HOME » 動画番組 スパイダー・チャンネル » 第401回【本の解説】海外事業の立ち上げは第二創業と同じ

動画番組 スパイダー・チャンネル

第401回【本の解説】海外事業の立ち上げは第二創業と同じ

新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、私が昨年出したこの本、『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社について解説をしていきたいと思います。今日なんですけど、34ページの「1-7 海外事業の立ち上げは第二創業と同じである」ということについてお話をしていきたいなというふうに思うんですが。

特にこの欧米の市場への海外進出というよりかは、アジア新興国市場に向けての展開が第二創業と同じであるということを私は申し上げていて、新興国市場に展開をする際に、それを担う個人が求められる能力というものが日本国内で必要とされる能力とはまったく違うということについてお話をしていきたいのですが。まず、日本国内で求められる能力って、もうすでに出来上がったもの、例えば、100とか200とかあるものを、どうやって300、400にしていくか、もしくは500、1000にしていくかという、こういう能力が求められるわけですよね。一方で新興国市場というのは、いかに0から1を生み出すかに近いところの能力が求められる。これ、0.5から1を生み出したりとか、1を2にする、2を3にするという、これは非常に難しい能力で、すでに何百もあるものをさらに何百にしていくということよりも、だいぶ大変の度合いが違う。

これってどういうことなのかと言うと、ちょっとスライドをお願いしたいんですが…。まさにこういうことで、日本国内でビジネスをするというのは、私も、これ、新興国市場に私がこの会社の前身になる会社を立ち上げたのが26歳のときだったと思うんですけど、中国の深圳市というところで最初立ち上げたわけなんですけど。その前までは日本の大手の製造業で会社員をしていて、そのときに本当に実感したのが、日本国内でのビジネスと海外でのビジネスってまったく違っていて、このスライドの通り、日本国内でのビジネスって知名度もあるわけですね、会社の知名度もあると。名刺にロゴがついているわけですよね。大手に勤めていたらその知名度をだいたいの会社の人は知っていますから、その知名度である程度判断されているというのがものすごく大きくて、これがどれだけ仕事にとってやりやすいことかということが、本当に0→1をやるときには思い知らされるわけですけども。消費者の支持もあるわけですよね。だって、もう、実績があるんですもん。何十年って売っているわけですから、消費者の支持もあるし、B2C、FMCGだったら小売の信頼もあるわけですよね。もう何十年ってお宅の商品を取り扱っているし有名な会社だしと、販売チャネルもすでに出来上がっているので、何か新しく新規でどうのこうのというのはほとんどないわけですよね。何かキャンペーン的なものはあったとしても、基本的にはある。ノウハウもある。先輩から引き継がれていくわけですよね。前の担当者から引き継がれていく。オペレーションもあるわけですね。なので、すべてがあるある尽くしということで、現状の100とか200をどうやって300、400にするんだという能力がここでは求められる。

一方で、じゃあ、海外ビジネス、特にアジア新興国でのビジネスってどういうことかと言うと、知名度も、消費者の支持も、小売の信頼も、販売チャネルも、ノウハウも、オペレーションも、日本に比べたらないない尽くしなわけですよね。この状態で0から1をつくるという能力が本当に重要で、これってやっぱり日本の感覚でそのまま駐在して事業をしても、日本ってもう、これは言われて初めて気付くんですけど、こういったことがお膳立てされているので自分が仕事ができるような状態になっているわけなんですよね。そこの中でどう仕事をやっていくかという。
ただ、一方で、何のお膳立てもない中で仕事をするって、これはもうまったく環境が違っていて、ここが新興国ビジネスの本当に難しいところで。このときに必要なのって、残念ながら過去の経験がまったく役に立たないとは申し上げないんですけど、ある一定期間、日本での経験値がじゃまをするんですよね。0→1で考えなきゃいけないときに、日本ではこうだったから、自分の経験値は日本でしかないのに日本ではこうだと。先進国にいた経験があった。じゃあ、先進国ではこうだった。でも、そうじゃなくて、新興国、アジア新興国の現場ではこうだという、目の前のファクトを捉えるということはすごく重要で、まったくもって日本での経験値が役に立たない。どういうふうにするかと言うと、一旦過去の経験値を捨てるということは重要なんですけど、0リセットをするという、マインドセットを新たに持つということはすごく重要で。

私の友人でもあるタシュミヤ・イスマイルさんという方、もともと米倉誠一郎先生の紹介で知り合ったんですけど、南アフリカのプレトリア大学で一時期は授業をしていて、彼女自信もインクルーシブビジネスの会社の社長なんですけど、その方の著書で『New Markets, New Mindsets』という本があるんですね、英語の本なんですけど。これって何を言っているかと言うと、新しいマーケットなんですよね、新興国市場のマーケット。そういうマーケットに先進国の企業が入るときというのは、新しいマインドセットを持って入らないと、0から1なんて生めないですよと。国内市場で0から1を生んできたのと言ったら、もう何十年も前なんですよね。戦後ですよね。70年前なわけですよね。もしくは戦前なわけですよね。そうすると、今まさに成長著しい新興国市場で新しいものを価値を生んでいこうと思うと、マインドセットを新たにしていかないとなかなか生めませんよという、そんなお話なので。機会があったらぜひ読んでいただきたいんですけど。

でも、私がここで何を申し上げたいかと言うと、あるある尽くしで仕事をしてきた日本のマインドセットで新興国市場で仕事をしても、これはやっぱりうまくいかないし、最終的には愚痴になってしまうので。新しいマインドセットをどうやって持つかということはものすごく重要で。このマインドセットさえ持てれば、日本のビジネスマンは優秀なので、またそこから新しいやり方を身に付けて、どんどん、どんどん、実績を築いていくということができると思います。この最初のからくり、ここだけをしっかりとクリアしていけば、きっと新しい事業がつくれると思うので、ぜひ皆さん、この『New Markets, New Mindsets』という言葉を覚えておいていただければなというふうに思います。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。