第434回 【本の解説】マーケットインとプロダクトアウトの絶妙なバランス
新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/
テキスト版
森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺一樹です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が去年出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。今日は2-12、110ページですね、「マーケットインとプロダクトアウトの絶妙なバランス」ということでお話をしていきたいなと思います。プロダクトアウトとマーケットインの話をするときに、多くの場合、プロダクトアウトというのは悪くて、マーケットインにならなければならないんだという、こういう議論が日本だと主にされているように見受けられます。プロダクトアウトって、どちらかと言うと、メーカー主導で考えて生産うぃたものを市場に押し付けるという、メーカーの良いと思ったものを市場に販売していくというのがプロダクトアウトで。一方でマーケットインというのは、市場の声を聞き入れて、開発をして、そしてその商品をマーケットに展開をするというものなので。プロダクトアウトというのはよくなくて、マーケットインにならなければいけないんだという、こんな議論をされるわけなんですけど。これって実はそうではなくて、プロダクトアウトもマーケットインも両方重要で、この2つの絶妙なバランスがものすごく重要ですよと。特に新興国市場、ASEAN、インド、南米、アフリカ、こういった新興国市場においては、まだモノが十分に満たされていない。そんな中ではマーケットインだけだとなかなか答えが出てこないんですよね。消費者自体が何を欲しているのか分からないし、そのインサイトを覗こうとしても、もともとの道、溢れたものが少ないので、インサイトがなかなか見えにくかったりする。なので、マーケットインという概念も非常に重要だし、プロダクトアウトという概念も両方重要であるということを今日はちょっとお話をしていきたいなというふうに思っています。
ちょっとスライドを見てもらいましょうかね。スライドをお願いします。プロダクトアウトとマーケットインが一体何なのかという、定義の整理を1回しておいたほうがいいかなと思うので、ちょっと定義のお話をすると、プロダクトアウトというのはメーカー観点で商品の開発、生産、販売をすることで、この図の通り、メーカーが考えたものを消費者に展開していくと。企業が商品開発や生産を行う上で、企業側の理念、理論を優先させる方法、企業側がいいと思ったものを生産して販売していくということですよね。一方でマーケットイン、2番目のやつですね。2番目のやつは、消費者が何を求めているかをベースに消費者観点の商品を開発、生産、販売すること。マーケットインとは市場ニーズを優先し、顧客視点で商品開発や生産を行い、販売していくことですよと。これ、普通に聞くと、プロダクトアウトはよくないなと、ひとりよがりのI want youじゃないかと。マーケットインというのは市場の声を聞いて、消費者の声を聞いて開発するのでこっちのほうがいいなということなんですけど。
日本でも、消費者の声を聞いて、そのとおりのものをつくって、じゃあ、それを買うかと言うと、買わなかったりするということは往々にしてあるんですよね。だから、インサイトという言葉があって。本当に彼らが潜在意識の中でこう思っているニーズを探りだしていくということがすごい重要で。ストレートに「何が欲しいですか?」「こういうものが欲しいです」、それをつくって市場に出したら「買いません」みたいなことになるので。彼らに何が欲しいのか聞くのではなくて、彼らの潜在意識の中に眠っているニーズを探りだしていくという、インサイトを知るということがすごく重要になってきて。それにもとづいて商品展開をしたりするわけなんですけど。
結局、重要なのって7~8割がたのマーケットインで、おおよそのインサイトが見えたら、あとはもうメーカー主導のプロダクトアウトでそれを市場に突っ込んでいくというか、チャネルの力とプロモーションの力で市場に認めさせていく、認知させていくということが実はすごく重要で。この図の最後のところもそうなんですけど、プロダクトアウトとマーケットインと、なかったものの具現化、消費者が何を求めているのかというものは7~8割がた聞くんですけど、結局、消費者に何を求めさせるのかというこのプロダクトアウトの、自分たちはこういうものをいいと思っているんだと、それを市場に展開をして、消費者がそれに翻弄されて、酔いしれてそれを求めていくという、そういう要素も2~3割やっぱり残ってないと商品というのは売れなくて。
AppleのiPhoneなんかまさにそうですよね。別にスマートフォンが出たときにね、今までボタンでパカパカの携帯、ガラケー使っていたのを、いきなりあんなものを出していって、結構、出始めたときは、多くの人が「こんなもの売れない」と言ったわけですよね。だって、ボタンがないんですから、今までの感覚とまったく違うと。それを、じゃあ、「iPhone、こんなものを出したいんですけどどうですか」と市場に聞いても、そんなの答えも返ってこないわけですよね。でも、ある程度インサイトを探りながら、「これはいける」と。そして、「これがこれからの携帯電話なんです」「スマートフォンなんです」ってドーンと出していったというところがプロダクトアウトで。それでこれだけ広まっていったわけですよね、スマートフォンなんかは。だから、消費者の意見を素直に聞くということはそもそももう間違っていて、彼らの潜在意識の中のインサイトが何なのかということを探る。それが7~8割がた握れたら、もうあとはプロダクトアウトで徹底的に押し込んでいくと。
このときに押し込むってどういうことかと言うと、この図の通り、チャネルとプロモーションのカバレッジなんですよね。どれだけ広いチャネルをカバレッジできるか。一気にチャネルでカバレッジをして、消費者の手に届けないといけないので、物理的なチャネルのカバレッジと、あと、徹底的に認知させるためのプロモーションというのが必要になってくるということで。このプロダクトアウトとマーケットインというのは、プロダクトアウトが悪でマーケットインが善だということではなくて、両方とも必要だと、両方とも重要だと。そして、マーケットインで7~8割がたいけると判断ができるのであれば、もうあとの2~3割はプロダクトアウトの力で押し込んでいくということが大変重要ですよというお話でございます。特にASEAN市場はその傾向が強いですよと、新興国市場はその傾向が強いですよというお話でした。
それでは今日はこれぐらいにして、また皆さん、次回お会いいたしましょう。