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第365回 【Q&A】伝統小売への導入率を上げる方法 その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、前回回答途中だった続きをやりたいと思いますけども、「伝統小売への導入がなかなか進まない、どうすればいいんだ?」ということについての回答です。

スライドをお願いします。消費財メーカーですね。こういう質問でしたね。「近代小売の導入は比較的いいんだけども、伝統小売がなかなか進まない。伝統小売における導入率をどうしたらいいですか」ということで前回お話をしました。

前回お話をしたのは、伝統小売で導入率を上げるためには2つのことを改善しないといけない。1つはモノです、そして、もう1つはチャネルですということで、モノに関しては、モノそのものというよりかは梱包形態みたいなところをお話をしました。伝統小売で買う消費者というのは、何が伝統小売のメリットかと言うと、ばら売りで1個からでも買えるということはすごく重要で。なぜ1個から買えなきゃいけないのかと言うと、新興国の人たちにとって重要なのはキャッシュ・フローなんですよね。家庭用のキャッシュ・フロー。それをいかに回せるような状態にしてあげるか。そうすると、いつ使うか分からないものであったり、何カ月かけて使うようなものを、今買うということではなくて、今使える分だけを買える状態にするということはすごく重要で。そんな話を前回中心にやりました。

今回は、もう1つのチャネルのほうの話をしていきたいと思うんですけども。販売チャネル。販売チャネルを変えないといけない。これは、そもそも伝統小売に売れる販売チャネルじゃないよねという販売チャネルの企業、日本企業って非常に消費財メーカー多くて。伝統小売に売りたいのに、伝統小売にマッチしたというか、合ったチャネルになっていないというケースは非常にあります。伝統小売って、攻略するには絶対ディストリビューターを使わないといけないんですよ。ディストリビューターを使わないと伝統小売は攻略できません。これも伝統小売に向いているディストリビューターと伝統小売に向いていないディストリビューターというのがあって、基本的に日本の消費財メーカーが使っているディストリビューターというのは、近代小売にまず強いところ、ディストリビューターも近代小売に強いところってやっぱり大きいんですよね。なぜかと言うと、近代小売って非常に楽で、いわゆるチェーンストアですよ、近代小売って。セントラル物流に商品をドーンと納品すれば、あとは近代小売側で各店舗にデリバリーするわけですよね。もちろんこっちでデリバリーして、近代小売のマージンを何%減らすとかっていうこともできるんですけども、基本的にはもうドーンとセントラル物流に突っ込んでしまえば、あとは勝手に売れていく。1店舗で週販売れる数も多い。そうすると、ディストリビューターにとっては圧倒的に業務効率がいいのが近代小売。そうすると、伝統小売はあまりやりたがらないんですよね、伝統小売って。でも、小さいところは近代小売に相手にしてもらえないし、近代小売で売れるような商品も持ってないから、仕方なくサブディストリビューターとかになって伝統小売を頑張るわけです。そうなってきたときに、伝統小売の攻略にあまり会社として重きを置いていないディストリビューターと一緒に必死になって伝統小売をやっているというケースが結構あって、やっぱり伝統小売は伝統小売に向いているチャネルストラクチャーをつくらないといけないし、そもそも近代小売へのディストリビューションという利権を渡すのに伝統小売をやってもらえないということがそもそも間違っていて。

外資の先進的なグローバル企業、消費財メーカーはどうなっているのかと言うと、ちょっと図を出して説明をしたいと思いますけども。先進グローバル企業と日本企業ということで書いてますけど、基本的に伝統小売をやるということは現法があるわけですよね。現法があるのに近代小売(MT)をディストリビューター経由でやるというのはナンセンスで、何のための現法なの?何のためにそこに社員がいるの?という話なので、基本的には1社の例外もなく、先進的なグローバル企業というのは、直販は現地法人が自社の社員で直接やっています。ここで言っている先進的なグローバル消費財メーカーというのは、ユニリーバとか、ネスレとか、P&Gを指しているんですけど、それに相当するような企業ですね。これはそもそも当たり前ですよね。現地法人があるのに、なぜディストリビューターを使って近代小売をやっているんだと。だって、近代小売っていくつかしかないわけですよ。上位5社とか、多くても上位10社ですよ、1カ国ね。そこと商談をして商品を入れ込んでくるわけで、その仕事を現法ができないんだったら、現法は何をやるんだという話なので、基本的には直販しています、スーパー、コンビニ、ドラッグ。

