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第481回 【本の解説】ディストリビューターのマネジメント その2

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日も前回の続きで、「4-12 ディストリビューターのマネジメント」ということで、203ページですね、これの続きのお話をしていきたいと思います。前回ちょっと話し足りないということを申し上げた、その続きとしてお話をしたいんですが…。

管理育成は重要ですよと。ポイントは、管理育成と言うんですけど、管理と育成をちょっと分けてお話すると、管理というのはもうKPIの管理なんですよね。とにかくシンプルな指標、2つ以上のことをお願いしないということはすごく重要で。営業マンが営業から帰ってきたあととか、何かこっちで決めたひな形のExcelを埋めさせるみたいな、そういういわゆる日本企業特有の、そういうことをさせるというのは、もうもうナンセンスなので、結構、欧米の企業なんかに慣れているところは、もうExcelに何かを自分で入れるなんていうことはなくて、全部がスマホのアプリで現場に行って写真を撮ってきたときにそれが自動で集計されてみたいなことになっているので、なんか報告するための報告資料をつくらせるみたいな業務が全部取り除かれているんですよね。たぶん皆さんも、アジアとか新興国でお仕事をされている経験があると、ディストリビューターに「これ出せ、あれ出せ、それ出せ」と言ってもなかなか一向に出てこないみたいな経験はあると思うんですね。「分かった、分かった。出すよ、出すよ」で出てこないと。それは頼むほうが悪くて、そういうお願いをしないということはすごく重要で。データは自動で吸い上がるものだという。先進的なグローバル企業と付き合っているディストリビューターであればあるほどそうだし。

僕もよく思うんですけど、僕も自分の部下に無駄なデータを上げさせるということは極力しないようにしているんですけど。結局、見て「ふーん」と思って安心して「以上」みたいなことであれば、そのデータを集めるなんていうことはやらせないほうがいいですよね。なぜならば、そのデータを見て分析して、より良くするための施策を打ち出すとか、改善策を打ち出すということのためにデータは見るべきもので、自分が安心するためとか、とにかく上司が言っているからそれを集めるみたいな、そういう話じゃないわけですよね。もしそういうためなんだとすると、いかにデータが自動で集まるかということを、体制を整える、システムをしっかり組んであげるということが重要だなというのを、ASEANの現場なんかは特にそうですよね。あまり難しいことをお願いしても出てこないし、本来やるべきセールスの業務がおろそかになってしまうので、基本的にはそれはやらないということが鉄則かなと。

あと、とにかくシンプルにする、うちの会社でやっている管理育成というのは、ストアカバレッジとインストアマーケットシェアの管理しかやっていなくて、これをマイクロマネジメントするんですよね。極論を言うと、毎日そのデータがしっかり上がってくるみたいな状態をつくり上げる。最低でもウイークリーでやっぱりそれは吸い上げていかないといけないし、その吸い上げ方法というのは、さっき言ったように、管理的なアプリで構わないわけですよね。みんなスマホを持っていますから、スマホで近代小売の現場をパシャッと写真を撮ったときにどうなっているのかということが自動で集計されていくという、もしくは写真と並んでいるSKUの数とか、競合の商品のSKUの数とか、そういうものをペッペッペッと何問か答えて、5問ぐらいですね、そういうのでもね、アンケートみたいに10問20問とか、もう細かい、必要ないことを入れさせるということは一切しない。本当に知りたい情報だけを入れさせる。そうすると、どれだけの店舗に、どの店舗のどの棚にどういうふうに並んでいるのかっていう、もうこの3つの情報しか僕は要らないと思っているので、これをひたすら集めさせるということをやっていて。それに対して1店舗あたりの売上を上げるのはメーカーの仕事なので、どういうBTLを打っていくかということを考えていくというのが非常に重要なことで。

あと、育成に関してなんですけど、これは基本的にセールスとか製品の知識に対する勉強会、研修会というのはしょっちゅうやるし、ただ、研修会も実際に本当に知識をスキルを上げていこうということもそうなんですけど、コミュニケーションをすることによって親近感を湧かせよう、われわれのメーカーに愛着、われわれの顧客に対して愛着を持たせようということが本来の目的なので、むしろ、エンターテイメント的な、イベント的な要素が強いというふうに僕は考えています。なので、それをやることでもちろん知識、彼らの知識を上げるんだけども、それ以上に、僕の立場から言うと、僕のクライアントに対する親近感、日本で言うところのロイヤリティみたいなものを持たせるという、そういう意味合いが非常に多いのかなと。

あと、育成も重要なんですけど、採用ってもっと重要で、結構、日本企業を見ていると、優秀な人材を採用しようとするんですよね。優秀な人材、優秀な人材。じゃあ、この優秀な人材の定義って何なんですか、日本語ができることですか、何ですか、でかい会社の経験値ですか、何ですかと言うと、そこは明確に答えはない企業が結構多くて。とにかく優秀、漠然と優秀と、平均的に全体的にバランス良く優秀みたいな、こういう採用をするんですけど、ディストリビューターのセールスとして、ストアカバレッジを上げるために必要なスキルとかケイパビリティって、いかに毎日同じことを飽きずに愚直にやり続けられるかということがすごく重要で。そんなに難しいことをお願いしていないので、いかに同じことを飽きずにやり続けられるかという、この能力を持っている人を採用しないといけないんですよね。辞めたときにあたふたせずに、お疲れ様でしたで次にすぐに人員がそこに投入できるような仕事なので、そこを採用していくということがすごく重要で。

あと、地場には地場の人間を配置するということも、これはディストリビューターのセールスとしてはすごく重要で、特に伝統小売。なぜならば、小さいときにその伝統小売のおばちゃんおじちゃんから買っているわけですよね、商品を。その子が成長してセールスで来たら、そのおばちゃんとおじちゃんは、その子からもちろん商品を買うわけですよ。そうすると、やっぱり地場出身の子をできる限り地場に充てるということが重要だったりするので、そういうことをしっかりやっていくということが重要かなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。