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第565回 【本の解説】『スピード』、『グランドデザイン』、『指標』

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テキスト版

森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEANにおける販売チャネル戦略』 同文館出版から去年私が出した本ですが、この本の解説をしていきたいと思います。

今日も前回と同じ、10ページ、「2 先進グローバル企業の販売チャネルの「型」」ということで、「型」の話をする前に、先進グローバル企業の強さの秘密が3つありますよという話をしたと思うんですよね。スピードが価値に変わる仕組みをよく分かっているよということと、グランドデザインを描く能力が高いよということと、指標という武器を最大限活用しますよということについてお話をざっとやったと。今日は、その3つ少し詳しくお話をしていこうかなというふうに思っていて。この思考回路の違いをすごくちゃんと理解する必要があって、ここがどういう戦略をつくるかっていうのって、戦略に至るまでの思考によって変わってくる、インプットがあって、そのインプットをどういう思考で戦略というアウトプットに変えるかということと関係してくるので、この思考を変えない限り、今のこの現代のグローバル競争、新興国市場、アジア新興国市場における、ASEAN6における、もっと言うと戦略を導き出すことはなかなか難しいので、その3つについてちょっと話をしていきたいなと。

まず、スピードが価値に変わる仕組みなんですけど、スピードが大切だということ、そんなことは分かっているという話で、なぜこんなに欧米、先進的なグローバル企業が速い決断ができるのかということが僕は非常に気になって。同じ組織で、同じ人がやっていて、なぜ先進的な速い判断ができる企業とできない企業が存在するのかと。一般的に日本企業はNATOと言われていて、「No Action Talk Only」で決断しないと、現場に来て決断しないと、話ばかり聞きにくるけど何も進まない。昔は日本企業が行きます、「行きたい」と言ったらウエルカムだったのが、今では「何しに来るの?レジュメ出して」みたいな話をされるので、基本的には「日本企業が来ても、情報ばかり聞きに来て何も進まない、決めない、遅い」ということを言われる。じゃあ、なぜ速く決められるのかと言うと、いわゆるスピードが成功をもたらすんですよということを知っていて、物理的に速い遅いどっちがいいかという話ではなくて、速く動くということが、ひいては誰よりも速く成功することになるんだよという構造を理解していて。

どういうことかと言うと、この11ページの図を見てもらったら分かりやすいと思うんですけど、誰よりも速く動くということは、誰よりも速く失敗するんですよね。だって、新興国市場、アジア新興国市場、未知の領域に速く動いて失敗をすると。失敗するということは、誰よりも速く失敗するということは誰よりも速く学ぶということなので、誰よりも速く学ぶと誰よりも速く成功する確率が上がるわけですよね。このことをよく分かっているので、とにかく速く回せ、速く回せと、この速く回すということを、小さく高速回転をいくつもさせていくことによって大きな成功に繋がっていくと。もちろん、とにかく分からないことを速くやればいいではないかと、そういうことではなくて、仮説が非常に精度の高いものを立てるんですよね。精度の高い仮説を立てるためには何が必要かと言ったら、情報が必要なので、彼らはめちゃめちゃ調査をやります。調査をやって、情報を収集して、それによって高い仮説を立てて速く動くので、失敗をしてもそんなに大きな失敗ってないんですよね。なぜかと言ったら高い情報量を持っているから。日本企業の場合でも、速く動いて失敗するって、こんな失敗、やる前から分かっていたでしょみたいな失敗をよくやっている。例えば、一気にお金をかけて主要の小売に商品をダーッと並べたんだけど、半年で撤去されて、そのあと敗者復活戦ができませんみたいな、そんな事例はごまんとあって、そうなることは最初から分かっていたでしょう、リスティングフィーを払えば物理的に棚には並ぶんですよと。並んだものをどうやってセルアウトさせるかということをセットで考えないと、そんなの棚落ちするに決まっているではないですかみたいなことを近代小売でやっていたりとか。あと、伝統小売をやらなきゃ儲からないと分かっていながら、近代小売に適用したチャネルしかつくっていなかったとか。だから、仮説の精度が低いということも1つ言えると思うんですよね。スピードに関してはそういうこと。

