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第432回 【本の解説】近代小売と伝統小売の密接な関係 その1

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、2-11、107ページです。「近代小売と伝統小売の密接な関係」ということでお話をしていきたいなというふうに思うのですが。特に今日ね、フィリピンの近代小売と伝統小売の関係というのが非常に面白いので、そこの話に最終的にはなってくるかなというふうに思います。

まず、ちょっとね、スライドを見てもらって、近代小売と伝統小売の整理ですけども、皆さんもうこの番組を見ているマニアックな方々は、近代小売と伝統小売のことはよく分かっていると思いますが。この図の通り、近代小売というのはModern Trade(MT)というふうに言われていて、デパート、ハイパー、スーパー、コンビニ、その他近代的な小売ですと。うちの会社の定義ではPOSレジが入っているかどうかという。だいたいPOSレジが入っていると、この写真のような見た目になるので、そんなふうにしていると。MTと。伝統小売というのがTraditional Trade(TT)というふうに言われていて、国によってはGTというふうに、General Tradeということで言う場合もありますけども。GT、TTですよね。でね、稀にGeneralが近代寄りになっているような人もいるんだけども、まあまあ、だいたい伝統小売のことを言いますと。昔ながらのパパママショップですよね、こういう見た目の。ASEANに行くといっぱいありますよね。新興国に行くと必ずあるというのがこの伝統小売。危険、治安の悪い伝統小売というのは、必ず鉄格子でお金を払うところというか、キャッシャーみたいなところは鉄格子にいるので、店の人はいわゆる鉄格子の中にいるんですよね。お金を扱うところは鉄格子の中。それでだいたいその国の治安が分かるんですけど、網みたいなね、なんとか引っ張ってガリガリ押したりすれば取れちゃいそうな網ぐらい、フィリピンぐらいはそれぐらいの危険度かなと。南アフリカとかなんかへ行くと完全なる鉄格子で、こういうTTのショップが古くなったコンテナみたいなね、コンテナって鉄でできていますから、コンテナの扉を開けたところに鉄格子になって、その中がショップみたいになっていたりとか、そんなになっているので、世界で1位とか2位とか危険だと言われている国ですから。あまりそんな危険な目に遭ったことはないですけどね、何回か行ってますけど。南アフリカとかアフリカに行くとそういう感じのものが見えると。

じゃあ、この近代小売と伝統小売ってどれぐらいの比率であるの?ということなんですが、だいたいSMT、シンガポール、マレーシア、タイ。シンガポールはもう100%近代というふうに思ってもらったらいいと思います。淡路島ぐらいの面積であれだけ近代化しているので、もう100%ですと。SMTのMTね、マレーシア、タイ。MTに関しては、だいたい5割ぐらいが、この図でも4割5割が近代小売化していますよと。

一方で、課題なのがやっぱりそれぞれ人口が1億弱、強のフィリピン、それからベトナムですよね。そして、3億弱のインドネシアということで、億超えの人口で今最も熱いというか、今後最も成長が著しいと予測されているVIP、ベトナム、インドネシア、フィリピンに関しては、だいたい8割以上はまだ伝統小売の市場ですよというふうに捉えてもらったらよろしいと思います。これ、8割というのは何を言っているかと言うと、金額ベースですね。小売を通じて売り上げられる金額の8割がだいたい伝統小売系ですよと。一方で、近代小売というのは金額ベースでまだ2割ぐらいしかないですよと。これを店舗ベースにしたら、もう本当に近代小売の店数なんていうのは1%にも満たないぐらいなので。例えば、ベトナムの近代小売って8,000店舗ぐらいなんですよね。一方で、伝統小売って65万店以上あるし、フィリピンだって80万店伝統小売があるわけですよ。それに対して近代小売というのはやっぱり8,000店舗ぐらいなので。インドネシアが最も近代小売が多いんですけど、ASEANの中で、これで3万5,000、6,000…、7,000ぐらいいっているのかな、今。ただ、一方で伝統小売はもう300万店以上というふうに言われていますし、これはインドとかへ行ったらね、もっともっとなので、1,000万店とかっていう、そういうレベルなので。伝統小売というのが非常に重要ですよと。

