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第510回 【本の解説】Q&A 近代小売への効率的な導入方法とは?

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『グローバル・マーケティングの基本』 日本実業出版社から私が出している本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日は、265ページ、「ケース9 近代小売への効率的な導入方法とは?」ということでお話をしていきたいなというふうに思います。まず、このQ&Aを読みますね。「消費財メーカーです。新規に参入する場合の近代小売への効率的な導入方法を教えてください。一気にやるべきなのか、それとも少しずつやるべきなのかで悩んでいます」ということでございます。結論から申し上げると、近代小売への導入は少しずつやるべきであるということです。なぜならば、そうでないと非常に大きなコストが掛かってしまうということと、仮にうまくいかなかったときに、いわゆる敗者復活戦ができないような状態に陥ってしまうという、この2点で小さく始めるということは非常に重要で。

近代小売と伝統小売の市場がASEAN、グローバルサウスを中心とした新興国市場には必ず存在していて、基本的には伝統小売の市場が非常に大きくて、伝統小売が昨今デジタル武装を始めて、消えると想定されていたものがなかなかなくならないんじゃないかというふうなことが言われていると。私自身も伝統小売はなくならないというふうに思っています。その中で伝統小売に配荷をしないといけないんだけども、伝統小売に配荷をするためには近代小売で絶対大きな存在感がないと、伝統小売のオーナーはそれを取り扱わないと。なぜならば、返品できないもの、売れないもの、こんなものをあの狭い伝統小売のスペースに置いておく余裕はないからであると。そうすると、近代小売はもう必須の売り場になってくると。ただ、近代小売も一気にやっていくと当然コストが掛かると。どういうコストが掛かるかと言うと、まず、リスティングフィー、バーコード登録代みたいなふうにも言われますけども。それから棚代ですよね。どの棚にどういうふうに置くのか、1SKUあたり数千円とか掛かってきます。この辺のリスティングフィーとか棚代とかですね。それから、半強制的なプロモーションへの参加、なかなか断りにくいプロモーションが最低年2回、多ければ年に4回あるというような問題。それから、ある一定の、これはもう、もちろん小売との交渉になりますから、交渉力が強ければそれなりの交渉はできるでしょうけども、基本的には返品を受けないといけないという、そんな様々なコストが掛かる中で、近代小売も非常にたくさんある。

その中で全ての近代小売でいきなり最初からやるというのは非常にナンセンスで、自分たちが最も成功しやすい業態を選ぶということがすごく重要で、まず地域を選ぶということが絶対的に重要ですよね。国選び、都市選びという。多くの場合はね、首都から始めるというのが鉄則ですよね。1人あたりのGDPも高いですし、基本的には購買できる消費者の購買力が高いですよね。だって、インドネシアを見たって、フィリピンを見たって、ホーチミンを見たって、首都で考えたらインドネシアはもう1万ドルを優に超えていて、でも、ならしてみると5,000ドルとか、5,000ドル以下のような状態ですから、1人あたりGDPが。そうすると、やっぱり首都からやるということがすごく重要で。首都の中でもある程度エリアを限定するということがすごく重要で。エリアとあと業態ですよね。

まず業態からいきましょうかね。近代小売と言ってもいろんな近代小売があって、スーパーもあれば、コンビニエンスストアもあるし、ドラッグストアもあるし、いろいろあるわけですよね。自分たちの商品を売っていく上で、どの業態の小売が最も適しているのかという判断をまずしないといけない。自分たちの売っている業態、最も適している業態はコンビニエンスストアなんだとすれば、まずはコンビニエンスストアとだけやるということが非常に重要で。コンビニエンスストアは、じゃあ、3社いると、セブン、ローソン、ファミマ、3社いますという中で、どれも全部最初からやるんですかと言うと、そうではなくて、やっぱりどこか1個を選らばないといけない。「最も効率的なコンビニエンスストアはどこなの?」「セブンイレブンです」ということであれば、セブンイレブンからまず始めて。セブンイレブンの中でも店舗を選ぶと。いきなりね、じゃあ、例えばタイに1万店あるわけですけど、1万ちょっとあるわけですけども、それを全部でやるのかと言うとそうじゃなくて、まずは数百店から始めてみるということをやっていくと。

結局こういうことなんですけど、コンビニエンスストア、セブンイレブンの数百店とやると、その数百店で実績が出たら、今度はほかのオーナーが取り扱いたいと言ってくるので、そのセブンイレブンの中で店舗数がどんどん、どんどん、増えていくと。セブンイレブンで売れているとなれば、ほかのコンビニエンスストアが、「えっ、どうやら売れているらしいぞ」ということで、うちでもぜひ取り扱いということを言ってくると。そうすると、向こうから言ってきているので、当然小売との交渉が非常に優位に立てるわけですよね。コンビニがこれで全部配荷が完了して。今度はコンビニでも売れているぞとなったら、スーパーでももっと大袋入りのパッケージで売りたいという話が来るわけですよね。そうすると、またこれもスーパーとの交渉力は優位に立てるということになるので、こうやって段階的に増やしていくということをやっていかないといけない。

仮に200店舗でやって駄目だったときに、これはまだ敗者復活戦ができるんですよね。200店舗でやって駄目だったから、何が駄目だったんだ、どう駄目だったんだと、もちろん駄目になるということが最初から分かっていてね、こんな高いもの売れないよと分かっているのに導入して、「はい、結果駄目でした」というケースもあるわけですよね。ディストリビューター側も「やりましょう」、小売側も「やりましょう」と始めてやるんですけど、ディストリビューターがやろう、小売がやろうと言ったから必ず売れるかと言ったら絶対そうじゃないので、ディストリビューターも小売も売れなかったときは、「Buy one, Get one Freeをやりましょう」としか言いません、彼らはね。それ以外の策は出てこないので、基本的には「値引きしよう」「安く売ろう」、これしか策はないので。でも、それはやりたくないわけですよね、メーカーとしては。なので、小売が言っているから、ディストリビューターが言っているから売れるんじゃないかでやってしまうと大きな痛手になると。

私も過去ね、たくさん見てきました。威勢よくリスティングフィーを何千万って一気に払って、ドーンと投資して、半年ぐらいで棚落ちしちゃって撤退と。もう売れなかったというイメージが消費者にもついてしまっているし、小売にもついてしまっているし、中間流通、ディストリビューターにもついてしまっているので、もうなかなか敗者復活戦は難しいですねというようなね。日本で実績があるし、良いクオリティの商品なんだから売れるでしょうと、ガンガンプロモーション投資してね、やりましょうよと、これは日用品系でも知っていますし、食品系、飲料系でも知っていますしね。ベトナムでもあるし、フィリピンでもあるし、タイでもインドネシアでもあると。個別の名前を言うと、仕事上問題なので言いませんけども、やっぱりそういう企業、日本の消費財メーカーはたくさんあるので、どれだけ小さく始められるかということがやっぱり非常に重要で、業態、国を選んで都市を選んで、業態を選んで、小売ブランドを選んで、店舗数を選んでという、ここの最終的に選んだ店舗数200なら200店舗で実績を出して、どんどん、どんどん、広げていくということが大変重要かなというふうに思います。

今日はこれぐらいにしたいと思います。また次回お会いいたしましょう。