HOME » 動画番組 スパイダー・チャンネル » 第445回 「基準値」を持つことの重要性 その3

動画番組 スパイダー・チャンネル

第445回 「基準値」を持つことの重要性 その3

新刊はこちら » https://www.amazon.co.jp/dp/449565019X
定期セミナーはこちら » https://spydergrp.com/seminars/

テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も前回に引き続き、「「基準値」を持つことの重要性 その3」ということでお話をしていきたいと思います。

じゃあ、早速、スライドをお願いします。今日はその3なんですけど、前回、前々回と「基準値」を持つことの重要性」、今日はその3か。その3でしたかね。その4かな…。その3だね。すみません。その3ですね。「基準値」を持つことの重要性」ということでお話をしてきて、「「基準値」って何ですか?」と言ったときに、「競争力のことを言っています」というふうなお話をしました。「敵の競争力、主要競合の競争力を100とした場合に、自分たちの競争力って70なの?それとも60なの?はたまた50なの?40なの?」ということを可視化をしていく。この差異を埋めることがシェアを獲るということだし、この差異を無視して対前年比、「自分たちの対前年比110%やりましょう、チャレンジ115%やりましょう」みたいなことをずっとやっていても、これは結局シェアで勝てなければ、いくら海外売上比率を上げてもいつか淘汰されてしまうので、導入期は海外売上比率を1つの指標としてカウントしてもいいですけども、やっぱりある程度いったらシェアをどれだけ上げるかということを、当然日本ではそれをやっているわけですから、ASEAN市場でもやらないといけない。

そのときに、シェアの戦いに参加するということは、競争力をどれだけ高められるかということで、特にここで言っているのは販売チャネルの面の競争力の話をしていて、スライドをお願いします。この図の通り、チャネル・ストラクチャー、どういうふうなチャネルがデザインされていて、要は物理的にこれはそれだけのシェアを獲れるチャネル・ストラクチャーになっているのか否か。ここが間違っちゃっていると、そのあとどれだけ頑張ったって間違っちゃうわけですよね。つまり1って戦略みたいなもので、2、3の組織体制がどうなっているとか、その組織体制がどういうふうにマネジメントされているなんていうのは戦術レベルの話で、この最初の戦略が間違っちゃうと、2、3の戦術でどれだけ頑張ったって、戦術で戦略は補えないので勝てませんよと。この一番最初のストラクチャー、めちゃめちゃ重要ですよという話をしていて。

でも、2番目の組織体制もすごく重要で、せっかくパーフェクトなチャネル・ストラクチャーがあるにもかかわらず、そこで動く組織が不十分な体制だったら、これはパフォーマンスは高まりませんから。確かにストラクチャーはいいので、まったくだめにはならないけど、パフォーマンスは最大化されない。その組織が良くても、その組織がどう機能しているか、どうマネジメントされているかによって、これまたパフォーマンスというのは変わってくるわけなので、やっぱりマネジメントの体制も非常に重要ですよと。1がだめだったらもうお話にならないけども、1が良くても2、3がだめだったら、これもパフォーマンスは最大化されないよというお話ですよね。

これをいかに自社と競合とを比べて、競合の競争力を100とした場合に自分たちは80なのか、70なのか、いったい何なんだと、想定よりも低かったじゃないかと、50以下じゃないかということが、結構、今の日本企業のASEAN市場の展開を見ていると、往々にしてあると。なぜならば、マーケットシェアが低いというのはここが低いから。モノが間違っているとか、これはモノのことを言う前に、まずチャネルを僕はやったほうがいいと思っていて、モノのクオリティがいいというのは分かったと。自分たちがいい、日本で実績のあるこの商品が現地に合うか合わないかという、こういう問題があるんだけども、モノを根本的に変えるということは、そもそも己を根本的に変えるという話なのでね、そういうことじゃないわけですよね。

グリコがポッキーを売っていて、ポッキーって非常に売れているわけですよ。でも、そもそもポッキーがだめなんじゃないかと、ポッキーじゃなくて、全然違う商品を持っていくというと、もうグリコのポッキーで出る意味ないじゃんという話なので、ポッキーはポッキーでいいんですよね。じゃあ、ポッキーを原材料を変えてどれだけ安くできるかとか、どれだけ味を変えて現地の嗜好に合わせることができるかとか、どれだけ入数、グラム数を減らして現地の価格に合わせられるか、こういうことを変えろと言っているので、ポッキーを変えろと言っているわけではないんですよね。

