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【本の解説】伝統小売のデジタル武装 その2

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森辺一樹(以下、森辺):皆さん、こんにちは。SPYDERの森辺です。今日も引き続き、この『ASEAN6における販売チャネル戦略』ということで、私が去年、同文舘出版から出した本ですが、この本の解説をしていきます。

今日もね、71ページ~72ページのところ、「伝統小売のデジタル武装で変わる今後の市場」ということで、前回の続きなんですけど。なぜ伝統小売がなくならないかのもう1つの理由は、数がすでに多過ぎるので、なくなる、実際には3万店、インドネシアなんか減っていますと。ベトナムなんかもね、相当、伝統小売は打撃を受けたので、数は減りましたよと。なんだけども、そもそも近代小売の数が少な過ぎるし、伝統小売がね、何て言ったらいいんですかね、もう、より人々の生活に根付いているんですよね。それもまた日本とは大きく違うところで。日本だと例えばコンビニがわれわれの生活に根付いているのと一緒で、伝統小売が彼らの生活に根付いていて。

伝統小売がコンビニに替わると、取って替わるという説は間違いで。なぜならばね、小売というのは単体で近代化できないんですよね。小売が近代化するということは、道路、物流、システム、電気、水道、ガス、あらゆることが、あらゆるインフラが近代化するから、そのインフラに乗っかっている小売も近代化できるという、こういう構造になっているので、小売だけが勝手に近代化するなんていうことはなくて。日本の小売の近代化を見ているような人たちは、ASEANでもあれが起きるのではないか、新興国でもあれが起きるのではないかと言っているんですけど、それはなぜかと言うと、日本は北海道から沖縄まで津々浦々道路整備がしっかりされていて、渋滞はほぼ起こらない状態、バケーションシーズン以外はね。そんな状態であらゆるインフラが近代化しているから、その上に乗っている小売も近代化できたという話でね。じゃあ、ASEANの主要都市へ行ってくださいと。いまだに渋滞に首都は悩まされていて、そのような状態で近代化ね、渋滞の解消されるのまで、まだ10年ぐらいかかりますよね。10年20年かかります。そんな中で、その他の小売が近代化していく、それにはやっぱり相当な時間がかかってくるので、そういう意味ではまだまだですよということもそうだし。

あと、国土交通省、各国の国土交通省が発表している都市計画みたいなのを見てもらったら一番分かりやすいんですけど、そこにね、そんなにASEANの各国がね、地方から都市部から農村部まで津々浦々近代化するなんていうことはね、計画はないんですよね。そんな計画がない中で、小売だけが単体で近代化するなんてあり得ないので、首都だけを見たら、それはあり得るかもしれないですけども、基本的にはそうではないということと。

あと、フィリピンなんかは、すごく伝統小売は守られた、いわゆる小規模事業者ローンみたいなのも、行政が積極的に、日本も国がやりましたけども、そういうことがフィリピンなんかもあったし、フィリピンなんかは、そもそも消費者にも流通にも行政にも、伝統小売というのは守られているわけですよね。例えば、伝統小売は商品を仕入れるのは近代小売から仕入れる、ピュアゴールドから仕入れる仕組みが成り立っているとか。日本で言ったらね、駄菓子屋がイオンから商品を仕入れるみたいなね、そんな変な構造あり得ないのに、そういう構造になっていたりとかね。インドネシアからすでにフィリピンに進出しているアルファマートも伝統小売向けのそういったサービスをやっていたりとか。

あと、消費者が何よりも伝統小売を必要としているし、伝統小売もね、交通量の多い道路沿いだけではなくて、住宅街の中に入ったところ、ここも伝統小売に支えられているわけですよね、彼らの生活って。だから、やっぱり伝統小売というものがすごく生活の中心に近いところに置かれていて。

あとね、伝統小売のオーナーの国民性というか、やる側の気持ち的にもね、伝統小売ってすごく合っていて。日本だとね、何か大きな力で、中央集権型でね、中央が決めたことを自分たちはその通りやるみたいなのがわれわれの国民性的には合っていると。いわゆる従っていくと、決められたことに従ってきっちりやっていきますよというのがわれわれ合っているかもしれない。ASEANの人たちは、別にそんなたくさんのお金も求めていないし、その日暮らしでいいし、それよりももっと自由にやっていきたいと。誰の指図も受けることなく、もっと自由にこのお店をやっていきたいよみたいな国民性のほうが僕は圧倒的に多いと思うので、彼らの国民性にも遭っているわけですよね。そんなにキチキチ働かされて、重労働させられてね、お金稼ぐよりも、自由きままにやって、食べられるだけ稼げたらいいという、そういうのなので、もっと分散型なんですよね。中央集権ではなくて、もっと分散型なので。そういう意味でも伝統小売ってやっぱり彼らに合っているんでね。何だろうな、伝統小売がコンビニになっていくというのは、なかなかちょっと厳しい世界なのかもしれないですね。そう考えると、やっぱりね、コンビニよりも伝統小売のほうが便利な世界、数百メーターおきにあるコンビニよりも数十メーターおきにある伝統小売のほうが便利だし、もしかすると、数十年後、コンビニのね、ASEANのコンビニの役割というのは、いわゆる集荷センターみたいな、伝統小売に商品を集配する集荷センターになっていたりとか。

あとはやっぱりデリバリーがね、Eコマースの話はまた次回やろうと思いますけど、デリバリーがしっかりできない、住所はこの地区一帯同じ住所だったりとかね。あと、置き配みたいなことをしたら商品がなくなるみたいなことはたくさんあるので、そういうことを地域の集会所みたいにね、問題を解決するような、そういう新しい位置付け、業態に、もしかしたらコンビニは変わるかもしれない。そういうことすら考えながらたぶん市場を見ていかないと、ここ5年のコンビニの出店スピードと、コロナを除いたとしてもね、それ以前の出店スピードって全然違いますから、そういう意味でも伝統小売はこれからも強く生き残っていくでしょうということでございます。

それでは皆さん、今日はこれぐらいにして、また次回お会いいたしましょう。