第343回 狙う市場で成功確率は大きく変わる その3
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テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日で3回目になりますけども、狙う市場で成功確率は格段に変わるということで話をしていきたいと思います。中小企業向けの話です。この番組で中小企業の話をなかなかしてこなかったので、今ずっとシリーズで中小企業向けの話をしています。中小企業の定義ですけども、いろいろありますけども、私の言う中小企業は、売上数十億から数百億円、EBITDAでしっかりと利益が出ているということが条件になります。そうでないと、海外をやってもなかなか成果が出ないので、そういう企業を中小企業と定義しております。
狙う市場で成功確率が大きく変わるということで、前回、前々回と2回にわたり、私、すみません、最近ね、話が長くてまとまりがない話をだらだらしちゃったんですけども。今日は極力まとまりのある話をまとめてギュッとやっていきたいなというふうに思います。
選ぶ国で成功確率って本当に変わるんですよというお話が伝えたい最大のメッセージで。なぜその国を選んだんですかということを本当に考え抜くということをしないといけない、中小企業が海外に出るときは。なぜならば、経営資源が少ないんですよね。だから、中小企業であって、大企業に比べて経営資源が少ない。けど、大企業と比べて早く動けるということは、何をしないといけないかと言うと、限られた経営資源をどこに集中的に投下するのかということを判断しないといけない。これが求められるわけなんですよね。なので、大企業よりも、どこに集中させるかということを緻密に計算しないといけないし、それを大企業よりも早く判断するということが求められていて。
別に大企業と競合しているからとかっていうことではなくて、そうしないと、そもそも成功しないです。もちろん大企業がね、何百億、何千億という売上を求めているのに対して、中小企業はまず数億円、ひいては数十億円というところがおそらくターゲットだと思うので。そうすると、求めているものも違うわけですね、大企業とは。だから、大企業みたいにやり過ぎないということは非常に重要だし、大企業と同じ戦い方をする必要はまったくないんだけども、それでもやはり限られた、それでもというか、だからこそこの限られた経営資源を本当に集中的に成功確率の高い市場に投下するということは重要で。
それで言うと、ASEANの例で言うとね、タイとかマレーシア、先進的なASEAN、シンガポールで成功していないのに、いきなり最初の海外進出がベトナムですとかインドネシアですとかって言うのは、ちょっとなかなか難しいし、メコン経済圏ですと言ったら、それはもう論外になってしまうので、そこはやっぱり考えないといけないですよね。分かっていると思いますけど、これは生産としての進出ではなくて、販売としての進出の話をしていますので、そこを間違えないようにしてください。
前回お話をしたように、この図をお願いします。後進国が先進国になる仕組みです。ODAがあって、外資企業の誘致政策が起きて、そして政府と民間、商社や銀行などが最初はほとんどですけども官民のインフラ整備プロジェクトが始まって、そして4番の民間進出第1陣でインフラ事業者が出て、インフラを整えたところに5番の民間進出第2陣として自動車メーカーが入る。自動車メーカーが生産を問題なくやるようになったら、今度は6番の家電メーカーが第3陣として入って、家電メーカーが出たあとにFMCGが第4陣として7番が入って、そこで海外の企業がいっぱい来て、そこでたくさんの人たちを雇って、いろんなモノをつくって、それをその国から先進国に輸出することでその国というのは外貨を得て潤う。だから、新興国になるという、こういう仕組みなんですよね。
中国の戦略がまさにそうで、1960年代、1970年代ぐらいから、1970年代ぐらいからかな、まあまあ、早いところは結構早くからあったんだけども、80年代ぐらいから徐々に海外の企業誘致が始まって、1990年、2000年とダーッと経済成長していって今の先進国の需要が生まれていますから。こういう過程で生まれていくときに、自分たちがB2Cだったら、市場としてまだ成立していないところに出ても、そこで商売するってなかなかやっぱり難しくて。先駆者メリットを得るってどういうことかと言うと、最初に出ておけばデファクトスタンダードになるので将来莫大な利益を得られるというのが先駆者メリットなので。これ、先駆者メリットを得られるのって大企業だけなんですよね。最初は投資をしますと、ずっと10年間投資をし続けて11年目から収益を取っていくという、これは欧米の先進的なグローバル企業は投資をガーッと最初はし続けて、その国でデファクトになって、あとで利益を得るという。こんなことをやっている体力は中小企業にはないので、やっぱり今まさにそこに市場があるというところにパンと集中して投資をしないといけない。求めているリターンも別に何百億を求めていたら、何千億を求めていたら、これは先進グローバル企業のように後進国の時代から先行投資をしないといけないですけども、何億とかっていうレベル、何十億とかっていうレベルであれば、やっぱり今まさに市場があるところにピンポイントで投資をするということがすごく重要なので、国を選ぶということは必要です。
B2Bに関しては、国の先進度じゃないんですね。これは、産業集積地を選ぶということがすごく重要で。自分たちのつくっている部品やパーツや何やらは、B2Bですね、どこに産業集積が移動しているんだと、今まで日本で売っていたけども、その売っていた先の企業がどの国に移動しているんだということを考えないといけない。その産業集積地でビジネスをするということが重要だし、また、今グローバル競争の中で最終エンド製品をつくっている日本企業がどういう位置付けにいるのかということも同時に把握しないといけない。彼らがグローバル競争で負けたら、自分たちの部品をずっと日系企業に納めていたら、それって自分たちも彼らと一緒に沈んでいくということになるわけですよね。例えば、昔、三洋電機というところがありましたけども、三洋の下請けをやっていたところは、三洋がなくなってしまったときに同時になくなっているわけですよね。それこそ、日本のその他、消えていった大手の家電メーカーはたくさんありますけども、ちょっとまだ消えかかっていたり、業態変更して残っていたりとかっていうところがたくさんあるので、あまりここで社名を言うと、僕の本業に差し支えるので言いませんけども。そういうところも一緒に衰退していってしまうので、グローバルの競争の中でどの国のどのプレイヤーが勝っているか、そことどうやって取引していくかということを同時に考えていかなきゃいけないというのがB2Bなので、そこもしっかりと理解しましょうねということと。
あと、基本的には、やっぱりある程度の規模のビジネスを輸出でつくれなかったら出ちゃ駄目ですよということは大前提なので、そんなことも確か何回か前の番組でお話していると思いますので、また気になる方は見てみてください。
それでは、3回にわたってお話しましたけども、狙う市場で成功確率は変わるというお話でございました。それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。