この伝統小売と近代小売って実は非常に重要な相関関係にあって、伝統小売というのは何が売られるのかと言うと、基本的には近代小売で売っているものしか売っていないんですね。もっと言うと、近代小売で売れ筋になっているものしか、伝統小売のオーナーは取り扱わないという傾向があるので、市場に参入するときに、いかに近代小売で売れ筋になるかということはすごく重要で。その売れ筋になっているから、伝統小売のオーナーは「じゃあ、これを買おう」「あれを買おう」と、売れ筋になっているものをより小分けにして、10個入りで近代小売で売っているものをバラして1個から売るというのがこの伝統小売なんですよね。だから、メーカー側からすると、近代小売でまず10個入りで売れ筋になったものを1個売りのパッケージに変えて伝統小売で売るというのが、まさにそういうことで。近代小売でサシェットのコーヒーを1個ずつなんて売ってないわけですよね。基本的には、今、スティック型のサシェットみたいな、スティック型のものが10個とか束になってスリーワンコーヒーが売っていて。それを彼らは、ネスレは、伝統小売向けに1個から売れるようにしていると、そういうことなので。基本的には近代小売で売れるということは必須ですと。そこで売れても、近代小売というのは、やっぱり導入費というのが掛かるわけですよね。棚代も1SKUあたり何千円と掛かりますから、日本円でね。そうすると、それなりの金額になっちゃうわけですよね、何百万とか何千万になる。半強制的なプロモーションへの参加依頼もあるし。そうすると、8,000店舗とかそういうレベルの近代小売の数だとなかなか儲からないので、伝統小売でも売って初めて利益が出ると。

インドネシアのディストリビューターとかメーカーもみんな言ってますけど、「インドネシアで伝統小売をやらなかったら絶対に儲からない」と。3万7,000店舗の近代小売をやったって、「300万店の伝統小売をやらなきゃ儲からない」と彼らは行ってますから。実際にそうなんですよ。もっと分解していくと、3万7,000店舗のうちの3万数千店はアルファマートとインドマレットというローカル系の2つのコンビニで。それがそれだけ店舗数を牛耳っているということは、そこの小売と交渉することって本当に大変で。彼らの交渉力の強さというのは、たぶん分かりますよね。3万7,000店のうちの3万2,000店が彼ら。そうすると、高い棚代、導入費みたいのが掛かってくるわけなので、残る5,000店舗しか、近代小売は実質なかったりするわけですよね。あれだけ何個も島に分かれていて、一方で300万店の伝統小売があると言うと、やっぱり伝統小売を獲らないといけない。こんな相関関係になっているので、近代小売を先にやるというのはマストです。ただ、日本企業の課題は、近代小売を先にやるというところへの課題感もあるんだけどもね。近代小売をやると言っても、輸入品棚に載せたってあまり意味がなくて、メインの棚でどれだけ勝負できるかということがすごく重要になるので。

ただ、そこもまだまだ課題が残る中、伝統小売にやっぱりまったく手が出ないというのがVIPでは多く見られる。一部の企業しかうまくいっていない。ユニ・チャームとか、味の素とか、そういう一部の非常に限られるというのがやっぱりあるので。これはチャネルを中心にいろんなことを変えていかないといけないので、それはまた別の回でも話していると思いますけども、そんな課題があると。ただ、いずれにしろ、近代小売と伝統小売というのはどういう相関関係にありますよというのが今日の話で。

だいぶ、ちょっとすみません。時間も経っちゃったので、フィリピンの話に入っていくというふうに冒頭言いましたけども、それはまた次回ちょっとお話をしたいなというふうに思います。今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。