第87回 商品を「並べること」と「選んでもらう」ことの違い
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テキスト版
皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、商品を並べることと、商品を手に取ってもらうことの違いについてお話をします。日本の消費財メーカーが、アジア新興国でビジネスをするときに、商品をいかにたくさんのお店に並べるかということと、その並べた商品を現地の消費者が手に取って選ぶかということは、全く違うことですよと。それぞれやることが全く異なりますよ、ということについて今日は一緒に学んでいきましょう。
まず最初に申し上げたいのは、日本の多くの消費財メーカーは、商品を並べる力と、商品が選ばれる力というものが違うということに対する理解も乏しいし、そのそれぞれの力を蓄えるために、何をしなきゃいけないのか、ということに関する理解も少ないと私は捉えています。今日はそれをしっかりと学んでいっていただきたいと思いますが、まず商品を売れる状態にする、売り上げを上げる、マーケットシェアを上げるということは、まず商品を絶対的に並べないといけない。いかに多くの小売店舗に商品を並べられるか。
ここで一つの気付きがあるんですが、アジア新興国の最大の特徴は、MTよりもTTの数のほうが多いと。近代小売りよりも伝統小売りの数のほうが多い。例えばベトナムの主要な近代小売りは1300店舗程度です。対して伝統小売りは50万店ある。食品メーカーであれば、うち30万店には食品飲料は置ける、そういったTTである。フィリピンには80万店のTTが存在するし、インドネシアには300万店のTTが存在する。これらに商品を並べることというのは、つまりはストア・カバレッジを上げるということ。そしてつまりは、チャネルへの投資なんですね。日本の消費財メーカーの多くは、1カ国1ディストリビューター、もっと聞きやすく言うと、1カ国1代理店制度みたいなものを引いてやっていきますが、今言ったような、何十万店とか、何百万店存在するTTにしっかり配架していこうと思ったら、1カ国1ディストリビューター制度なんていうのは、全く通用しないんですね。従って、複数のディストリビューターを活用しなければいけない。ディストリビューションネットワークをつくらないといけない。それこそがチャネルへの投資であり、ストア・カバレッジを上げられる唯一の方法である。このことをまずやらないといけないということと、実際に並べたものを選んでもらわないといけない。
例えば、日本では考えられないかもしれませんが、アジア新興国のMT、近代小売りは、商品を置くのにお金を取る。1SKUあたりいくら、というお金を取る。棚代、リスティングフィーといわれますが、そうすると、莫大な費用が初期投入コストがかかっていく。リスティングフィーだけじゃない、年間通じて半強制的なプロモーションを店舗内で実施をしていく。そこにもまたフィーがかかってくる。そうすると、売れないとその初期費用が取れない、という問題が一つ。もう一つは、それだけの初期投入費を取っておきながら、売れない商品は即撤去というのがアジア新興国の近代小売りである。従って、コンビニなんかは3カ月間もの動かなかったら、すぐ撤去で、別のものに置き換わっていく。アジア新興国の近代小売りの特徴は、スペース貸しの不動産業みたいな感じなんですね。小売業ではないといってもいいかもしれない。小売業というのは、自分たちが商品を売るというのが主たる業務なんですけど、売る場所を貸す、それに対してお金を取ってしまうわけですから、そういう業態になってる。そうすると、いかに並べたものを選んでもらうか。他社よりも多く、自社の商品を選んでもらうか、ということがすごく重要で、これがインストア・マーケット・シェアを上げる取り組みなわけです。つまりはプロモーションへの投資なわけです。
並べるということは、チャネルへの投資ですが、並べたものを消費者に選んでもらうというのは、プロモーションの投資なんですよね。この二つの、並べることと選んでもらうことの違いをしっかり理解をして、チャネルへの投資と、プロモーションへの投資を、うまくバランスよくやっていく、というのがアジア新興国のMT、TTで、日本の消費財メーカーがしっかりと売り上げをあげてシェアを取っていく、という上で大変重要な要素になります。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう。