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第93回 伝統小売の攻略は、複数のディストリビューターの活用

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テキスト版

皆さん、こんにちは。スパイダーの森辺です。今日は、伝統小売りの攻略には複数のディストリビューターの活用が必要である、ということについてお話をします。多くの日本の消費財メーカーは、アジア新興国市場において、チャネルで欧米の先進的なグローバル消費財メーカーに負けている。結果として高いシェアを上げられない。それ以前に、現地に設備投資をしてしまった工場の稼働率がなかなか上がらず、赤字から脱却できない、という企業も少なくありません。そんな中、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーと、日本の消費財メーカーではディストリビューターの活用に関して、何がどう違うのかということを、今日は一緒に学んでいきましょう。
まず最初に申し上げたいのは、過去にこの番組でも申し上げたディストリビューションネットワークの最初のデザインの仕方が間違ってしまっている、というのが大きくあるんじゃないかと思います。こちら側が、先進的なグローバル消費財メーカーで、奥が日本の消費財メーカーなんですが、何が違うか。消費者が一番下のレイヤーにいて、MT、TT、それぞれ一緒です。メーカーが一番上にいるわけですが。この中間流通事業者、つまりはディストリビューターの活用の仕方が全く違う。欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、複数のディストリビューターを使っている。われわれPGモデルか、ネスレリーバモデルといいますが、PGモデルは大体10社前後ぐらいのディストリビューターを使うというのを、われわれがPGモデルといって、リーバネスレモデルというのは、100とか200のディストリビューターを使う。一方で日本の消費財メーカーというのは、1社のディストリビューター。結果としてMTしかいけてないし、MTもなんなら△付いてる。欧米の先進的なグローバル消費財メーカーはMTは直販で○だし、TTの攻略にこそ複数のディストリビューターを使っている。当然自分たちの現地の社員も派遣をして応援させる、というのが欧米のやり方なんですが、日本の場合はMTに強いディストリビューター、なおかつMTの中でも日系寄りの小売りに強いディストリビューターなんかを選んでいると、TTなんていうのは全くもって配架する力がないのでいけてない。従って、一部の日系寄りのMTでしか商品が売られない。もしくはローカルのMTであっても、輸入品が並んでるような棚にしか置かれないので、結果としてあまり数が出ない。セールスルーの数が限られる、というのが日系企業の場合で、多く見られる。
結局アジア新興国で一番重要なのは中間層であり、爆発的に拡大する中間層、2030年には30億になるといわれていて、この中間層が買いやすいプレイス、売り場、小売りというのはTTなわけですよね。圧倒的にTTの数のほうがまだ多い。数十万から数百万ある。ベトナムで50万店、フィリピンで80万店、インドネシアで300万店あるTTに置いてないものは、存在してないのと一緒。MTをやるのは当然なんだけど、MTと同時にいかにTTを落とすか。MTに商品を並べる1SKUあたり高いリスティングフィー、導入費、強制プロモーション費用、さんざん取られる。そのときにTTに置いてあるから、MTでの投資が報われる、というケースもあれば、MTに置いてあるものをTTのオーナーが評価をして置いてくれるケースもあるし、逆にTTの配架率、ストア・カバレッジが高いものは、MTでのリスティングフィーの交渉が優位に進むということもあるわけです。P&G、ネスレ、ユニリーバ、MTのリスティングフィー、皆さんと同じように払っていると思いますか。答えはNOです、ということにもなるわけです。従って、このディストリビューターの活用の仕方が全然日本と欧米では違っていて、1カ国1ディストリビューターなんていうのは、全くもって市場を取れるようなデザインになっていない。1社のディストリビューターが、本当にどこまで配架できるのか、ということを細かく見ていけば、そのことをやっていてもいつまでたってもマーケットシェアの戦いに入れないということは、火を見るよりも明らかであると。従って、このディストリビューターの活用、チャネルの再構築。今、日本の消費財メーカーが本当に迫られていることだと思います。皆さんも今一度、自身のチャネルが本当に勝てるチャネルになっているのか、このままのチャネルでいいのか、ということを見直してみてはいかがでしょうか。
それでは皆さん、また次回お会いしましょう。