このTT、伝統小売で中小スーパーとかグローサリー、スモールストア、これが何十万店、何百万店存在するので、ここに対してディストリビューターを使っていくわけですよね。このときも、やっぱりディストリビューター1社で全エリアを網羅するなんていうのは、もうこれは物理的に不可能なので、いかにディストリビューション・ネットワークをつくるかということがすごく重要で。1区、2区、3区、4区、5区、6区とつくっていくわけですよね。県とか地域によってディストリビューターのテリトリオーを分けて、多少境界線上で自社内競合が起きようが、やっぱりこれはしっかりつくっていくということをやっていかないといけない、ディストリビューション・ネットワーク。そうしないと、物理的に30万店とか、80万店、インドネシアの300万店なんていう伝統小売を攻略するなんていうことはできないわけですよ。だって、自分たちの専属になってくれている営業マンが一体何人いるんですか。30人います。その30人が1日あたり何店舗回りますか。20店舗回ります。20店舗回って既存のフォローと新規で考えたときに、じゃあ、1カ月に何店舗回れますか、ということを考えると、数十万店とかって獲っていくのに10年かかりますね、この人数じゃ、みたいな話になってくるので、やっぱりこれはディストリビューション・ネットワークをつくらないといけない。この左の図のようにですね。

これは、ディストリビューション・ネットワークのつくり方も、僕らはいろんな企業、先進グローバル企業を分析している中であるのが、私は勝手にP&G型とネスレ・リーバ型と呼んでいるんですけど、P&G型ってどういうのかと言うと、だいたいP&Gのモデルね、数十年前はASEANでも1カ国で数十のディストリビューターを使っていたんですよね。ただ、それをどんどん、どんどん、集約して、今では8社ぐらい、だいたい8社ぐらい。比較的規模が大きい。なぜかと言うと、P&Gって日用品なので、そんなにTTと言っても、小さいTT、われわれがT1、T2とかって呼んでいるような小さい小さいところにまで配荷する必要はないんですよね。ある程度の規模の中・大ぐらいのTTに配荷していけばいいので、基本的には8社ぐらい。

一方で、ネスレユニリーバというのは、3in1コーヒー、コーヒーですね、サシェっとに入っているようなコーヒーとか、食品なので、ものすごく住宅街の小さな小さなTTにまで入れていかないといけない。となると、やっぱり数百のディストリビューターを使っているんですよね。このディストリビューション・ネットワークがマイクロディストリビューションになっていて、100とか200を使っているわけですよね。なので、自分たちが売っているものがどういうものなのか、どれぐらいきめ細かいTTに配荷していかなきゃいけないのかということで、このディストリビューション・ネットワークも変えていくわけなんですけども。

一方で日系企業、右の図ですけども、現地法人があるにもかかわらず、MTはディストリビューター経由、このディストリビューターがTTは全然不向きです、ケイパビリティを持っていませんということでなかなかTTが進まない。じゃあ、日系の現地法人は何をやっているの?と、まだ規模も小さいし、マーケティングに特化していますという、こういうケースは結構多々見られるので、基本的にはちょっとあまりよろしくない状態に、ストラクチャーになっているので。そもそもストラクチャーが悪いのに、TTを攻略しようなんていうのは無理な話なので、そこをしっかり組んでいかないといけないということで。

ちょっと時間が来てしまったので、今日はこれぐらいにしたいと思います。それではまた皆さん、次回お会いいたしましょう。