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第372回 【Q&A】伝統小売が近代化してから出るではだめか? その3

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、前回に引き続き、「伝統小売が近代化するまで待ってから参入するではダメですか?」という、消費財メーカーからの質問についてお答えをしていきたいと思います。

スライドをお願いします。このスライドですね。ちょっと前回までの流れを整理すると、伝統小売の攻略に日本企業は苦しんでいますと。そんな中で、やっぱりASEAN、特にVIPを中心に伝統小売というのは非常にウエイトが高い、8割ぐらいが伝統小売。これがインドとかアフリカなんかに行くと、もう伝統小売と比率というのはもっともっと高い。そんな中で日本の消費財メーカーはやっぱりなかなか伝統小売の攻略に苦しんでいるので、「伝統小売が結局は近代化するんだから、近代化してから攻め行っちゃダメなのか?」ということですね。それに対して私の答えはノーですよと。それには2つの理由がありますよという話をして。その1つ目の理由を説明したところで前回終わってしまったんですけども。

1つ目の理由は、伝統小売が仮に近代化するとしたら、その時間軸というものが5年10年のスパンじゃないですよと。数十年のスパンなので、数十年経ったあとに、さあ、近代化になったと。「ほぼほぼ近代化したので出よう」と言って、日本企業が出ても、そんな数十年後に出てきていたら、その市場ってもう完全に出来上がっちゃっているので相手にされないですよと。もしくは、日本の国内の市場も、30年後、アジアの企業、欧米の先進的なグローバル企業がもっともっと攻め入ってきたら、そもそも日本企業は存在していないメーカーも出てくるかもしれない。そんな中で、待っていたら、結局、攻め入られて自分たちの体力はもっともっと小さくなっているし、近代化してから、「さあ、僕たち来ましたよ」と言っても、市場にまず相手にされない状況にまで陥ってしまうので、小売が近代化してから出るというのでは遅過ぎますよというお話をしました。

じゃあ、なぜ森辺はその数十年、伝統小売が近代化するのにかかるんだという、そこのお話もしたと思うんですけども、それに関しては、小売というのは小売単体で近代化するのではなくて、あらゆるインフラ、特に物流、それからシステム、水、水道、ガス、電気などのあらゆるインフラが近代化して初めてそこに乗っている小売も同時に近代化できる。日本の小売がなぜ近代化したかと言ったら、まさにそういうことですよね。日本というのは、北海道から沖縄まで津々浦々、あらゆるインフラが近代化、同時並行的に近代化していったので、そしてまたアメリカから輸入されたコンビニ形態というものが非常に日本の国民性にマッチして、一気に小売が近代化したという、そういう背景があって。じゃあ、これをASEANに、今のASEANに照らし合わせたときに、残念ながら、まだまだやっぱりASEANのGDPの成長率、非常に高いんですよ、成長率とか見ていても、国の税収、そして、その税収からインフラ事業に振り当てられる金額や比率を見ても、日本のように急激に、じゃあ、すべてのインフラが近代化できるかと言うと、そうではない。そうだとすると、やっぱり小売の近代化というのも遅れますよねというのが1つ目の理由です。

2つ目の理由が、これが非常にトレンディというか、面白い理由なんですけども。私も、小売、伝統小売は近代化していくだろうと思っています。実際に近代化、最終的には日本みたいに、日本にもうほとんど駄菓子屋がなくなっちゃいましたよね。日本も昔は伝統小売だらけだったけど、それがなくなったと。そういう世界になるんじゃないかというふうにずっと言われてきたし、私もそう思っていたんですが。最近やっぱり、伝統小売の数は確かに減るんだけども、減るは減るんだけども、デジタル化によって確実に生き延びる、ある一定の割合で伝統小売は生き延びていくだろうなということを非常に強く感じています。もしかすると、コンビニが伝統小売に入れ替わってしまうかもしれない。そうすると、実は伝統小売がデジタル武装化したことによって、小さな伝統小売がもっときれいになって、表向きはフィジカルなんだけども、中身は非常にデジタルなものに生まれ変わっていく。新たな形態、小売形態として、ASEANや新興国では劇的に伸びていくんじゃないかなという気がしています。なぜならば、伝統小売って、コンビニよりも圧倒的に便利なんですよね。コンビニというのは50m、100mおきにしかない。数百mおきにしかないのが、伝統小売って数十mとか数mおきにあるわけですよね。これってやっぱり生活している人たちにとってみると、もう圧倒的に便利で。

この伝統小売が最近デジタル化している。まず、消費者がQRコードで、携帯、スマホでモノが買えるというのはもちろんなんだけども、問屋さんとスマホでつながっていて、今までって問屋さんが商品を持ってきて、そこで代金を現金で回収して、もしくは伝統小売50店舗を束ねるような、インドネシアではグロシールとかって言われていますけども、そういった地域一番店みたいな人たちが、その伝統小売を束ねて、そこに問屋の機能も提供していたりなんていう、そういう構造があったんですけども。全部がオンラインで提供できるようになると。そうすると、日本ではなかなか規制があってね、Uberが流行っていませんけど、向こうだとバイクの、Uberは撤退していて、ゴジェックともう1つあるんですけど、そういったものが、いわゆる日本で言うところのヤマトの機能、配送の機能とかを担っていくということになれば、これ、日本では想像ができなかった新しい形態の流通が出来上がるわけですよね。だって、別にヤマトや佐川をゴジェックとかグラブが担えば、別に配達できちゃうわけなので。なので、もしかすると、伝統小売が近代化することによって、伝統小売は生き延びるんじゃないかなと。むしろ、伝統小売の利便性がコンビニよりももっと利便性が高い。コンビニが、もしかすると問屋の機能を果たす、地域の問屋の機能を果たしていく。そういう新しい小売流通形態が出来上がるんじゃないかなという断片が、今、新興国で徐々に見えてきてて。特にこのコロナ禍になってデジタル化が一気に進むと、この伝統小売のデジタル化もやっぱりものすごく進んだんですよね。なので、ちょっと今後、今までわれわれが信じていた伝統小売の最終的な淘汰の姿というのは、実はそんなことはまったくなくて、伝統小売がデジタル武装することで、より新しい世界というのがその向こうに広がっているのかもしれないなと。

そういうことを加味していくと、今、伝統小売をやらないなんていう理由はどこにもなくて、結局もう遅過ぎるというぐらい、やっぱり伝統小売逃げてきた、中間層から逃げてきた、プレミアム戦略にしがいついてきたというのが日本の消費財メーカーで。家電で置きたことは対岸の火事ではなくて、今、本当にASEANの伝統小売に正面からぶつかって、中間層に正面からぶつかるということをやらないと、本当にアジアの市場からも淘汰をされてしまう。

これ、ASEANで伝統小売にしっかり正面からぶつかっていって、そこで勝ち得たノウハウって、今度、メコン経済圏でも使えるし、インドでも使えるし、アフリカでも使えるので、向こう50年とかっていう時間軸の中の、その稼ぐエンジンになるんですよね、このノウハウって。だから、一刻も早くプレミアム戦略一辺倒ではなくて、この伝統小売の攻略、中間層というところに日本の消費財メーカーも正面からぶつかってもらえたらなというふうに思います。

それでは、以上になります。また次回お会いいたしましょう。