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第430回 【本の解説】日本企業のチャネル・ストラクチャーとの違い

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日はね、102ページの「2-9 日本企業のチャネル・ストラクチャーとの違い」ということで、先進的なグローバル企業と言われるP&Gとか、ユニリーバ、ネスレと、日本の商材メーカー、大手の消費財メーカーのチャネル・ストラクチャーの違いがどこにあるのかということをお話をしていきたいなというふうに思うんですが。やっぱりシェアが全然高いんですよね。先進的なグローバル消費財メーカーというのは、基本的には数十%の単位でシェアを持っていて、ASEAN市場に関しては1980年代からもう確実な重要なマーケットとして捉えて進出をしていたし、非常に先駆者的な位置付けであると。一方で、日本の大手の消費財メーカーも、今、頑張ってはいるものの、なかなかシェア争いに参加できているプレイヤーというのは限られていて。もちろん先進グローバル企業並みの素晴らしいチャネルを持っている日本の大手の消費財メーカーもいます。国によってはよかったりとか。特にユニ・チャームなんかも網羅的に良いですし、味の素とかですね。個別にいい企業も当然いるんだけども。やっぱりまだまだ大半はそうじゃないという。それがどういうふうに違うのかということを今日はスライドで説明をしていきたいと思うんですが…。

スライドをお願いします。この図が、左が先進グローバルのチャネルのストラクチャーで、右側が日本企業ということなんですが。基本的には現法があるケースの解説です。なぜならば、TTも含めての話なので。これね、極端に分かりやすく例を言ってるので、ここまで日本企業はひどくなかったりもするので。まあまあ、ひどい企業もあるんですけど。そんなふうに聞いてもらえたらいいと思うんですけどね。先進のグローバルな企業って、基本的にMTは直接自分たちの現地法人が交渉するんですね。商談しているんですよね。スーパー、コンビニ、ドラッグなんていうのは、基本的にはセントラル物流に商品をドーンと納入すれば、それで各店舗にバーッと行くようになっているし、本部商談をメーカー自身がやって、どれだけ小売とコミュニケーションをして関係づくりをやって、自分たちと小売との、いろんなキャンペーンであったり、施策をそこで展開できるかということが肝になってくるので、それをディストリビューターに任せるなんていうことは、基本的には先進グローバルはやらない。そこはもう自分たちがやると。日本でもそうですよね。問屋さんに、イオンと何か施策をするのに全部問屋さん任せなんていうことはやらなくて。配荷であったり、商流は問屋を通したとしても、メーカー自身がやっぱり小売とコミュニケーションを取るというのが一般的だと思うのですが。海外でも当然先進グローバル企業はそうやっていますよと。

じゃあ、ディストリビューターに何をやらせているかと言うと、TT、手間のかかるTTをやらせているわけなんですよね。しかも、それも1社ではなくて、基本的にはディストリビューション・ネットワークをつくるということに彼らは神経を尖らせていて。例えば、フィリピンならフィリピン全体を見たときに、大きく分けて3島に分かれるわけですね。フィリピンというのは上・中・下と。そうすると、その3島にどういうふうなディストリビューション・ネットワークを組むと、自分たちがはくべきTT80万店に到達するのか、80万店のうち、半分の、じゃあ、40万店に到達できるんだ、ということをベースにチャネルをデザインして、ストラクチャーをつくっているわけなんですよね。だから、ネットワーク化されていくという。そして、中小スーパーとかグローサリー、スモールストアなんかに入っていけるというのが構造としてあると。

じゃあ、一方で日本企業はどうかと言うと、基本的に1カ国1ディストリビューター制みたいな話になってしまっていて、このディストリビューターも、基本的には「私たちはMTに強いです。MTをやりたいんです。なぜならば効率が良いから」ということで、現法があるのにMTに配荷をしていると。じゃあ、日本の現法、日本企業の現地法人は何をやっているの?と言うと、「自分たちはマーケティングをしています。マーケティング施策を考えているんです」という、聞こえは一見いいんですけども、あんまりな状態になってしまっていて、なかなかTTの戦略がつくりきれてない。そもそも、このディストリビューター、TTは配荷するルートを持っていないので配荷できないと。TTに配荷したいのに、MTに強いディストリビューターと組んでいたりとか、「いや、うちもTT、3万店ぐらい配荷できるよ。やっているよ」と言いながら、実はあまり強くなかったりとかっていうことはあるので。

なぜこういう状況が起きてしまうかと言うと、日本のこういうシェアの低い企業とね、先進的なグローバル消費財メーカーの一番の大きな違いは、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」ということを最優先にしているんですよね。自分たちの商品はどの店に売りたいんだっけと、どのMT、どのTTということが明確なので、じゃあ、「誰と売るか」という、いわゆる、つまりはディストリビューターも、そこに売れる人たちと売るということなんですよね。日本企業の場合は、まず「誰と売るか」、大手のディストリビューターを捕まえようと、そこに委ねれば安心なんだという性善説で進んでいくんですけど。実は、ディストリビューターにもディストリビューターの思惑があって、「MTやりたいよ。TTやりたくないよ」とか、そういういろんな複雑な思惑があるので、必ずしも利害が一致するということにはならないと。それで、TTの参入が遅れるというケースも多々あるので。

重要なのは、こういうふうなストラクチャーにならないためには、「誰と売るか」よりも「誰に売るか」というターゲットを明確にするということをまず明確にする。そのターゲットに売れるやつが「誰と売るか」の「誰」になるわけで。「ここに売りたい」と言っても、みんな、「私たちは良いリレーションを持っている」と、何だかんだ言うんですけど、そこを見極めていくというのが本来やるべきことなので。「誰と組むか」よりも「誰に売るか」ということを優先するということが重要だというお話でございました。

それでは今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。