グランドデザインというのは、個人だと、僕は会社が描くものはグランドデザインだと思っていて、組織が描くものは。個人が見るものはビッグピクチャーだと思っていて、僕も常に個人としてビッグピクチャー、大きな絵をまず見るということをすごく意識するんだけども。会社としてグランドデザイン、全体構造、全体構想がしっかりできていないと、やっぱり極地の勝ちにしかならなくて、全体で負けてしまう。今、これは全体、大きい範囲で何が起こっているのかということを見ないと、この小さなポイントで何が起こっているかだけを見たら、日本の企業は、もしくは日本人は能力が高いので、この地域での戦いには勝つ。ただ、全体が見えていないので、全体では負けるということになるので、やっぱりグランドデザインというのは非常に重要で。チャネルに関してだってそうですよね。いわゆるチャネルって一夜にしてならずなので、本当にグランドデザインが重要で。最初に自分たちは誰に売りたいのかと、5年後10年後どういうふうになっていたいんだということを考えたときに、じゃあ、今日から10年間かけてどういうふうなチャネル構造をデザインして、それを毎年毎年つくっていけばいいんだということをやらないといけないのに、まずできることからやっていくみたいな。できることからやっていくって、一見非常に美しい表現なんだけども、これは個人が頑張るときにできることからやっていくとか、僕もその理解はするんだけども、ASEAN市場で戦う上では、やっぱり目の前の階段を一歩一歩のぼっていって、たどり着いたところに思い描いていた世界が待っているなんていうことは、これはもう80年代90年代でもう終わってしまっていて、かつての時代はそれで良かった。特に製造業がより良いモノをつくったことが評価された時代。例えばブラウン管のテレビが薄くなったとか、カセットテープがCDになったとか、こういう目に分かる変化の時代は一歩一歩着実に目の前のことをやっていて良かったんだけども、これはもうインターネットが入ってきてデジタルの時代になってくると、全体像をバッと見て、頂上まで先に行って、そこから逆算して、確かに自分が行きたいところが頂上にあったので、そこに最短で行くためにはどうしたらいいんだというふうに戦略をつくらないとなかなか難しいですよというようなことを書いているのが13ページ、14ページ辺りですね。

最後の指標という武器を最大限活用するということなんですけど、欧米の先進的なグローバル企業はね、アジア新興国市場、ASEAN市場でマーケットシェアを上げるための指標、重要指標って何なのかって、もう販売チャネルであるということは分かっているんですよね。この販売チャネルが最も重要で、商品なんてもうすでにあるじゃないですか、グローバル・マーケティングで売っているわけだから。それをどう現地適合化する、世界標準化した商品があって、それをどう部分的に現地適合化するかということは1つなんだけども、それよりも販売チャネルが重要。なぜ販売チャネルが新興国だと重要なのかと言うと、伝統小売という特殊な流通事情があるからなんですよね。この伝統小売を攻略しないと売上もシェアも上がらないということは分かっているとするならば、もう重要指標って販売チャネル以外の何物でもない。いかにたくさんの伝統小売に並べて、いかにセルアウトさせるかということが非常に重要なので、ストアカバレッジとセールスパーストアがとてつもなく重要であると。この2つをとにかく追いまくるということにすべての業務が集約されていると。こんなことを14、15ページに書いているということですね。

戦略がないというのはね、つまり指標がない。日本企業の場合は、とにかく良いモノをつくったので、良いモノをつくったので、良いモノをつくったので…といくんだけども、良いモノをつくっても高かったら意味がないし、僕は1円でも高く売ることを非常に大切にしているけども、許容できるやっぱり金額感というのがあって、他のものよりも3倍高かったら、どんなに良いと言っても、その良いが3倍に見合った良いだということがちゃんと伝わらないと、自分よがりのI want youになってしまうわけですよね。3倍価格が高くてもいいんですよ、別に全然かまわない。なんだけども、3倍良いということをちゃんと消費者に見せないと、それは買われなくて当たり前で。そうすると、一方的な商品の優位性よりも、圧倒的に重要なのは相対的な販売チャネルの強さ、ここのほうが重要になるんですね。なので、強いチャネルを先進グローバル企業はつくっているわけですけど。

次回、「型」の話をしていきたいなと思うんですけど、今日言ったね、こういう3つのことがあるから、先進グローバル企業というのは強い「型」をつくろうという思考に至っているんですよということをご説明したくて、この3つの話をしております。次回は16ページ、PG型の販売チャネルということでね、18ページのネスレリーバ型の販売チャネルもまとめてお話をしたいなというふうに思います。それでは皆さん、また次回お会いいたしましょう。