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第359回 【Q&A】新たな国へ展開する際に何からはじめるべきか? その1

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日から何回かにわたって、番組であったり、セミナーなどで皆様からいただく質問について、お答えをしていきたいなというふうに思います。

では、早速、第1回目の質問をお願いします。スライドをお願いします。今回は、新たな国へ展開する際に何から始めていいのかよく分からないということで。「消費財メーカーです。現状、数カ国へ海外展開を行っていますが、今後新たな国へ自社の商品を販売していくことを検討しています。今まで戦略構築ということを意識しないまま海外展開をしてきており、新たな国へ参入する際の戦略と言われても、正直何をどうしていいのか分かりません。参入戦略を立てるためには、具体的に何から始めたらいいのでしょうか」ということですが。

これは、比較的規模の大きい消費財メーカーさんです、中堅、中堅ぐらいですかね。大きくはないですね、中堅ぐらいですかね。数カ国への海外展開を行っていると。特に新興国市場においては、戦略を意識しないまま今までやってきたという経緯が、特に消費財メーカーなんかは多い。どういうことかと言うと、基本的には国内の1億2,000万人という巨大な市場を支えていくということが、どのメーカーもかつて…。かつてというか、今でもなお、その名残が残っているんですけど、一番のプライオリティなわけですよね。1970年代、80年代、90年代、2000年代ぐらいまでは、ずっと国内市場がやっぱり最優先だった。

一方で、欧米という市場は1つ大きな市場としてもちろん展開はしていたんだけども、アジアを中心とした新興国みたいなところは、中国なんかがこれだけ巨大な市場になったのはここ20年の話なので、もっと言うと、ここ10年ぐらいの話なので。それまでってやっぱり新興国ってそんなに重要視していなかったと。そうなったときに、どういうことが起きていたかって言うと、新興国側のいわゆるディストリビューターとかインポーターから、「お宅の商品を私たちのところで売りたい」とかっていう声が向こうから掛かってですね。それに対して、そんなに重要視してないし、「売れるんだったら売ってみたらどう?」というようなかたちで、あまり製品を現地適合化させることもせず、日本で売っているものをそのまま、「ラベルを変えるぐらいだったら輸出してもいいですよ」ぐらいの勢いで、「値段も別に安く、市場に合わせるつもりはありませんよ」ぐらいで輸出をしていたんですね。そんな名残があって。あんまり真剣に戦略立ててやってきたかって言うと、そうじゃない。
一方で、1980年代ぐらいから、欧米の先進的なグローバル消費財メーカー。例えばですけど、P&Gとかユニリーバ、ネスレとか、そういう企業が、戦略的にASEANとかアジアを、中国・ASEANを中心としたアジア新興国をターゲットとして見るようになって。彼らはその時点で戦略をつくっていった。

一方で、日本企業というのは…。中国ですら2000年度、そうですね、よく前半ぐらいからとかって言われていますけど、結局、2010年前後ぐらいからやっぱり本腰を上げたんじゃないかなというふうに、マーケットを見ていて、実際に現地に住んでいましたし、その当時のことを思い出すと、そんな感じがします。本当にここ最近アジア新興国の非常に本気になっていると。そんな中で、今まで戦略を立てたことがないので、何からどう始めればいいのかって、当然分からない。国内で、じゃあ、何か皆さんが戦略をつくるなんていうことを経験するかって言うと、非常にやっぱり限られた人たちが、限られた部門でしかそんなことはやらないわけですよね。なぜならば、もう先人がつくり上げた販売チャネル、先人がつくり上げた小売とのコミュニケーション、顧客・消費者の信頼、こういったものの中で、先人がやってきたことをそのままやっていくというのが基本的な仕事の土台になるわけですから、何か戦略をつくってなんていうのは、プロモーション戦略をやるとか、もう少し川下の戦略をつくるみたいなところには関わるチャンスがある人もいるかもしれませんが、ほとんどの人が、1から…、0からですよね、0→1をつくるような戦略を、じゃあ、つくるかなんていうことは、あまり関わらない。だから、こういう質問が出てきて当然なんですよね。それでもって、会社が、じゃあ、戦略について長けた人間がたくさんいるかと言うとそうでもないし、何か教えてくれるかと言うとそうでもないので、こういう質問が出てくるというのは非常に理解をします。

基本的には、結論からシンプルに言うと、戦略って、「誰に、何を、どう売るか」ということを徹底的に考えるということなんですよね。そのために、自分が持ちうるリソースをどうやって配分していくかということが戦略なので、そこをどれだけ現実に合ったかたちで突き詰められるかということが大変重要です。

また私の話が長いので、今日は時間が来ちゃいましたけども、この続きを次回お話をしていきたいなというふうに思います。戦略とは、「誰に、何を、どう売るか」を徹底的に考えることであると。そして、それを実現するための限られたリソースをどう配分するかということが戦略ですので、その具体的な方法について、次回以降またお話をしていきたいなと思います。

それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。