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第541回 B2B製造業−短期での大きな利益を期待しない

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、B2B製造業向けのお話をしていきたいと思います。アジアを中心としたグローバルサウスなどの新興国市場に向けてのマーケティングのお話でございます。

今日のお話なんですが、B2B製造業が新興国市場に展開をするときに、短期で大きな利益を期待しないということの重要性についてちょっとお話をしていきたいなというふうに思っております。もちろんね、もう10年経っているのになかなか黒字化しないとか、無理やり移転価格税制の調整で黒字になっているとか、そういう企業も少なくないわけなんですけども、基本的に客付きで海外展開をしたB2Bの製造業というのは、もうすでに客がいて、それに付いて出ていってますから、ある程度そのお客さんで、「出てこい」と言われて出ていったという、そういう時代があったわけですよね。特に2000年代前後みたいな時代はですね。なので、そういう企業はある程度利益がついてくるんだけども。一方で、まったくそうではなくて、日本国内の市場だけでなくて、海外の市場も獲りにいくという、B2Bの製造業の場合、本当に小さな部品から大きな製造装置までたくさんあるので、皆さんの事業に例えて考えてもらったらよろしいと思うんですけども、そんな中で出ていくと。当然、B2Bの企業に対してマーケティング活動を行っていくわけですよね。その中で事業計画を引くんですけども、やっぱり短期で大きな利益を期待しない、これはB2Cもそうなんですけどね、新興国市場ってやっぱりある程度中長期で事業計画を引くということはすごく重要で、焦り過ぎるとこけますよということを申し上げたいというのが一番なんですけども。絶妙なバランスで線を引かないといけない。焦ると転ぶと。転ぶとまた立つのが結構しんどい、そこで何年もまたロスをしてしまうので、いかに最初のロードマップを引くときの利益の期待をしていい時期の調整というのが、僕は非常に重要だなというふうに思っていて。

ちょっと図を見て説明をしていきたいと思うんですけども。この図の通りですね、横軸が顧客カバレッジで、縦軸が1顧客あたりの販売数と。売上とか利益というのはこの伸びによって、両軸の伸びによって大きくなっていくわけですよね。青い線で黒赤境界線というふうにありますけども、基本的に輸出でやるのであれば、キャッシュオンデリバリーなので、キャッシュをもらって出荷をするので、基本的にはマイナスになることはない、常にプラスですよと。日本国内でその業務に関わっている人の人件費とか細かいことを言えばやっぱりある程度売らないと赤字が出るのかもしれないですけど、基本的に会社としては赤字になることはないと。ただ、そんなにある一定のシェアをその国で獲っていこうと思うとね、海外輸出を増やそうと思えば、それは輸出で構いませんけど、その国で大きなシェアを獲っていこうとなると、やっぱり現地法人というのが必要になってくる。特にサービスメンテナンスが必要になってくるようなB2Bの製造業もあるので、ある程度現地に進出をしていかないといけないですよと。昔のね、国際マーケティングの時代は輸出でよかったんでしょうけども、今はグローバル・マーケティングの時代になると、ある程度やっぱり最低限のリージョナル拠点みたいなものは必要になってきたりするわけで。そうなってくると当然出血をするわけですよね、固定費がかかるので、赤字ゾーンと黒字ゾーンがあって、ある一定の顧客カバレッジとある一定の1顧客あたり販売数にいかないとブレークイーブンしませんよということになるわけですよね。

これが日系のB2B製造業の場合、問題はどこにあるかと言うと、日系顧客と外資系顧客、この外資系顧客というのは特に先進国の外資系ですね、欧米系の。あと、ローカル顧客、中国を中心としたローカル企業、別に中国を中心としなくてもいいか、進出をしている、展開をしているような、タイだったらタイの企業、インドネシアだったらインドネシアの企業、ローカル企業。こういうところまで伸ばしていかないと、日系企業だけで十分潤いますよというね、例えば自動車のピラミッドの中のB2Bの製造業だったらそれは十分なのかもしれませんけども、そうでないB2Bの製造業というのもいて、やっぱり日系企業だけじゃ全然足りないので、いかに外資企業に顧客幅を伸ばしていくかと。外資だけでも足りなくて、本当のシェアとか勝利みたいなところに行き着くためには、やっぱりローカル企業を獲っていかないと駄目だよねということを考えると、ある程度の顧客カバレッジで、1顧客あたりの販売数って、だいたいもう規模で分かるわけですよね。売上100億の会社ってだいたい平均これぐらい買います、もしくはこういう業種の会社ってだいたい平均これぐらい買いますというのは決まっているわけなので、基本、ブレークイーブン、1顧客あたりの販売数というのはそんなに大きくずれてこない、だいたい皆さんがもうすでに国内でやっていることを前提として考えていったらよろしいと思うんですよね。そうすると、ブレークイーブンというのは、1顧客あたりの販売数がどれぐらいのときなのかということに対して、どれぐらいの顧客数が必要なのか、日系顧客だけでは1,000社しかないから駄目だよね、外資系入れても3,000社だよね。そうすると、ローカル入れて何千社までいかないと基本ブレークイーブンしませんねというのが計算として出てきて、3年目の目標だと、基本的には1顧客あたりはここまでしか上がらないから、顧客数を伸ばしていく、また5年目、さらに伸ばしていくということを考えていくと、やっぱりそんなに短期で大きな利益を期待するというのは難しくて、まずシェアを伸ばしていくということを考えないといけないし。

多くの日本の企業は価格で引っ掛かってくるわけですよね。品質はどうかと言うと確かに良いんだけども、中国製品の品質も良くなってきている、もしくはアジアの企業の製品の品質も良くなってきているので、そこまで品質が良いということが、かつてのように評価されなくなってしまったと。そうすると、値段がただ高いというところだけに顧客の目がいってしまって、なかなか苦しい戦いを強いられて撤退しているというケースというのが少なくないですよと。なので、短期で描き過ぎないということは本当にすごく重要で、大きな利益を中長期でどうやって設定するか。一方で競合の競争力の高まり、今までみたいな日本の企業の、ただ品質がいい、機能が高いということだけが付加価値にはならなくなってきているので、その競争力のスピードも同時に計算には入れていかないといけないので、非常にこのロードマップを描く、時間軸を含めてロードマップを描いていくということはすごく難しい作業にはなってくるんですが、大変重要ですよというお話でございます。

今日はこれぐらいにしたいと思います。皆さん、また次回お会いいたしましょう。