回お会いいたしましょう。