これも明治のヤンヤン、これも売れていますけども、ヤンヤンじゃなかったら明治じゃなくなっちゃうわけなので、ヤンヤンでいいわけですよね。ロッテのキシリトールも、それじゃなかったらロッテじゃなくなっちゃうわけですから、ロッテのキシリトールでいいわけで。もっと筋の一番中心の軸を変えるというのではなくて、枝葉を変えて現地適合化させていくということを言っていて。そこのプロダクトとかプライスというのは、正直しっかりと市場、消費者と対峙すれば、そこはメーカー自身で改良できるんですよね。やるかやらないか、面倒くさいか面倒くさくないかという話で、ここは消費者としっかり対峙しましょうと、現地のという話。

一方で、日本の消費財メーカーの多くは、このチャネル側の競争力が本当に至っていなくて、これは両輪で回っていくので、あと、プロモーションを入れて三輪ぐらいで回っていくわけなので、商品・価格・プロモーション・プレイス、四輪でずっと回っていくわけですよね。なので、やっぱりここをしっかり見る。それで、このチャネルというのが特に日本企業は弱くて、ここが変わると、「商品変えなきゃだめじゃん」「プライス変えなきゃだめじゃん」「プロモーションこうしなきゃだめじゃん」ということを気付いていくんですね。だから、チャネルファーストだと言っていて、明治大学の経営学部の大石教授、グローバル・マーケティングの第一人者ですけども、彼もそういうふうに言っているわけですよね。だから、まずチャネルを変えていくということが非常に重要ですよと。

次のスライドをお願いします。これは、横軸がストアカバレッジ、どれだけたくさんの店を獲れるか、配荷できるかということと、あと、縦軸がセールス・パー・ストアということで、昔はインストアマーケットシェアとかってややこしい言い方をしていたんですけど、もう1店舗あたりの売上、セールス・パー・ストアでいいと思うんですよね。右が間口、ストアカバレッジ、どれだけたくさんの店に置けるかと。この赤黒境界線というのがあるんですけども、赤字ゾーンというのがあって、この赤字ゾーン、この赤黒境界線の内側は赤字ゾーンなんですよね。外側の黒字ゾーンに突き抜けないといけない。なぜここが赤字ゾーンかと言うと、Modern Tradeの数が少な過ぎて、横軸が右に伸びきっていない、Traditional Tradeの真ん中ぐらいまで突っ切らないと、結局、週販で売れる数なんて、もうだいたい決まっているわけですよ。プロモーションをバンバンやってとかね、なんか「BUY 1 GET 1 FREE」とか、そういうことをやってドーンと伸びるというのはあったとしても、だいたい平均的な週販というのはこの位置にあるとすると、やっぱりこの赤黒境界線というところと、この週販の境界線の交じるポイント、ここまで突き抜けていかないと絶対黒字にはならない。イニシャルコストが掛かっているわけですから、現法を出しているわけですからね。伝統小売をやるということはね、ベトナムで、現地法人を出すということなので、やっぱり今の伝統小売8,200店舗だったかな、ベトナムは。対して伝統小売が66万店あるわけですから、この赤丸のところに突っ切っていかないと黒字はしないですよと。

じゃあ、これを構成している、「どうやったら突っ切れるの?」って、売上って「間口数(ストアカバレッジ)×店頭販売数(セールス・パー・ストア)」、つまりは単純に言うとこれなんですよね。もちろんこの店頭販売数を上げるための計算式というのは、この中にカッコと書いて細かくあるんですけど、それをここで今日お話するとまたややこしくなるので、とにかく消費財メーカーが売上をつくるのは、どれだけたくさんの店に置いて、そして、その1店舗でどれだけ売れるかということが売上なわけですよ。けど、じゃあ、「これを構成しているのって何?」と言うと、総間口数、すべての伝統小売、ベトナムだったら66万店、フィリピンだったら80万店、インドネシアだったら425万店だったかな、コロナで10万店ぐらい減っているんですけど、昔はね、300万店とか言われてましたけども、どんどん、どんどん、増えていて、今、420万店、430万店ぐらいあると思います。分のSM1人あたりの担当間口数というのはセールスマン、SMというのはセールスマンですね。セールスマン1人あたりが担当できる間口数、掛けるKDSMというのはキーディストリビューターのセールスマンの数、掛ける店頭販売数になるので、結局、このSM1人あたりどれだけ回れるかって、これはまさにマネジメント体制のことを言っているわけですよ。これ、KDSM(キーディストリビューターのセールスマンの数って、これはまさに組織体制のことを言っているわけなんですよね。これがどういうチャネル・ストラクチャーの上で動いているかということが、この総間口数に対してチャネル・ストラクチャーがつくられるわけですから、こういうことになるわけなので、上の式では非常に単純に見えるんだけども、実はそこにはストラクチャーと組織体制と組織のマネジメント体制のこの3点セットが含まれていますよと、それが、掛ける店頭販売数になるんですよということなわけですね。なので、この式をしっかりと把握をすると、よりこの「基準値」を持つことの重要性が理解できるんじゃないかなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。